——では、アーティストとして、一番喜びを感じる瞬間ってどういう時ですか?
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高橋:曲が出来た瞬間とライブでそれを届けられた瞬間ですね。たとえば、「夜明けを待っている」という曲が出来ました。で、“やったー!”ってすごく喜ぶんですよ。それからは、届けて行く作業になって、聴いてもらえると“やった!聴いてもらえた”って。その2つの喜びが自分を支えている気がします。 |
——高橋優さんの歌詞には、“笑顔”というワードがよく出てきますよね。 |
高橋:地球上で笑う生き物って人間だけなんですよね。だから、笑うことに人としての意味があると思うんです。脳内では、喜んで笑っている時と悲しんで泣いている時に出ている分泌物ってほとんど同じらしいんですよ。だったら、笑っていたほうが楽だし、面白いものを見て笑ったり、喜んでいる人の顔が、僕は好きなんです。 |
——「微笑みのリズム」に“3年先じゃなく3分後の君はどこで何をしてるだろう?”というフレーズがありますが、高橋優さんを象徴しているフレーズだと思います。 |
高橋:“来年の事を言えば鬼が笑う”っていう言葉になぞらえたかったんです(笑)。計画を立てたってほとんどその通りには行かないし、逆に思い通りに行くつまらなさもあると思うので、行き当たりばったりで、本末転倒のところでいい発見があったりするのが好きなんですよ。“3分先も今と変わりませんよ”って突っ込まれたら、“3分先変わらないんだったら、3年先も変わらないぞ”って言い返します(笑)。 |
——アルバムでオススメの曲や注目してほしい点はありますか?
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高橋:「発明品」と「I LOVE YOU」は、前進できたというか、新しい試みが出来たので、アルバムを象徴していると言っても過言じゃないと思います。今までは、言葉を詰めてキーを上げてギャーギャー喚くほうが自分らしい、って思っていたんですけど、その固定概念を覆せたのが「発明品」です。歌詞も、単語をパズルみたいにハメて作ったので、自分にとってはこの曲が「発明品」なんです(笑)。「I LOVE YOU」は、こんなに真っ直ぐに愛や君に対して、真摯に向き合って歌った歌はなかったので、今までで一番歩み寄れた曲になっていると思います。 |
高橋:先ほども話に出たB'zの稲葉浩志さん、あとは吉井和哉さんです。今回のアルバムで言えば、制作中は山崎ナオコーラさんの本をよく読んでいました。 |
——歌詞を書くことは、高橋優さんにとってどのようなものですか?
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高橋:自己表現の全てです。日常生活では、自分の思いを器用に話せる方じゃなくて、たとえば、ラジオだったらラジオ用の自分がいるし、取材だったら、取材用に自分がいる。だから、家族さえも僕の本音を知りたければ、歌を聴くしかない。そういう意味で、歌詞に込めている思いは、人生そのものぐらいに思っています。 |
——高橋優さんの映画好きは有名ですが、音楽にプラスになっている点はありますか?
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高橋:映画には起承転結があって、自分も曲を作る時に物語とまでいかなくても、こういう風な風景、とか、映画だったらこういうシーン、って思いながら曲を書くことが結構あるので、随分反映されていると思いますね。僕は映画の魅力は、やっぱり映画館に行くことだと思っているんです。でも今は、DVDやブルーレイ、レンタルなどもあって、一般的な映画の概念が変わりつつあると思います。 |
——同じように、音楽の形態もどんどん変わってきていますよね。
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高橋:CDを買うのか、ダウンロードにするのか、ツールが増えれば増えるほど、人は悩まなくちゃいけなくなる。昔は、音楽を聴きたかったら、カセットテープだけ、テレビだったら、あの番組を観るしかない、って限られていたと思うんです。だから、最近の音楽はチープに思われがちだし、それが時に人を孤独にしている気がするんですよね。 |
——そういう意味では、ライブを行う意味は大きいですね。
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高橋:ライブと言っても、要は“歌を聴いてもらう”っていうことだと思うんです。自分が書いた曲を歌って、それを聴いてくれる人がいる、という空間。それを作らないと曲を作っている意味がないと思うし、聴いてくれる人と通じ合える瞬間を求めて曲を書いている気がします。 |
——それでは、最後に「歌ネット」を見ている人にメッセージをください。
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高橋:今回の「僕らの平成ロックンロール②」は、とにかく出来た曲を並べてCDにしたアルバムなので、満足した思いがあります。これを受けとってもらって、少しでも気に入ってもらえたら、今後の高橋優のことも楽しんでもらえると思うので、どれか一曲だけでもいいので聴いてもらえたら嬉しいです。 |