前月の歌詞検索ランキングを掘り下げて分析することで、キラっと輝くキラーチューン(名付けて“キラ☆歌”)を発掘しようというこのコーナー。
秋も深まってきたので、第4回は映画タイアップの人気楽曲を分析してみたい。
様々なエンタメ業界が、“手軽に楽しむ”という方向にシフトしつつある中で、“大画面で迫力を味わう”というスタイルで、盛況を保っている映画業界。特に、ここ数年は実に様々な映画が盛り上がっているが、どのようなタイアップ曲が盛り上がっているのだろうか。
第4回:映画タイアップ・ランキング(09年11月:前月データより分析)
テーマ
順位
総合
順位
アクセス
指数
タイトル/
アーティスト
発売日 映画/
原作の種類
テレビ
放送
1 5 100.0 僕は君に恋をする
平井堅
2009.10.21 僕の初恋をキミに捧ぐ
マンガ
 
2 6 98.7 It's all too much
YUI
2009.10.7 カイジ 人生逆転ゲーム
マンガ
 
3 15 56.1 遥か
GReeeeN
2009.5.27 ROOKIES -卒業-
マンガ
4 24 40.9 Never say die
YUI
2009.10.7 カイジ 人生逆転ゲーム
マンガ
 
5 26 39.8 One Love
2008.6.25 花より男子F
マンガ
6 31 37.3 366日
HY
2008.4.16 赤い糸携帯
小説
 
7 35 35.0 明日がくるなら
JUJU with JAY'ED
2009.4.29 余命1ヶ月の花嫁
実話
8 37 34.4 Believe
2009.3.4 ヤッターマン
マンガ
アニメ
9 45 30.8 プルメリア 〜花唄〜
Aqua Timez
2009.7.29 ごくせん THE MOVIE
マンガ
10 74 22.2 最愛
KOH+
2008.10.1 容疑者Xの献身
小説
11 102 18.3 手をつなごう
絢香
2008.3.5 ドラえもん
マンガ
12 109 17.6 Jewelry day
絢香
2007.7.4 ラストラブ
携帯小説
 

 1位は、『僕の初恋をキミに捧ぐ』から平井堅の「僕は君に恋をする」、2位には『カイジ 人生逆転ゲーム』からYUIの「It's all too much」と最新の全国上映系ヒット作の主題歌が並んだ。(4位には、同映画劇中歌「Never say die」もランクイン。)前者は、幼なじみの男女が主人公の純愛モノ、後者は青年が命懸けでギャンブルに挑むサバイバルもので、ストーリー面においてはヒットの方程式はないようだ。
 しかし、上位作品の原作を追ってみると、1位から5位まで人気マンガが独占。上位12作を見ても、その半数以上がマンガ、2作が携帯小説と、ヤング層の文化とリンクしたものが大半で、そこから映画がヤング層に人気となり、その主題歌の歌詞もこうやって頻繁にチェックされているようだ。
 しかも、上位作の約半数は、映画だけではなく、公開前にテレビでも放映されている。この背景には、テレビのCM広告収入が減る分を、事業収入の増幅で補強しているという、テレビ業界の現状が反映されているようだ。つまり、“間違いがない”ヒットを出すために、既に若者に人気の原作(マンガやケータイ)→ドラマでヒット→映画でもヒット(興行収入)→その一連の主題歌もヒット(印税収入)、といった図式を徹底しているように見て取れる。

 そのように書くと、“売れるもの”は最初からほぼ決まっているようにも思えるが、“売れ続けるもの”は、やはり楽曲のチカラ、アーティストのチカラによるものだろう。5位の嵐「One Love」、6位のHY「366日」などは1年以上前の作品で、歌詞検索やカラオケでヒットを続けている。(なお、11位と12位の絢香は、映画効果というよりも、9月発売のベスト盤の大ヒットによる相乗効果が大きい。)
以上のように、映画タイアップ曲の大半は邦画だが、最近では『ワイルド・スピードMAX』にガゼットの「BEFORE I DECAY」、『私の中のあなた』に一青窈の「うんと幸せ」など、洋画界にも邦楽のイメージソングが付くなど、やはり映画は“おいしい”タイアップとして注目され続けている。その中で、嵐やHYのように、映画を想起させつつも、ラブソングの定番として進展していくヒットをどれだけ作れるかが、今の音楽業界のカギではないだろうか。



