前月の歌詞検索ランキングを掘り下げて分析し、キラっと輝くキラーチューン(名付けて“キラ☆歌”)を発掘しようというこのコーナー。今回は、タイトルに数字の付く楽曲=“数字うた”をランキングしてみた。
“数字うた”は、ちあきなおみ「四つのお願い」、郷ひろみ「2億4千万の瞳」など昭和の時代から、九州男のメジャーデビュー曲「1/6000000000 feat.C&K」など近年まで、時代に関係なく印象的な楽曲が多いようだ。九州男のタイトルを見て、“いち、じゅう、ひゃく、せん…”と数えた人も少なくないはず(笑)。それだけ数字は大きなフックになりうるのだ。


第20回:“数字うた”TOP15 (2011年3月:前月データより分析)
テーマ
順位
総合
順位
アクセス
指数
タイトル アーティスト 発売日
1位
3
100.0
何かひとつ feat.JAY'ED & 若旦那 JAMOSA
2011/2/23
2位
23
42.5
あとひとつ FUNKY MONKEY BABYS
2010/8/4
3位
24
39.3
two of us flumpool
2011/1/26
4位
28
35.0
好きだよ。〜100回の後悔〜 Sonar Pocket
2011/1/26
5位
51
25.5
100年先まで愛します。 Sonar Pocket
2011/1/26
6位
62
23.0
365 Mr.Children
2010/12/1
7位
63
22.9
10年桜 AKB48
2009/3/4
8位
71
21.2
39 レミオロメン
2004/3/9
9位
95
18.2
偶然の アンダーガールズ(AKB48)
2011/2/16
10位
119
16.6
ふたりごと RADWIMPS
2006/5/17
11位
125
15.6
手紙 〜拝啓 十五の君へ〜 アンジェラ・アキ
2008/9/17
12位
136
15.1
One Love
2008/6/25
13位
149
14.2
66号線 BUMP OF CHICKEN
2010/12/15
14位
169
13.0
5×10
2009/8/19
15位
176
12.6
366 HY
2008/4/16
次点
179
12.6
NO.1 UVERworld
2010/11/24

 さて、今回のランキングを見てみると、総合TOP200に17曲もの“数字うた”があった。昨年同時期の総合TOP200内では“数字うた”は10曲なので、なんと7割も増えている。この要因としては、AKB48の社会現象による数字ネーミングの増加もあろうが、8位のレミオロメンや11位のアンジェラ・アキのように数字や年齢を絡めたメディア・プロモーションが出来ることや、その数字の面白さ自体が話題になるなど、とりわけ情報が氾濫する現代では、このフックがよりヒットに結びつきやすいのかもしれない。

 “数字うた”の1位と2位には、ともに“ひとつうた”がランクイン。1位は、ドラマ『美咲ナンバーワン!!』の主題歌で、落ちこぼれ扱いされる高校生を応援する言葉として、また、2位は、『ABC夏の高校野球』応援ソングとして、それぞれ“(何か/あと)ひとつ”という数字が胸にグッとくるので、これだけ強い支持を得ているのだろう。
4位と5位は、“ソナポケ=100”と印象付けた2曲がランクインしており、彼らの再ブレイクに数字が大きく関与していそうだ(この戦略を考えた方、お見事!)。その他、上位15曲の中では、6位のMr.Children「365日」と、15位のHYが「366日」が、共に1年に絡めたタイトルだが、それぞれ「なぜこの日数なんだろう?」って気になったことが、楽曲を好きになるキッカケになった人も多いのではないだろうか(特に後者)。

 さらに、TOP15のうち、2年以上前の楽曲が6曲もあるのも驚きだ。勿論、楽曲の人気には、アーティストの資質、歌詞、歌唱、メロディーなどの魅力が総合的に関与しているのだろうが、数字で「おやっ?」と思わせるだけでなく、「あの日付や年齢の歌ね」と長期にわたって想起させる魅力にもつながっているのではないだろうか。
今後、“情報が氾濫しているので”とか“ブレイクの可能性が高まるので”という理由から、半端な数の“数字うた”がますます増えるのかもしれない。なにしろ、数字は季節や天気とは比べ物にならないくらい、ほぼ無限のバリエーションを加えることができるのだから。とはいえ、どの“数字うた”もそれを象徴する感情表現が突出していることも忘れてはならない。




