前月の歌詞検索ランキングを掘り下げて分析し、キラっと輝くキラー・チューン(名付けて"キラ☆歌")を発掘しようというこのコーナー。今月は、1年以上前に発売された旧作の中からどのような楽曲が人気なのかを分析してみた。
 これまで1月のランキングでは"紅白歌合戦出演効果"や、紅白+その前後のTV出演効果を見ることで、旧作が再注目される傾向を分析してきた。今年は、さらに"TVに出て伸びた楽曲、そしてTVに出なくても支持され続けている楽曲"を旧作の中から探してみることで、より多くの名曲が見いだせるのではないかと考え、旧作全般を捉えることにした。

第43回:旧作ランキングTOP15 (2013年2月:2013年1月のデータより分析)
テーマ
順位
アクセス
指数%
13年
1月
順位
12年
1月
順位
11年
1月
順位
楽曲名 アーティスト 発売日
1位 100 5 13 - 365日のラブストーリー。 ソナーポケット 2011.10.19
2位 98.8 6 - - ヨイトマケの唄 美輪明宏 1965/7/?
3位 75.3 16 10 - 好きだよ。〜100回の後悔〜 ソナーポケット 2011.1.26
4位 71.3 19 88 - 女々しくて ゴールデンボンバー 2009.10.21
5位 68.1 20 14 - 花束 back number 2011.6.22
6位 62.9 24 - - スターライトパレード SEKAI NO OWARI 2011.11.23
7位 51.4 31 - - 小さな恋のうた MONGOL800 2001.9.16
8位 50.7 32 28 31 ソラニン ASIAN KUNG-FU
GENERATION
2010.3.31
9位 47.7 34 48 - CORE PRIDE UVERworld 2011.5.11
10位 46.8 37 2 - 家族になろうよ 福山雅治 2011.8.31
11位 44.6 41 - - ベイビー・アイラブユー
(English Ver.)
シェネル 2011.7.20
12位 43.3 45 31 - Re:make ONE OK ROCK 2011.7.20
13位 41.1 49 23 15 キセキ GReeeeN 2008.5.28
14位 38.8 52 18 - 君と羊と青 RADWIMPS 2011.3.9
15位 37 54 - - 366日 HY 2008.4.16
次点 35 59 16 - flumpool 2011.9.7
※2011年までにCD発売されたものの中から上位のものをピックアップした。
12年、11年の順位で「-」は総合TOP100圏外(あるいは未発表)。

 そうして出したものがこのランキングだ。表中の赤色が、昨年のTOP100圏外からの上昇曲、薄緑色が2年連続TOP100のロングヒット曲、さらに黄色が3年連続でTOP100入りしたスーパーロングヒット曲ということになる。
 以下、その3区分で見ていこう。まず赤色のトップは、2位の美輪明宏「ヨイトマケの唄」。この1曲の御蔭なのか「今年の紅白はつまらなかった」という人が激減したように思う。心から感動した人が多数、また感動しなくてもそれを理解できない方が愚かだと黙らせてしまうほどの説得力があったのだろう。その歌詞を確認しようとした人が続出し、この結果に。勿論、歌詞検索で総合月間TOP10入りしたのも過去最高齢(77歳)だ。また、日本レコード大賞で優秀アルバム賞を受賞したSEKAI NO OWARIが6位、初のベスト盤リリースタイミングで『ミュージックステーション』に出演したMONGOL800が7位と、こちらも美輪明宏同様に、"珍しい人が珍しい番組に出た"効果がしっかり出ている。

 2年連続ランクインの薄緑色を見ると、ソナーポケットの1位と3位の2曲が、2012年の顔として大活躍したゴールデンボンバーの上を行っているのが興味深い。やはり彼らの人気を大きく支えているのは歌詞ということだろう。今月6日発売の4thアルバムで、更に飛躍できるのか注目したい。
男性3人組と言えば、今年解散が決まっているFUNKY MONKEY BABYSがいるが、紅白常連だった彼らの枠をソナポケが入るのかどうかも興味深い。ただ、ソナポケにはファンモンの「あとひとつ」や「ヒーロー」のようなベタなエールソングがないので、その路線はまた別のアーティストが後釜を狙うのか、今から業界内が虎視眈々としていそうだ(笑)。また、5位back number「花束」も1年半以上このハイレベルを保っているので、そのうち芸人対抗歌合戦あたりでカバーされて、更に大衆的なヒットになりそうな気がする。

 そして、3年連続の黄色には、既に発売から5年目に突入しているGReeeeNの「キセキ」と、アジカンの「ソラニン」が登場。興味深いのは、当時50万枚を超えるCDヒット、約600万DLの着うたヒット、甲子園の入場行進曲にもなり、今でもカラオケで上位人気の「キセキ」よりも、ヒットはしているもののそこまで大衆化していない「ソラニン」の方が歌詞検索では上位ということだ。これも「ソラニン」が歌詞を思わず確かめたくなるほど、知らなかった人を惹きつけるだけの魅力があるという現れだろう。もしかすると、サザンの「希望の轍」やミスチルの「抱きしめたい」のように、当時はメガヒット・シングルじゃなくても、発売から10年以上経った頃には、アーティスト別人気投票でかなりの上位になっているのかもしれない。

