まず、"お気に入りアーティスト"に登録するパターンを考えてみると、これには大きく分けて2つのパターンがあるようだ。一つは、そのアーティストが猛烈に好きで、CDやグッズを揃えるように、歌詞もできるだけ多く知りたいというパターン。TVの登場回数やCDセールスで見て突出している嵐、AKB48、EXILEの3組はそれぞれ3位、6位、9位と、いずれもTOP10入りしており、このパターンに該当する。 |
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まず1位のRADWIMPSは、音楽+映像ソフトの売上金額に基づいたアーティスト・セールスでは38位(オリコン調べ)で、いかに歌詞の人気が絶大かが分かる。また、ワタフレ(=ワタシの好きなあのフレーズ)のコメント欄からも、歌詞中の独特な視点が多くのファンをトリコにしていることが読み取れる。驚くべきは、シングル2枚のリリースのみでアルバムやツアーのなかった2010年でも、「My Favorite Artist 2010」が3位だったという事実だ。つまり、彼らの歌詞は旧作中心でも大いに興味を惹く存在であり、同時にこの「My Favorite Artist」というランキング自体が、継続的なファンの多さを示していることが分かる。(この傾向は、39位のELLEGARDEN、40位のJanne Da Arcのように、活動休止中のバンドも上位入りすることからも証明される。)また、4位のBUMP OF CHICKENも、デビューから13年で6枚のアルバムと寡作ながら常に歌詞検索では上位となっており、同様の傾向を示している。 5位にはUVERworldがランクイン。彼らも、アーティスト・セールス(43位)より歌詞検索が突出している。ポップなミクスチャー・ロックや、ボーカルTAKUYA∞をはじめとするメンバーの容姿、あるいはアニメ・タイアップに恵まれていることが人気の要因だと思われがちだが、ワタフレのコメント量の多さからも、実は歌詞の人気ぶりも重大な要素だと分かる。このサウンド、容姿、歌詞がいずれも高評価なのは、今年デビュー20周年を迎えた18位のL'Arc〜en〜Cielにもあてはまることだ。 |
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さらに驚くべきは、ヒットを継続するアーティスト群の中に、ONE OK ROCKが堂々7位にランクインしていることだ。昨年、アルバムが初めて10万枚を突破したとはいえ、アーティスト・セールスはまだ66位。ちなみに音楽配信やカラオケでも年間TOP50圏外で、やはり彼らもまた歌詞が大いに注目されていることが分かる。「My Favorite Artist 2011」には、彼らの他にも、41位にSEKAI NO OWARI、50位にゴールデンボンバー、そして57位にback numberと、昨年ステップアップしたバンドが見つかり、これもこの「お気に入りアーティスト」ランキングに突出した傾向だ。当然、LIVEの動員状況やファンの満足度もバンドの実力を示す重要な指標だが、歌詞検索はバンドの人気度がより端的に数字として現れやすいと言えるだろう。 |
歌ネットでの「お気に入りアーティスト」への登録を年代別で見ると、10代が全体の1/3を占めており、これは学生層全体の新品CD購入シェアの13.4%(日本レコード協会調べ、2011年)よりもはるかに多い。しかも、ここでの「学生層」には20代も含まれている為、実際の10代シェアは11%前後、つまり歌詞検索サイトは、CD市場に比べ約3倍の10代人口密度だと言える。彼らの多くは、社会人とは異なり、娯楽に使える金額が限られており、パッケージ購入(しかも新品)だけでは、彼らの影響力は見えづらいかもしれない。やもすれば、一部のレコード会社は、(パッケージのシェアとしては小さな)彼らに目を向けず、シニア層向けの商品開発に注力することだろう。しかし、だからと言って、新人アーティストを育てないでいるのは、市場が先細る一方だ。 そんな中でも、アイドル以外でブレイク・アーティストを見出そうとする際、この歌詞検索は重要な指針となりうる。とりわけ、歌詞が魅力的なバンドではそれがどのランキングよりも現れやすい。このランキングが、より多くのリスナーにも音楽業界人にも注目されることで、00年代以前のように、長期的に支持されるバンドが増えていくのを願っている。 |
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