例え 何があっても
ずっとずっときっと 希望を ずっとずっときっと 未来を
ずっとずっときっと 明日を
透明な愛言葉 もっと歌詞を見る
―― 今作『30 y/o』には、30歳の絢香さんの“今”が詰まっているんですよね。よく女優さんや女性アーティストの方のインタビューで「30代は楽しい」という言葉を目にするのですが、そんなワクワク感がこのアルバムからも伝わって来ました。
私も周りの女性たちから「30代は楽しいよ~!」という話をたくさん聞いていたので、まったく違う景色なんだろうなぁとは思っていたんですけど、実際30歳になってみてその言葉の意味がわかった気がしています。少しずつ地に足が着いてきたというか、20代よりも経験値が増えたことで余裕が持てるようになったのかもしれない。30歳を迎えた今の自分が感じていること、限りある時間の中で何を選択して進んでいくのか、これからどんな歌を歌っていきたいのか…そんなことを考えることが自然と多くなっていたタイミングでの作品なので、今の私が詰まったアルバムになりました。
―― 10代や20代の頃は、もう少し鎧をまとっていたような感覚もありましたか?
ありましたねぇ(笑)。自分のなかで「こうでなきゃいけない」という枠があったし、常に気を張っていました。18歳でデビューしているので、周りは大人ばかりじゃないですか。だから「若いからダメだとか思われたくない」とか「強い自分でいなきゃ」とか頑張って背伸びをしていたし、今よりも自分らしくいることが難しかったなぁって、振り返ってみて感じますね。もっと楽でよかったのになぁって。それは歌にも表れていると思います。でもそんな時代があったから今の自分がいるんだとは思えてますね。
―― たとえば、どんな曲から“背伸び感”を感じるのでしょうか。
そう言われると難しいなぁ…(笑) 具体的に言っちゃうと、ファンのみんなに今後そういう耳で聴かれちゃうから曲名は言わないけれど、18歳くらいなんて、人生の経験がまだまだ少ない歳じゃないですか。だからデビューして2年程経った頃が一番作詞で苦戦していた記憶があります。でも、それはそれで必要な時代だったんだと思います。生みの苦しみってこういうことなのかなって知ることができたから。でもそんなことも含めて、その時々の自分を残せるから、音楽ってすごいですよね。幸せな仕事をさせてもらっているなぁと改めて感じます。
―― ご自身の歌詞面で「ここが変わったなぁ」と感じるのはどんなところですか?
変わらない想いやテーマはあるんですけど、年齢と共に“チョイスする言葉”が変わってきている気はしますね。たとえば今回のアルバムだと、1曲目の「カラフル!!」の<色の無い時代>とか。自分の内から出てきた感情を言葉にするというところから一歩離れて、今の時代と冷静に向き合うこともできるようになったのかなって。
―― 今回のアルバム曲だと「サクラ」という卒業ソングも、今の絢香さんならではの歌詞だなと感じます。
その通りですね。やっぱり【卒業】と聞くと、一番に思い浮かぶのは学生の卒業だと思うんですが、視点を変えると色々な卒業があるなって。卒業する子の親にとっては、子育ての卒業という人生において大きな卒業だと思いました。自分にとっては子育ての卒業はまだ先の話ですけど、それでも日々娘が成長してゆく姿を見ていると「いつかは必ず巣立っていく日が来るんだなぁ」って切なくなる瞬間もあります。それがアルバムのテーマでもある【時間】と【変化】に繋がるんです。時間には限りがあるからこそ“今”この瞬間を大事にしたいなって。
―― <シワが増えたいまも>、<我が子の手 遠ざかりゆく>など、なかなか卒業ソングでは見かけないフレーズですもんね。今までにない新しい卒業ソングです。
未来の自分の気持ちを想像すると同時に「自分の母もこんな気持ちだったんだろうなぁ」って母の気持ちもわかったような気がしました。私は17歳で上京しているので、ちょっと人より早く母や故郷から離れていまして。自分だったら、娘が17歳になったときに迷わず背中を押せるかな?って考えちゃいました。反対することもなく全力で応援してくれた母に改めて感謝だなぁと。あと、この曲はすでに去年のツアーでずっと歌っていたんですけど、お客さんの顔を見ながら「このひとは誰を思って、何を思って聴いているのかなぁ」って想像するだけでグッときたりなんかもありました。そう思うと、人生にはいくつかの卒業があって、そこからまた成長したり、人生の新たなステージへ進んでいくんだなと感じますね。
―― では、絢香さんは、娘さんが17歳になったとき「歌手になるために上京したい」と言われたら…?
私自身、好きなこととかやりたいことを、全力で母に応援してもらってきたからこそ今の自分がいるので、私も母のようであれたらいいなと思いますね。歌に限らず、娘が何をやりたいと言ったとしても、心から応援したいです。
―― 素敵です…!ちなみにアーティストとしての活動と子育ての両立で、仕事のリズムって大きく変わりましたか?
多少は変わりましたけど、自然とすぐに慣れましたね。それは本当にありがたいことに、家族や周りのサポートがあるからこそ両立できていることで。そこはもう感謝しかありません。あと、仕事も子育てもどちらも私がやりたいことなので、まったく苦というものがないんです。
―― 曲作りはご自宅でなさるのでしょうか。
はい、自宅で作ります!私には2つ作り方がありまして。1つは、家事とか普段のことをしながら「あ、こういうこと書きたいな」とか「あ、このメロディーいいかも」と浮かんできて、そのままピアノに向かう。だから曲を書くことって、もう日常生活の一部だったりするんですよね。もう1つは「書くぞ!」ってモードになってピアノに向かう。その両方があるんですけど、わりと日常の中で生まれるパターンの方が多いです。オンオフなく、お家で作れちゃうタイプです。