INTERVIEW
「人生の大切なポイントを支えられる音楽を作っていきたい。」

ちなみに、みなさんにとって「卒業ソングの定番といえばコレ!」という1曲は何ですか?

SHIROSE:僕…ないんですよ(笑)。もちろん名曲はたくさんあると思いますけど、なんかポジディブ過ぎるんですよね。それが国民性なのか、強くなることを言い聞かせるための曲がほとんどで。だけど僕はそんなに強い人間じゃないし、だからこそ同じタイプの人に聴いてもらえたらいいなと思って「咲かないで」という曲が生まれました。今まで、自分が卒業式で歌える曲がなかったから作りたかったんです。

SHIROSEさんの理想の卒業ソングがこの「咲かないで」なんですね。

SHIROSE:そうですね。とはいえ、尾崎豊の「卒業」とかはやっぱり良いなぁと思います。“自由”とか“支配”とかなんとなく言っていることはわかるんです。でも、あの時代だったから“校舎の窓ガラスを割る”ということがパンキッシュに感じられたのであって、今の人たちは別に学校へ行きたくなきゃ行かなきゃいいんちゃう?って感じじゃないですか。そうやって時代と共に、言葉の意味が変わっているから自分では歌いきれないし、感じきれないんですよね。だから「咲かないで」が現代で言う、尾崎豊の「卒業」みたいになればいいなぁと思ってます。

NIKKI:私は、森山直太朗さんの「さくら」です。桜をテーマにした歌がたくさん出てきた時期にこの曲を聴いて、なんだかすごく悲しかったのが印象的で。だから桜=直太朗さんってイメージがありますね。ただ、私自身が中学の卒業式で歌ったのは第九(ベートーヴェン「交響曲第9番」の合唱)でした。本当は中2の文化祭で歌う予定だったのが、体育館の工事が長引いたせいで中止になってしまい、何故かそれを卒業式で歌うことになったんです(笑)。その練習のために同じクラスだったメンバーが集まったんですけど、中2で仲が悪くなったままだった友だちとまた仲良くなることが出来て、最後には「お疲れ〜!」なんて言い合えたのはすごく思い出ですね。

GASHIMA:僕は、日本の曲じゃなくて“Incubus(インキュバス)”ってバンドの「Drive」というロックの曲ですね。日本の人が聴いても別れの歌にも卒業ソングにも聴こえないんですけど<明日が何を僕たちに運んできても 俺は絶対に逃げない>っていうメッセージが込められた曲なんです。ロサンゼルスの中学を卒業するときにみんなで選曲しました。僕にとってすごく思い入れの強い曲ですね。

アメリカでの思い出が詰まっているんですね。

GASHIMA:自分で言うのも変ですけど、小学校の時はクラスの中心にいた騒がしいやつだったのに、アメリカに行った途端、教室の端っこにいる無口なアジア人になっちゃったんです。でも、そこからだんだん友達ができていって、少しずつ洋楽の歌詞がわかるようになって、そうやっていろんなことを乗り越えて卒業式を迎えた時、なんか自分のウジウジした部分からも卒業できた気がしたんですよね。大きな声で言えないことなんですけど、僕は日本にいた時、クラスの中で弱い立場にいる子にひどい言葉をかけたり、人の悪口を言ってしまったりしていたんです。だけど自分がアメリカで同じように崖っぷちに立たされてみて初めて、「あぁそういう人を突き落とすようなことを自分はやっていたんだ」と気がつきました。そういう濃密な時間の果てに流れた曲がこの「Drive」だったから、本当に人間としての門出というか、自分が変われた瞬間の感情が詰まった曲なんですよね。

では、もう少し“歌詞”のことについてお伺いしたいと思います。みなさん作詞をされますが、歌詞を書くときに一番大切にしていることはなんですか?

NIKKI:嘘をつかないことですかね。キレイゴトを言うより、少々恥ずかしくてもちゃんと今の自分が考えていることを表したいなと。

SHIROSE:一瞬で書くことかな。何回も書き直して良いものを…っていう美学もあると思うんですけど、僕はこうやって質問されて答える感覚で、話しているみたいに歌えたら良いなと思っていて。それがたとえ的外れでも雑音でも「それ言う必要ある?」ということでも、そういうものを含めて好きなんです。だから、今のインスピレーションだけで書きたいんですよね。

