津軽

蕭々と吹く風に雪煙
土蜘蛛の如くうずくまる林檎の樹
寂しさに立ち枯れたみちのくの
名も知らぬ木に氷が華と咲く
思えば あなたとの心の道行きは
荒海に 揺蕩二つの小舟の様に
櫂を失くして流されて
行方も知れずあてもなく
引き返すにも進むにも
浮かぶ瀬も無く

滔々とゆく河に泡沫の
はじける瞬(いとま)の儚さを
哀しいと言わず愛しいと
答えたあなたの優しさが胸を突く
津軽に訪れる春 まだ遠く
心の道行く先は なお遠く
凍てつく指に耐えかねて
ふとあなたの名をくちずさめば
降りしきる雪の彼方から
幽かな海鳴り
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