早速、ランキング表を見てみると、楽曲別で総合TOP10入りしているバンドは東京事変「能動的三分間」のみで、総合TOP20まで見てもMr.Children「fanfare」、いきものがかり「じょいふる」のたった3アーティストだ。これは、バンド系のアルバムCDシェアが3割前後あることと比べると、かなり少ない。バンドの場合は、楽曲、演奏、そして生のパフォーマンスなど多面的な魅力で支持されていることが多く、"歌詞"に特化した楽曲ランキングでは上位に出づらいということだろう。但し、この表にはないが、"アーティスト別歌詞ランキング"では、Mr.Chidlren(3位)、RADWIMPS(4位)、いきものがかり(7位)、BUMP OF CHICKEN(8位)、UVERworld(10位)と、人気アーティストの半数をバンドが占めているように、いったん好きになれば、楽曲全部を調べたくなるほど熱いファンが多いというのもバンドの大きな特徴だ。
さて、バンド楽曲ランキングに戻ると、1位と3位にグリコCMソングがランクイン。グリコは、オレンジレンジ「
DANCE2 feat.ソイソース」やLOVE PSYCHEDELICO「
Silver dust lane」など、これまでもバンドの躍動感を商品イメージと重ねた話題曲が多いようだ。特に、いきものがかりは3位、5位、13位と上位に3曲も登場。彼らの場合は、バンドでありながら、歌謡曲世代やロック嫌いのJ-POPファンも受け入れられる音楽性が、歌詞人気にも繋がっているのだろう。最新アルバム『ハジマリノウタ』も実に手堅い。
4位、6位、9位、12位、14位の5つがドラマタイアップ曲で、歌詞検索への影響力の強さが色濃く出ている。このうちmonobright「
孤独の太陽」について、シングル自体は自己ベストではないものの、歌詞検索数が過去最高レベルとなっているので、今後の更なるブレイクに期待したい。ちなみに、9位、12位、14位のドラマ主演が、いずれもNEWSの山下智久というのも面白い。彼が出ていると、ドラマへの感情移入度が圧倒的に高くなり、歌詞にものめりこんでしまうのだろうか。(「小さな恋のうた」は新垣結衣が「SONY Walkman」CM内でカバーしている影響が多いことを申し添えておく。)
それにしても、15曲中13曲が何らかのタイアップ曲で、ノンタイアップはBUMP OF CHICKENの2曲のみ。BUMPがどんな楽曲でも高い注目を集めていると同時に、その反面、ノンタイアップのバンド楽曲は、なかなか一般的には伝わりづらいということが分かる。それは、前述のようにバンドの場合は総合的なアーティスト・パワーで判断されることが多いこともあろうが、05年のサンボマスター、06年のRADWIMPS以降、「歌詞がすごい」と言われるバンドがブレイクしていない事とも関係していそうだ。その意味で、このぽっかりと空いた"文学ロック"バンドが2010年にブレイクするか注目したい。
以上のように、バンドのヒット自体は総合ではやや目立たないものの、ユニークな特徴が沢山あることが分かった。「ピンチ」は「チャンス」の宝庫なのだ。