It's all too much
YUI
 

  通算31作目のシングル。デビューした95年から5年近く不遇の時代を送ったという平井も、00年の「楽園」以来、これでオリコンTOP10入りも21作目。本作は、恋人のことを想いながらも別れてしまうという、ズルすぎるくらい鉄板の泣けるバラード。
 なお、本作CDにはカップリングに三谷幸喜が作詞を手がけた「一人じゃない」を収録、また初回盤にはアルバム『Ken’s Bar II』のリリース・パーティーで披露した4曲まで収録、とパッケージの話題性が高い。
 さらに言うと、必ず売れてしまう鉄板バラードとは裏腹に、必ず○○てしまうのが、「Strawberry Sex」「Style」そして前作の「CANDY」のようなファンキー・ポップス路線。歌唱レベルの高さや楽曲の練りこまれ方なら圧倒的にこちらに軍配が上がるのに・・・。ともあれ、平井自身は、そんなジレンマすら達観した上で、飄々と自由な活動をしているようで面白い。

ここではデビュー1年内のアーティストを対象に、毎月注目のアーティストを"歌ネット・ルーキー"として紹介していく。ただし、「ルーキー」として選定するのは1アーティストにつき1度限りとする。

 今月は、ヒップホップ・ユニット、ヒルクライムに注目した。彼らは、MC担当のTOC(トク)とDJ KATSUによる男性二人組で、ともに新潟県在住。04年のユニット結成以来、地元でのインディーズ活動を経て、09年7月15日にシングル「純也と真菜実」でメジャーデビュー。実話に基づく結婚ソングとして、またジャケットやPVに皆藤愛子を起用したことで話題となり、オリコン最高24位のヒットとなった。

  次いで、9月30日には2ndシングル「春夏秋冬」を発表するが、発売前から着うた、有線、そして歌ネットでの歌詞検索数などで軒並みTOP3入りして大きな話題となり、その結果、オリコンでは初登場6位、4週連続チャートイン(11月以上中現在継続中)。近年の“着うた発”でブレイクしたアーティストでは珍しく、CDでもメガヒットしそうなのが特長で、これにはラジオ番組の担当、CD店インストアLIVEの実施など、地元・新潟に根ざした着実な活動が他のアーティストとは一線を画していることも大きい。
 勿論、KREVAにも似たハリと艶やかさを併せ持つTOCのボーカルや、「新しい景色を見つけに行こう二人だけの春夏秋冬」といったキャッチーな歌詞も大きな魅力だが、「春夏秋冬」のカップリング、「♪メリーゴーラン♪」では、ラップもライムも、よりスキルの高さが分かるパーティー・チューンなので、是非とも様々な楽曲で彼らの音楽を味わってみてはどうだろうか。 

ヒルクライム
ヒルクライム人気曲
順位 占有率 曲名 初収録作品 発売日
1 91.5 春夏秋冬 2ndシングル・A面曲 2009.9.30
2 5.3 純也と真菜実 1stシングル・A面曲 2009.7.15



つのはず・まこと。1968年京都府出身。理学部修了→化学会社勤務という理系人生を経て、97年に何を思ったか音楽関係の広告代理店に転職。以降、様々な音楽作品のヒットに携わり、05年にT2U音楽研究所を設立。現在は、本業で音楽分析やCD企画をする傍ら、日経エンタテインメント!などでヒットチャート解説に関する連載を執筆中。ちょっと懐かしめのドライブ向け人気曲を集めた企画CD『アラフォー・ドライブ』が発売中。ドライブで聞きたい楽曲のアンケート結果を中心としつつ、柴田恭兵「ランニング・ショット」を強引に入れたら、各所から狂喜の声(?)がちらほら。よろしければどうぞ♪

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