前月の歌詞検索ランキングを掘り下げて分析し、キラっと輝くキラーチューン(名付けて"キラ☆歌")を発掘しようというこのコーナー。
  今月は、俳優やタレント、アイドルとしても多忙な、いわゆる"兼業アーティスト"に着目した。ここでは、「兼業→片手間の歌手業→非実力派」などと決して安直に考えていないことを予め注意しておきたい。
第8回:兼業アーティスト・ランキング(2010年02月:前月データより分析)
テーマ
順位
総合
順位
アクセス
指数
タイトル
アーティスト
発売日
1位
4
100.0
Love yourself
〜君が嫌いな君が好き〜
KAT-TUN 2010.2.10
2位
12
53.2
Believe 2009.3.4
3位
18
38.6
はつ恋 福山雅治 2009.12.16
4位
19
38.1
With All My Heart
〜君が踊る、夏〜
東方神起 2010.2.17
5位
21
37.3
ヤンバルクイナが飛んだ サーターアンダギー 2010.2.10
6位
22
36.8
好きだから ベッキー♪♯ 2010.2.3
7位
28
30.9
truth 2008.8.20
8位
29
30.9
BREAK OUT! 東方神起 2010.1.27
9位
31
30.1
One Love 2008.6.25
10位
32
29.9
THE D-MOTION KAT-TUN 2010.2.10
11位
42
25.7
サクラ咲ケ 2005.3.23
12位
48
24.5
マイガール 2009.11.11
13位
54
21.5
Love so sweet 2007.2.21
14位
55
21.4
5×10 2009.8.19
15位
57
21.1
A・RA・SHI 1999.11.3
16位
66
19.9
きっと大丈夫 2006.5.17
17位
67
19.8
Share The World 東方神起 2009.4.22
18位
68
19.8
明日の記憶 2009.5.27
19位
70
19.5
Trust Me 松下優也 2010.2.17
20位
77
18.1
桜の栞 AKB48 2010.2.17
※ほぼ継続的に俳優、タレント、アイドルとしての活躍があるアーティストを対象とした。
 (決して「音楽活動が疎かである」という意味ではない。)

 1位は、KAT-TUNの最新シングル曲。彼らのシングルは、高セールスの割に歌詞検索数では上位にならないこともままあるが、本作では着うたも歌詞検索でも上位で、従来の彼らと比べ発売種類が多い訳でもないのにCDセールスも伸びている。このことからも、楽曲のチカラで支持されていると言えよう。
2位は、嵐のほぼ1年前のシングルがランクイン。デビュー曲「A・RA・SHI」から、この時点での最新シングル「マイガール」まで今回のTOP20のうち半数の10作が嵐というのも驚異的だ。特に、この月は、「日本ゴールドディスク大賞」にて"史上初の10冠"(最多売上アーティスト、最多売上シングル、ヒット・シングル4作、最多売上&ヒット・アルバム、ヒットDVD2作)と大きく報道されたことも拍車をかけた。このことから、単なるタレントとしての人気ではないことも納得。

 嵐に次いで多数ランクインしているのが、4位、8位、17位の東方神起。現在、表立った活動はしていないものの、最新のベスト・アルバムが既に50万枚級のヒットとなっており、これは、17位で『ワンピース』主題歌「Share The World」以降、アイドル的人気から楽曲人気にも広がったことが大きく影響しているのだろう。ちなみに、4位の「With All My Heart」は、メンバー自選曲を集めた2CD+DVDタイプにのみ収録されているのでご注意を。
5位のサーターアンダギーは、『クイズ!ヘキサゴン』発のユニット。07年のPabo以来、4年連続ヒットを飛ばしてきた同番組だが、今年は羞恥心、遊助級の大ヒットが出るか。新顔では、19位に映画や舞台でも活躍するR&Bシンガー松下優也がランクイン。本作のヒットは人気アニメ『デュラララ!!』主題歌による所が大きいが、日本では数少ない"歌って踊れる"男性アーティストなので、今後も注目したい。