何かひとつ feat.JAY'ED & 若旦那
JAMOSA

あとひとつ
FUNKY MONKEY BABYS


two of us
flumpool


 2008年9月にシングル「Promise」でメジャーデビューした2MC+1DJによる名古屋出身の3人組。同作品が、“老人介護施設で知り合ったおばあちゃん”がキッカケで誕生したというエピソードも手伝って、幅広い年代に支持されるロングヒットとなったが、その広がりが逆に足かせになったのか、その後5枚のシングルはデビュー作のセールスを超えることはなかった。
  その後、2010年10月に現在の徳間ジャパンコミュニケーションズに移籍、アルバム発売前に先行する今回の連続配信ヒットで、今年1月に発売された2ndアルバムで初のTOP10入りを果たした。4位の「100回くらい忘れようとしたけど もうダメだよ」、5位の「今から100年先でも愛します」という、あまりにダイレクトな歌詞、しかもサビから始まるという歌謡曲風の曲想に、ヒネクレ者の私などは「ちょっとやり過ぎでは…」とも躊躇しがちだが、ちゃんと楽曲を聞けば、それが堂々とできる潔さや、その強さに負けない直球ボーカルの魅力に惹かれていく。2000年以降、ORANGE RANGE、Aqua Timez、FUNKY MONKEY BABYSなど、実直系メッセージ&ボーカルで大ブレイクしたアーティストが多いだけに、彼らの更なるブレイクにも期待したい。

 


ここではデビュー1年内のアーティストを対象に、毎月注目のアーティストを"歌ネット・ルーキー"として紹介していく。ただし、「ルーキー」として選定するのは1アーティストにつき1度限りとする。


  今月は、4人組ガールズバンドのねごとに注目した。彼女たちは、全員千葉県出身、全員平成生まれで、全員が高校2年生の時にバンドを結成。08年、高校3年生の時に出場した10代限定のロックフェス『第1回閃光ライオット』にて審査員特別賞を受賞し、大学を入学した09年より徐々にLIVE活動を重ね、2010年9月に1stミニアルバム『Hello!“Z”』でメジャーデビューした。全6曲を聴くと、ボーカルの発声が椎名林檎っぽかったり、メロディーが捻じれるように聞こえる部分がくるりっぽかったり、静寂から一気に弾けだす感じはチャットモンチーっぽかったり聞こえることもあるが、デビュー1枚目にして、それら実績のあるアーティストを想起させるほど安定した愛のあるパフォーマンスに驚かされる。(しかも、すべての独創は模倣が起点なのだから、これはこれで良いのだ。)
今回の、検索数の急増は『au“LISMO” 』CM曲になっている1stシングル「カロン」の人気が突出したことによるが、この曲も含め歌詞が空想的で面白いものが多い。 今後、歌詞から彼女たちの特長が広がっていく可能性も十分に有り得る。





順位
占有率
楽曲
初収録作品
発売日
1
81.7%
カロン 1stシングル表題曲
2011.3.2
2
7.8%
ループ V.A.『閃光ライオット2008』
2008.11.26
3
3.1%
透き通る衝動 1stミニアルバム『Hello! "Z"』
2010.9.29
4
2.5%
ワンダーワールド 1stミニアルバム『Hello! "Z"』
2010.9.29
5
2.0%
うずまき 1stミニアルバム『Hello! "Z"』
2010.9.29



つのはず・まこと。1968年京都府出身。理学部修了→化学会社勤務という理系人生を経て、97年に何を思ったか(笑)音楽関係の広告代理店に転職。以降、様々な音楽作品のヒットに携わり、05年にT2U音楽研究所を設立。現在は、本業で音楽分析やCD企画をする傍ら、日経エンタテインメント!、共同通信などでも愛と情熱に満ちた連載を継続中。最近は、謎(でもないが…)の女性トリオ、THE★THREE SOUL PIGREESが歌う「ピンクと呪文」のファンキーさにメロメロになっております。サビの「バンチイセッツータイナーモノカラター」が分かれば、あなたも業界通です(笑)。