GASHIMA:SHIROSEと似ているかもしれないんですけど、理屈で書かないということですね。とくにラップは、韻だったり比喩だったりリズムだったり、テクニックを突き詰めようと思ったらいくらでもできると思います。でも、そんなものってただの飾りに過ぎないんですよ。やっぱり伝えたいことの中身が一番大事で。あと何かを思ったなら、まずそれを批判する自分の気持ちは黙らせて、カッコよかろうが悪かろうが書いてみるんです。もしかしたら僕の口から出てくるその言葉が、社会的に悪いことかもしれないし、恥ずかしいことかもしれないし、誰かを傷つけることかもしれないし、言葉っていろんな責任が伴ってきますけど、自分の胸の内だけで止めずに一回は全て出してみて、それから考えます。

photo_02です。

3人とも大切にしていることの芯の部分が通じているような気がしますね。

SHIROSE:いやー、まぁ難しいですよね。歌詞を書くときに大切にしていることと音楽をやっている意味ってすごく似てると思います。僕は人に言っておきたいことをメモしているみたいな感じなんですよ。誰かに喋りたいこと、伝えたいことを忘れないように曲にしているんだと思います。

皆さんのこれからの夢や目標は何ですか?

SHIROSE:僕は最近、とにかく世界一歌が上手くなってやろうとめっちゃ努力してますね(笑)。前は、上手いことってあんまりいいことだとは思ってなくて、やっぱり届けたいことがあったらそれに集中して、しゃがれた声でも一所懸命に届けることが大事だなぁと思っていたんですけど。やりはじめたら止まらない性格なんで(笑)。

NIKKI:6時間くらい1人でボイトレしてるよね!

SHIROSE:今までボイトレも調査としていろいろ通っているんですよ。その結果「あ、これ意味ないな」と思いました。だけど、その中に意味があることも少しはあって、それをもとに自分でオリジナルのメソッドを作ってひたすら練習しているんです。なんでそれをやり始めたかというと、僕はいつか誰かの心のスピーカーになりたいんです。人が思っていることの代弁というか、物語の肩代わりみたいなのをしたいなぁと。それをするときにしゃがれた声じゃダメだなぁと思って。そういう時にはちゃんとその人の思ったとおりに歌いたいから、まずは歌がうまくなりたいんです。

NIKKI:私は、自分たちの曲を聴いてくれた人が何かしらの行動を起こしてくれたらいいなぁと思って音楽をやっているので、自分たち自身もそうありたいなという感覚がすごく強いです。あと、迷ったり、再出発だったり、みんな人生にはひとつひとつポイントがあると思うんですけど、その大切なポイントをちゃんと支えられる音楽を作っていきたいという想いはずっと変わらないですね。

GASHIMA:WHITE JAMの音楽だったり、僕の音楽を通して“HIP HOP”に興味を持つ人がもっと増えてくれたらいいなと、毎日それしか考えてないですね。HIP HOPって特別なものは何も必要なくて、やろうと思えば今この瞬間から始められるんですよ。しかも本当にすごい勢いで世の中に広まっていて。僕はSHIROSEと一緒に、世界中の作曲家が集まるヨーロッパのキャンプとかに行ったりもするんですけど、この格好で座っているだけでHIP HOPを好きなやつが僕の席の周りに集まってきて、もう友達なんです。英語以上の世界共通言語になっている音楽だと思います。でも、日本はその点ですごく遅れているんですよね。別にみんなにラッパーになって欲しいわけではないけど、少なくともHIP HOPに触れ合えるような場を作れたらいいなぁと思います。

たしかになかなか日本のチャート上位にHIP HOPの楽曲は上がってこないですよね。

GASHIMA:それこそラップなんて歌詞が大事だから、歌ネットさんのランキングにももっとHIP HOPの楽曲が上にあがってきてほしいですね。アメリカの歌詞サイトで「RAP GENIUS(ラップ・ジーニアス)」ってサイトがあるんですけど、ラップの歌詞って世の中で起きてるスキャンダルが全て関係してくるから、歌詞をクリックしたら「この人と付き合ってたけど別れてスキャンダルになりました」みたいなそいつのゴシップ説明が出てきたりすんですよ(笑)。HIP HOPってそれぐらい立体的に楽しめるエンターテイメントなんですよね。それもひっくるめて面白いなぁと思います。だからもっとHIP HOP JAPANにしたい、僕はその一言に尽きますね。

ありがとうございました。では最後に、歌ネットを見ている方へメッセージをおねがいします。

SHIROSE:「咲かないで」は歌詞を見て、歌ってほしいんです。学生の時に仲間と一緒に歌った曲ってめっちゃ記憶に残ったりするじゃないですか。だからこの曲がみんなの約束や思い出になってくれたらいいなと思います。歌詞に辿りついたのであれば、友達とかと一緒に歌って、そしてまた10年後くらいにもう一度歌ってほしいなぁと思います。「nana」っていうカラオケアプリでは俺とコラボもできるので是非、コラボしてください!


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