矢沢永吉が出演している日産のCMにそんなセリフがありますよね。今、音楽シーンでもまさにアーティストが“やっちゃう”時代になっています!昔は、自分の作品やメッセージを世に放つ手段というと主にCD・ラジオ・テレビ・ライブ…。しかし現在は、Twitter、facebook、InstagramなどのSNS、LINE MUSIC、MixChannel、Couplesなどのアプリ、そして、YouTube、ニコニコ動画、Ustream、ツイキャスなどの動画配信、様々な方法で自己プロモーションが可能となりました。つまりアーティストは、自らの発信でユーザーの胸を打てば、レーベルのメジャー・インディーズに関係なく、爆発的な拡散力で突如ヒロインに輝く可能性が大いにありうるということです。今回の特集では、そんな新時代のツールを活用した“自己プロモーション”によりヒットした2組のアーティストをご紹介いたします…!
 家入レオ、大原櫻子、西野カナら人気アーティストの新曲が並んだ今夏の激戦・歌詞ランキング。そんな中、8月9日付けのウィークリーランキング首位に、突然のヒットガールが君臨しました。7月1日にメジャー1stミニアルバム「#17」をリリースし、デビューを果たした17歳現役高校生シンガー“井上苑子”です!今回1位まで昇り詰めたのは、そのアルバムリード曲である「大切な君へ」という楽曲。歌詞先行公開時には、ウィークリー59位(6/21付)→83位(6/28)とランキング圏外。内心、(こんなに胸キュンで甘酸っぱくて可愛い楽曲、もし苑子ちゃんがMステに出たら大ヒットするだろうに…)と感じておりました。ところがリリース後、LINE MUSICなどで楽曲が聴けるようになったことで、はじめて井上苑子を聴いたというリスナーから「何このイイ曲!」と、支持率がみるみる急上昇! 26位(7/5)→7位(7/12)→5位(7/19)→3位(7/26)→2位(8/2)と週を重ねるごとに歌詞ランキングの記録を更新し、ついに8月9日には首位に輝いたというわけです。今や若者リスナーのグットミュージックセンサーはテレビを通じなくとも、動画やアプリによって確実に反応し、拡散されるのですね!
椎名林檎「ここでキスして」カバー
2012/03/18に公開
YUI「SUMMERSONG」カバー
2010/08/19にアップロード
その後も「大切な君へ」の人気は加速し、LINE MUSICではなんと200万回の再生を突破!2015年にデビューの新人で、100万回を突破したのは初めてだとか…。そんな、突如口コミにより生まれた新世代のカリスマ“井上苑子”ですが、実は彼女、小学生の頃から恐るべき行動力で地道な自己プロモーションを行っているんです。10歳でボイススクールに入校、小6からアコギで作詞作曲をスタート。小学校卒業式の当日には、心斎橋のライブハウスで「卒業式ワンマンライブ」を実施!100人以上の観客を集めたことで、近隣のライブハウスでも大きな話題となったとのこと…!中学生のころにはすでに3回目のワンマンライブを敢行していました。


 そして、自身で配信している“動画”も大きな注目を浴びているんです。まず、デビュー前より、YouTubeにいろんなアーティストの楽曲を弾き語りでカバーした動画を多数アップ。アコギ片手に歌うまだ幼さも残る姿は、美少女という要素のみならず、その実力が多くのユーザーから好評を呼び、瞬く間に人気に。岡村靖幸や川本真琴、アンジェラ・アキ、椎名林檎、東京事変、YUIなど楽曲の振り幅も広い…!さらに2013年春、上京後にはツイキャスにてライブ配信を開始。キュートな関西弁でおしゃべりをしながらリクエストに答えて歌うスタイルが大好評!現在も定期的に配信が行われており、すでに累計視聴者数は175万人を突破しています。

 こうしてライブや動画を通じてコツコツと重ねてきた“自己プロモーション”によって心を掴んできたファンと、今回「大切な君へ」の“楽曲力”によって獲得した新たなリスナー、2方面からの支持力が合わさって、デビュー早々、見事首位に輝いたのが井上苑子なんです!



 また、今夏のランキングでもう一曲、注目したいのが、miwaの「夜空。feat.ハジ→」です。この曲は、ノンタイアップにも関わらず、歌詞解禁後、瞬く間にランキング急上昇!現在、プラチナリリック(アクセス数25万回以上)に認定されております。全72曲中28曲の歴代人気曲を持つ、歌ネットのスター・miwaと、今中高生に大人気の“ハジ→”のコラボによる相乗効果で一気に口コミも広まったようです。そしてこの“ハジ→”もまた、井上苑子と同じく恋愛世代の若者の心をガッシリ掴む楽曲力と、動画やアプリによる自己プロモーション力で、今や「170万人のカップルに聞いた好きな男性ソロアーティスト」のNO.1に輝く存在となったアーティストです!
ハジ→「おまえに。」
2011/02/03にアップロード
ハジ→『ずっと。』オフィシャルPV(フル)
2012/04/24に公開
 今年4月にリリースされた「君と。」はiTunes、レコチョクなどで12冠を獲得する快挙を達成しました。この曲は、今話題の“カップル専用アプリ”『Couples』でアーティスト史上初、音源を解禁した結果、アプリユーザーの半分を占める16〜24歳の男女に大ヒット!“Couples”と、無料音楽プレイヤー“DropMusic”のコラボキャンペーンで募集された『今恋人に聞いてもらいたい恋愛ソングランキング』では楽曲別、アーティスト別共にベスト3にランクイン!もちろん歌ネットでも「君と。」の歌詞はバツグンに人気!ゴールドリリック(アクセス数10万回以上)にも認定され、現在もなおデイリー圏内にランクインしている名曲です。

