前月の歌詞検索ランキングを掘り下げて分析し、キラっと輝くキラー・チューン(名付けて"キラ☆歌")を発掘しようというこのコーナー。今回は、シングルのカップリング曲限定でTOP10を分析してみた。
近年は、木村カエラ「Butterfly」や、Mr.Children「365日」など、大型タイアップが付いていながら、またその曲調も親しみやすく大衆ソングとしてヒットするポテンシャルを持ちながらも、その楽曲がアルバムにのみ収録されるというケースが増えている。また、椎名林檎「自由へ道連れ」や、ハジ→の「あなた。」のように、CD発売が未定のまま配信限定でリリースされる楽曲も少なくない。そんな状況で発売されるシングルの人気は、ますますアイドル勢に集中する傾向にあるが、そのカップリング曲の人気はどうなっているだろうか。
第36回:シングル・カップリング曲TOP10 (2012年7月:2012年6月のデータより分析)
テーマ順位 歌詞順位 アクセス
指数%
楽曲名 アーティスト 発売日 シングル1曲目/順位
1位 28 100 Happy Half Year! 西野カナ 2012/5/23 私たち 1
2位 47 79.1 花火 2012/6/6 Your Eyes(通常盤) 7
3位 76 63 姉妹どんぶり 渡辺麻友・浦野一美
(渡り廊下走り隊7)
2012/5/30 少年よ、嘘をつけ
(初回盤A)
×
4位 78 61.8 君がいるから 2012/6/6 Your Eyes(初回盤) 7
5位 89 55.4 LOVE LIKE CRAZY 西野カナ 2012/5/23 私たち 1
6位 91 54.6 Love Story ★ 安室奈美恵 2011/12/7 Sit!Say!Wait!Down! ×
7位 97 53.7 voice 2012/6/6 Your Eyes(通常盤) 7
8位 105 51 乱れ咲けロマンス 関ジャニ∞ 2012/6/13 愛でした。 14
9位 119 47.3 不死鳥 SEKAI NO OWARI 2011/8/17 花鳥風月 28
10位 128 46.4 生物学的幻想曲 SEKAI NO OWARI 2012/5/30 眠り姫 90
次点 129 46.4 いつかきっと… ★ EXILE ATSUSHI 2011/9/14 Rising Sun 154
※シングルの2曲目以降に収録された楽曲でランキングを作成。
タイトル後の「★」は両A面曲。「×」は200位以下。

 まず、総合TOP100に入ったシングルのカップリングはわずか7曲(両A面の安室奈美恵を除くと、たったの6曲)にとどまった。ちなみに、アルバム初収録曲は18曲とこの倍以上の人気。やはり、近年はシングルのA面曲のみ動画サイトやダウンロードサイトで楽しむというファンが多く、カップリング曲にまで興味を持つファンが少ないようだ。

しかし、そんな中でも、西野カナがカップリング曲の1位と5位にランクイン。彼女のシングルは、レンタル解禁日を通常のシングルより2週間半遅らせる措置を取る為か、ほぼ毎回3曲収録となっているが、カップリング曲の上位常連となっている。しかも、カップリングでは、よりR&B色が強かったり、曲調もワイルドだったりと、冒険していることが多い。今回の「Happy Half Year!」も、♪Eh Oh Eh Oh〜なんて掛け声があって、いつも以上にアゲアゲなナンバーだし、「LOVE LIKE CRAZY」は4つ打ちサウンドで、こちらもかなりLIVE向き。表題曲では、割とベタでキャッチーなものが多いが、カップリング曲を使って、作品の幅を広げているのが、他の着うたディーバと大きく異なることだろう。初回出荷分のみジャケットを変えたり、シールを入れたり、さらにカップリング曲の配信開始日を遅らせたりと、シングル・パッケージを買ってくれるファンに向けてのこうした取り組みがシングル・ヒットの継続に繋がっているのだろう。

そして、2位、4位、7位には、嵐の39thシングルのカップリング3曲がすべてランクイン。彼らも、カップリング曲のランクインが多いが、このシングルについても既聴感のある王道バラード「Your Eyes」よりも、ファンキーでソウルフルな「花火」や、沖縄音階や三線を取り入れた「voice」の方が、個人的には面白い。つまり、カップリング曲によって今後の彼らの可能性を試しているのだ。

9位と10位には、現在急上昇中のSEKAI NO OWARIがランクイン。最新シングル「眠り姫」が自己最高のヒットとなっているが、カップリング曲まで上昇しているということは、彼らの世界観全体が注目されているということだろう。同社のアーティストでは、大半のシングル・カップリング曲がアルバム未収録となっているゆずや、シングルの隠しトラックで、摩訶不思議な楽曲を披露し続けるBUMP OF CHICKENがいるように、彼らもまたシングル・ヒットの常連となるか、今後が楽しみだ。
以上のことから、シングル・カップリング曲は、両A面ではない限り、大衆には広がりづらいが、パッケージやアーティストの魅力を増長するのに十分役立っていることが分かった。




