春告鳥

衣笠の古寺の侘助椿の
たおやかに散りぬるも陽に映えて
そのひとの前髪僅かにかすめながら
水面へと身を投げる

鏡のまどろみのくだかれて
錦の帯の魚のふためいて
同心円に拡がる紅のまわりで
さんざめくわたしの心

春の夢 朧気に咲き
春の夢 密やかに逝く
古都の庭先野辺の送り
ふりむけばただ閑かさ

化野の古宮の嵯峨竹の
ふりしきる葉洩れ陽にきらめいて
そのひとのこぼした言葉にならない言葉が
音も無く谺する

足元に蟠る薄氷に
靄めいた白い風立ちこめて
春告鳥の問いかける別離に
たじろぐわたしの心

春の夢 朧気に咲き
春の夢 密やかに逝く
古都の庭先野辺の送り
ふりむけばただ閑かさ
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