2秒後くらいに直感で「香音」って思いつきました。

そんな大人気曲「海の声」も収録されている1stアルバム『香音-KANON-』ですが、どのような想いから制作に至ったのでしょうか。

桐谷:まず「海の声」を配信ではなく、CDとして持っていたいと思ってくれている人たちの声が始まりですね。そこから「じゃあアルバムを作りましょう」という話になっていきました。そして今回、収録曲の「海の声」は浦島太郎(桐谷健太)名義で、4曲目5曲目のTHEイナズマ戦隊さんとの曲は河野勇作(桐谷健太)名義で、その曲たちは“役者としての歌手”の延長上にあったと思うんです。だから新曲ではその( )を取りたいなって。

なるほど。役者ではなく純粋に、歌手・桐谷健太としての楽曲ということですね。

photo_01です。

桐谷:はい、これまでの楽曲は、歌詞も曲も自分以外の方が書いてくれたので、誰かが作ってくれた“1”をどんどん広げていくような作業だったと思います。でも自分で音楽を“0”から“1”にしてみたかったんです。だから今回は1曲、自分で歌詞を書いて、曲も高校の同級生と一緒に作りました。プロの人にお願いするのではなく、大切な友達と一緒に“0”から作ることができたのが俺の中ではすごく大きかったですね。

アルバムもリード曲もタイトルは「香音-KANON-」ですが、どんな意味を込めたのでしょうか。

桐谷:「アルバムのタイトルってどうします?」って聞かれた2秒後くらいに直感で「香音」って思いつきました。だからそこに込めた意味っていうのは全てあと付けなんですよ(笑)。“カノン”って、違う楽器で同じフレーズを演奏していくというような意味もあるみたいで。それって“浦島太郎”の声、“河野勇作”の声、それと俺自身の声で想いを繋いでいくような感じに似ているなぁって。あと単純にパッヘルベルの「カノン」って曲も好きだし、香る音っていう言葉もええなぁと思ったし。いろんな意味でしっくりきたのでリード曲も同じタイトルにしました。

新曲の「香音-KANON-」を初めて聴いたとき、ちょっと意外でした。今までの桐谷さんの役イメージから、ロック系やHIP HOP系寄りの曲になるのかなぁと思っていたので。むしろ正反対のすごく柔らかくて優しいバラードですよね。

桐谷:そうなんですよ。4曲目と5曲目にイナズマ戦隊さんの「喜びの歌」「君の旅路に桜が笑う」という曲がしっかりいてくれたから、アツい楽曲はもうそこに任せられるなぁと思ったんです。もしこの2曲をアルバムに入れることができなかったら、リード曲はもっと激しくて派手で情熱的な歌になっていたかもしれないです。でも結果的に「海の声」に繋がっていくような温かい曲ができて良かったと思っていますね。

初めての作詞はどのようになさったのですか?

桐谷:友達が作ってくれた曲を聴いた瞬間に、サビの<忘れないで 忘れないで 君の心に花がある>というフレーズはパン!と出てきたんです。これも直感で、意味より先にフレーズの方が生まれてきた感覚だったと思います。あとから「大切な人にこういう想いでいてほしいな」という気持ちがついてくるような。他のフレーズはなかなか出てこなかったんですけど、やっぱり“意味を考えながら書く”ってちょっとちゃうなぁ…って。だから全てちゃんと生まれてくるまで待ちました。どこかで「大丈夫やろ、絶対に生まれてくるはずや」って確信があったような気がします。そうやって0から最後まで歌詞を生み出すことができたのは、嬉しい経験でしたね。

タイトルにも通じますが、歌詞の中に出てくる<神さまの音が香る>というフレーズがとくに印象的ですね。

桐谷:ぶっちゃけこれも全く意味が説明できないフレーズですよね。でも、自分の中にあった言葉というか、感覚なんです。ビジュアルで言うと、フワッて光が差し込んでいるようなイメージで。視覚的という時点で、実際に音を耳で聴いているわけでも、香りを鼻で感じているわけでもないかもしれないんですけど、俺は「ふとした時にこの感覚あるわ…」と思うんです。それは人によってセンチメンタルな感覚かもしれないし、ノスタルジックな感覚かもしれないし、ワクワクするような感覚かもしれないし。ただ確かにある感覚なんですよねぇ。ここは自分でもお気に入りのフレーズになりました。

また、3曲目の「何か」も歌手・桐谷健太としての新曲です。「香音-KANON-」とはまた違った新しい桐谷さんと言いますか、ちょっとアダルトなテイストを感じました。この曲は「こんな風に作ってほしい」というようなリクエストをされたのですか?

桐谷:実はこの曲、作詞の“もゆる”さんっていうのはあそこに座っている俺のマネージャーなんです(笑)。そんで作曲の“新留隼人”さんはユニバーサルの方なんですよ。だからものっすごい近くの人達だけで作っているんです。

えぇ!そうだったんですか。

桐谷:新曲を2曲作るって話になったとき、あまり時間がない中で自分がどちらの歌詞も書くとなると気持ちが分散してまうかなぁって。俺は「香音-KANON-」だけに作詞のエネルギーを込めようと思ったんです。そこで、もともと作詞もやっている“もゆる”さんにお願いしますと。だから「何か」は歌詞が先だったんですよね。それからいろんな曲をつけてもらったんですけど、なかなかピンとくるものがなくて。いよいよもう決めなアカンぞって時に出会ったのがこの曲だったんです。もゆるさんも俺も「なんかこれええなぁ」って思っていたら、新留さんが「実は作ったの僕なんです」って初めて教えてくれて、エーッ!って(笑)。面白いですよね、世に知られているプロフェッショナルに任せる必要もなく、身近な人たちでこういう素敵なこともできるんだなぁと思いました。



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