 もともとハジ→は、2005年に地元仙台にて歌い手「HAZZIE」として活動を始め、市内のCLUBを中心にライブを重ねていました。そんな彼の大きな転機となったのが、アーティスト名を「ハジ→」へと改名した2010年。この年、YouTubeに自身の楽曲「おまえに。」を歌詞付きの手作り動画としてアップロードしたところ、口コミで大きな話題となり、リリースが決定!同曲が収録されているミニアルバム「ハジバム。」をリリースするや否や、品切れが続出し、急遽全国デビューを果たしました。その後もヒット曲を連発し、歌ネットでも「for YOU。」「指輪と合鍵。feat. Ai from RSP」「ずっと。」「あなた。」がプラチナリリック、ゴールドリリックも合わせると計9曲が歴代人気曲に認定。ちなみに、井上苑子で前述した“ツイキャス”では、コメントランキングの1位も獲得しております!
 井上苑子もハジ→も、スマホ世代の若者の心を掴む明確なプロモーションと楽曲力により、ヒットを巻き起こし、自ら積極的に“動画配信”を行い注目されてきたというブレイクポイントも共通しています。しかし、井上苑子は現在17歳であり、10代のころからごく自然にスマホがあり、ネットを活用できる世代のアーティスト。一般人カップルの“キス動画”なども話題になっている現代で、“動画”はある意味、当たり前なプロモーションツールの1つだったのかもしれません。一方で、ハジ→の場合、2005年に音楽活動を開始し、2010年に29歳でレーベルに所属。アーティスト活動をしていくなかで徐々にネットが普及してきたアーティストです。そのため“動画”というツールの捉え方はスマホ世代の10代アーティストとはまた違ったものなのでしょうか…。そこで、今回、“動画”に対する考えをお二人に聞いてみました!
動画を配信などを始めようと思ったきっかけは自分の歌をいろんなところから聞いてほしいな、という思いからでした。路上ライブはその場にいる人にしか届かないけど、動画はどこにいても、どんな人にも聞いていただけるなと思いました。当初“動画”は私のことをいろんなところに届けてくれる手紙みたいなものでした。
始めた当初と今とでは配信の形や、配信する時の気持ちは変わっていないんですが、見てくださってる方が今よりもかなり少なくてコメントをくださる方、一人一人とお話をしているような配信でした。歌のリクエストで、「〜(曲名)歌ってほしいです。」と言ってくださる方がいらっしゃったり、日常的な会話をしたり、始めた当初からかなりゆる〜くやっていました。今はお一人ずつ全てのコメントを読む事ができないほどの数のコメントをいただいているので、そこが変わったかなと思います。
動画配信などを始めた頃と気持ちはあまり変わっていませんが、動画はやはり、ライブとは違って会う事はできず、生で体感する事はできないけど、携帯電話やPCを通して、手軽に音楽を楽しめるサービスなので、歌い手側としては自分なりの音楽を伝える手段として便利な手紙というか、メールみたいなものです。
僕はソロアーティストで、頭も身体もひとつしかない。ひとりでどう自分の活動を広めてゆけるか、それを考えた時に インターネット、SNSの有効的な利用は必須だと感じました。2008〜9年頃、自らHPを立ち上げ(このHPは現在は閉鎖)、ブログ、mixi、YouTube、Twitter、を運営しながらの活動が始まりました。自分が今の事務所への所属が決まったのも、YouTubeへの動画投稿がきっかけでした。

また、僕の場合は、デビュー当時からメジャーデビューまでの間、メディアでの顔出しをしない覆面アーティストという手法をとったので、テレビなどのメディア以外で、自分を不特定多数の方々に広めていく手段がライブとインターネットしかなかったというのが実情です。口コミの産み出し方、その広め方というのを徹底的に研究し、アーティスト本人でないとできない、ハジ→でないとできないやり方や、人の巻き込み方というのを意識しながら活動してきました。自分で自分をプロデュース、プロモーションしてゆくんだという意識は常に高く持ってきましたね。
デビュー前の動画はほとんどなんの反応もなかったですね。回数も全然回らなかったです。ただ、デビューの時期にアップした、「おまえに。」という楽曲の歌詞付き動画だけはアップした時からすごい勢いで広まっていきました。僕はこの楽曲自体にとても自信があったので、純粋に“良い歌”は広まる、口コミが産まれるんだってことをとても嬉しく思いました。だから僕のいつも真ん中にあるのは 聴いてくださった方の心に響くような、良い曲を作ろうという想いだけです。それを作ることさえできれば、今の時代、SNSを有効に活用することで人から人へと伝わっていく。そう考えています。
無限の可能性にあふれているコンテンツだと思います。最近では、ユーチューバーの皆さんの活躍もすごいですし、動画共有サイト、YouTubeなど使えば、どこにいたって世界中に、自分を発信できるわけですから。
動画の編集に関しては、僕は今、ほぼなにもできないので、そこのスキルを自ら身につけるか、そこに長けた人と組ませてもらって、近い将来、なにかムーブメントを起こせたらと考えています。
今では、SNSによるセルフプロデュースでヒットを作ってきたとされるようなアーティストたちが初期に行ってきたやり方は、もう当たり前になりつつあるので、常に新しいやり方を模索してゆかねばならないと考えております。これからも、動画、映像編集のスキルや、そのクリエイティブ力や企画力は、音楽業界だけではなく、様々な分野で重要になってくると僕は思っています。