  ここまで見て分かるように、上位のうち、男性は多数なのに対し、女性はベッキー♪#とAKB48のたった2組しかいない。前月も述べたが、AKB48の楽曲は着実に浸透しているものの、他の女性アイドルも多数ランクインしているCDランキングとは大きく矛盾しているように見える。だが、これは決して集計ミスではない(笑)。つまり、女性アイドルの多くが、発売日や休日に握手会を強行してCDランキングでTOP10入りを死守(しかも、発売2週目に急落)しても、その楽曲が殆ど気にされていないという事実を表しているのだ。この点が、男性タレントとの大きな違いだろう。
 
 最近は、女性アイドルが活況と言われるが、80年代の松田聖子中森明菜、90年代のSPEED、00年代のPerfumeのように、"歌が支持される"女性アイドルが、今後増えない限り、本当の復活とは言えないだろう。その指標としても、この歌詞検索ランキングは重要な意味を持つ。




Believe

  通算11作目のシングルで、亀梨和也主演のTBS系ドラマ『ヤマトナデシコ七変化』主題歌。
ドラマ主題歌かつクールさも演出した直球ラブソングで、いかにもメインターゲットである女性ファンがメロメロ(死語)となりそうだが、本作のカップリング「THE D-MOTION」では前衛的なテクノポップに挑んでおり、この保守と革新の絶妙なサジ加減が、本シングルの好調ぶりに繋がっていることが、透けて見えてくる。両作品とも、LIVEで盛り上がりそうなイントロやサビがあり、作品に職人魂が感じられるのもお見事。


ここではデビュー1年内のアーティストを対象に、毎月注目のアーティストを"歌ネット・ルーキー"として紹介していく。ただし、「ルーキー」として選定するのは1アーティストにつき1度限りとする。

 今月は、人気タレントのベッキーに注目。彼女は、1984年神奈川県出身の日英ハーフで、1999年以降アニメ作品や様々な企画盤などで「ベッキー」としてボーカル参加していたが、昨年12月にシングル「心こめて/ハピハピ」であらためて歌手デビュー、音楽活動時は「ベッキー♪#」と名乗るようになった。より表情豊かなボーカルとなり、そのアーティスト名が示すとおり、音楽的意欲は飛躍的に向上したようだ。2月24日発売の1stアルバム『心の星』では、全12曲の作詞と4曲の作曲を手がけているが、最も感心するのはその作品の多様ぶり。女性の裏腹な真情を綴ったアップテンポの「好きだから」から、鉄板ラブ・バラードの「心こめて」、更にはLIVEで"BANZAI"コールが起こりそうな「WBC」など、聞いていて素直に楽しい。マルチな活動をする彼女だけに、今後さらにスケール感のある楽曲を手がけることも期待。
 

ベッキー♪#
ベッキー♪#人気曲
順位
占有率
曲名
初収録作品
発売日
1
68.7%
好きだから 2ndシングル 2010.2.3
2
16.3%
心こめて 1stシングル 2009.12.2
3
5.2%
ハピハピ 1stシングル(両A面2曲目) 2009.12.2
4
2.0%
WBC 1stアルバム『心の星』 2010.2.24
5
1.5%
君へ 1stアルバム『心の星』 2010.2.24




つのはず・まこと。1968年京都府出身。理学部修了→化学会社勤務という理系人生を経て、97年に何を思ったか音楽関係の広告代理店に転職。以降、様々な音楽作品のヒットに携わり、05年にT2U音楽研究所を設立。現在は、本業で音楽分析やCD企画をする傍ら、日経エンタテインメント!、共同通信などでも愛情と熱情に満ちた(?)連載を継続中。3月17日には、3年がかりで復刻を進めていた岩崎宏美の紙ジャケット・コレクションがようやく完結。業界を目指している方は、その後の邦楽のCD復刻にも影響を与えた本プロジェクトについてこちらで、勉強してみるのも良いかも?