Happy Half Year!
西野カナ



花火 /嵐


姉妹どんぶり
渡辺麻友・浦野一美
(渡り廊下走り隊7)
 

 渡り廊下走り隊7の(渡り廊下走り隊時代も含め)通算10作目のシングルの初回盤Aのみ収録のカップリング曲。平嶋夏海の脱退により暫定的にメンバーとなった元SDN48の浦野一美と、渡り廊下のエース、渡辺麻友によるデュエット曲だが、今回、いつになく上位になった理由は、まぎれもなくその刺激的なタイトルが、ネットの掲示板を中心に話題沸騰になったことによるもの。実際に聞いてみると、明るいアップテンポの楽曲に合わせて、姉と妹が同じ彼を好きになって、3人でドライブしようというコミカル・タッチなナンバーで、タイトルから期待(?)されるような出来事は起こっていない。ちなみに、5月、6月合わせて同作品への歌詞に約10万アクセスが見られたが、初回盤Aの売上げは約1.6万枚で、初回盤B、初回盤C(いずれも約1.4万枚)との差はわずか0.2万枚。つまり、現状の彼女たちは、まだコアファンの複数買いが中心で、話題作が1作あるくらいでは、なかなか売上増には繋がらないようだ。今後、彼女たちらしいコミカル路線が確立することを期待。


※ここではデビュー2年内のアーティストを対象に、毎月注目のアーティストを"歌ネット・ルーキー"として紹介していく。ただし、「ルーキー」として選定するのは1アーティストにつき1度限りとする。
 今月は、ルーキー部門で初めてSEKAI NO OWARIが1位となったが、同時にダウンロードにおける上位常連のNoaが初めてTOP5にランクインした。彼女は、仙台を拠点に活動する音楽集団NO DOUBT TRACKSに所属し、07年よりコンピレーション・アルバムに参加、自身のソロ・デビューは08年12月のアルバム『LUCY LOVE』。同作は、半年間にわたるロングヒットとなり、その勢いを受けて翌年8月の2ndアルバム『LUCY LOVE-Season II-』はオリコンTOP10入りを果たした。昨年、キングレコードに移籍し4thアルバムを発表、今回の上昇は今年7月11日発売のベスト・アルバム『Noa's LOVE』に先行する形で、配信されている楽曲の人気によるもの。透き通っているが情感が伝わる美声と、切なさいっぱいの歌詞が特長で、恋愛モード全開になりたい人に最適の1枚。

※大手レコード会社への移籍から2年内なので、ルーキーとしてカウントした

順位 占有率 楽曲 初収録CD 発売日
1 35.9% 愛した君がいた
feat. LGYankees, LGMonkees
ベストAL『Noa's LOVE』 2012.7.11
2 15.4% Darlin' ベストAL『Noa's LOVE』 2012.7.11
3 4.5% My Mistake ベストAL『Noa's LOVE』 2012.7.11
4 4.0% 約束... feat. LGYankees 4th AL『N』 2011.12.7
5 3.8% アカシ 3rd AL『Noaism』 2010.8.18
6 2.2% 願い 4th AL『N』 2011.12.7
7 2.2% 月のヒカリ feat.中村舞子 2nd AL『LUCY LOVE-season II-』 2009.8.5
8 2.2% …いいよね? 1st AL『LUCY LOVE』 2008.12.3
9 2.1% to you... 2nd AL『LUCY LOVE-season II-』 2009.8.5
10 2.1% Last Letter 1st AL『LUCY LOVE』 2008.12.3
 


つのはず・まこと。1968年京都府出身。理学部修了→化学会社勤務という理系人生を経て、97年に何を思ったか(笑)音楽関係の広告代理店に転職。以降、様々な音楽作品のヒットに携わり、05年にT2U音楽研究所を設立。現在は、本業で音楽分析やCD企画をする傍ら、日経エンタテインメント!、共同通信などでも愛と情熱に満ちた連載を継続中。Twitterは@t2umusic
 2012年に再始動したTM NETWORKのデビューから15年間のA面曲とカップリング曲をまとめた『ORIGINAL SINGLES 1984-1999』。最新リマスタリング&Blu-Spec CDで昔は聞こえなかった音がジャンジャン聞こえる本作もいいけれど、同時に発売されたオリジナル・カラオケ集『ORIGINAL SINGLE BACK TRACKS 1984-1999』も聴きごたえ十分。彼らは、緻密なサウンドも大きなポイントだったのだと分かるので、音楽好きの方はバイブル的に1セットどうぞ(微笑)。

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