 このように、旧作のロングヒットをみると、実際にTV出演で認知が再び広がった曲や、今後のタイアップやTV出演次第では、いつ爆発的に広がってもおかしくないポテンシャルを有した名曲が多数並ぶことが分かった。一つ、気になるのは、上位16曲を見ても、女性歌唱はシェネルの英語曲とHYの仲宗根による「366日」だけで、あとはすべて男性歌唱曲ということだ。女性歌唱は、アイドル達の熾烈な争いのために、楽曲が長く聞かれない状態なのだろうか。目先のイベント参加券で売上を稼ぐだけじゃなく、このランキングに入るような女性シンガーのロングヒットを作ることも音楽業界の大命題と言えそうだ。




365日のラブストーリー。
ソナーポケット


ヨイトマケの唄
美輪明宏


好きだよ。〜100回の後悔〜
ソナーポケット

 2010年3月31日に発売された通算14作目となるシングル。同名漫画を原作とした同名実写映画のテーマ曲として人気を得、彼らのシングルとしては「ループ&ループ」や「リライト」以来6年ぶりとなるCDシングルでロングヒットした楽曲(3ヶ月以上TOP200に滞在)だが、実際に聞くと切ないのになぜか心がジーンとするようなミディアム調で、単にタイアップによる人気という訳ではなさそうだ。歌詞の人気の方は、CD以上に息が長く、なんと2010年8月を除き、発売以来毎月TOP100内に滞在している。映画公開後、徐々に人気を落としたのだが同年9月のDVDソフト発売時で店頭やTVで流れて人気が再燃、その後はアジカンのLIVEの定番として検索数が安定、さらに2012年のベスト盤発売で2010年並みの注目を集めた。ちなみに、本作の作詞は、漫画原作の浅野にいおが担当し、バンドのメンバーが手がけていない。それにも関わらず、ロックファンにも原作ファンにも人気が高いというのは、そういった自作か他作かを意識させないほど両者の相性が抜群だからだろう。今後もっともっと多方面で愛されるべき名曲のひとつ。


※ここではデビュー2年内のアーティストを対象に、毎月注目のアーティストを"歌ネット・ルーキー"として紹介していく。ただし、「ルーキー」として選定するのは1アーティストにつき1度限りとする。
 今月はルーキー部門7位の乃木坂46に注目。言わずと知れた、AKB48の公式ライバルで、2012年2月22日にデビューし、CDでは常に20万枚以上のヒットを放ってきた彼女たち。とはいえ、その売上の2/3以上が限定通販サイトでの個別握手券付きCDによるもので、閉鎖的なヒットだった。しかし、最新作「制服のマネキン」は、彼女たちとしてはかなり激しいダンスと笑顔を見せないパフォーマンス、そして語気の強い歌詞と意外性を突いて一気に歌詞人気が急上昇、またダウンロードでも5週間連続TOP20入りするセミロングヒットとなり、ここへきて楽曲そのものにも注目が集まっている。
CDセールスでは彼女たちの上を行くSKE48やNMB48でも、まだこうした現象はないので、今後こうした楽曲ヒットを重ねていくことで、真のライバルとなれるか大いに注目したい。楽曲別では、「指望遠鏡」が「制服のマネキン」のカップリングにも関わらず3位と健闘しているが、これは人気アニメ『マギ』のテーマ曲かつ、アニメ枠を中心にCMスポットも投下されていることが影響していそうだ。その意味では、楽曲の魅力が抜きん出ている「制服のマネキン」のようなハードタッチのポップスから、今後どう伸ばしていくのかが楽しみだ。
2

順位 占有率 曲名 初収録作品 発売日
1 65.2 制服のマネキン 4th Sg 2012.12.19
2 4.8 走れ!Bicycle 3rd Sg 2012.8.22
3 4.7 指望遠鏡 4th Sg c/w 2012.12.19
4 4.3 おいでシャンプー 2nd Sg 2012.5.2
5 3.8 ぐるぐるカーテン 1st Sg 2012.2.22
6 2 ここじゃないどこか 4th Sg c/w(Type-Bのみ) 2012.12.19
7 2 せっかちなかたつむり 3rd Sg c/w 2012.8.22
8 1.6 やさしさなら間に合ってる 4th Sg c/w(Type-Aのみ) 2012.12.19
9 1.3 春のメロディー 4th Sg c/w(Type-Cのみ) 2012.12.19
10 1.1 涙がまだ悲しみだった頃 3rd Sg c/w(Type-Aのみ) 2012.8.22



つのはず・まこと。1968年京都府出身。理学部修了→化学会社勤務という理系人生を経て、97年に何を思ったか(笑)音楽関係の広告代理店に転職。以降、様々な音楽作品のヒットに携わり、05年にT2U音楽研究所を設立。現在は、本業で音楽分析やCD企画をする傍ら、日経エンタテインメント!、共同通信などでも愛と情熱に満ちた連載を継続中。Twitterは@t2umusic
 実は今回のルーキーは「乃木坂46」と男性シンガーソングライターの「IsamU」が接戦となっていたので、私も予習しておりました。国安わたるや崎谷健次郎など80年代の繊細なニューミュージックの匂いがする繊細な声や楽曲で、私のようなオジサンにはとても好感が持てる音だと思います。アミューズ所属の吉高由里子や福田彩乃が出演するミュージックビデオが話題となっていますが、感傷的な雰囲気だけでもじわじわ心に来る感じ。それにしても、この方、歌っている途中のウィスパーがハンパない!一度気になりだしたら止まらない。そのうち中毒になりそうで怖いです(微笑)。