全体を見てみると、人気曲総合TOP200のうち、10代アーティストの楽曲は、たったの13曲と思った以上に少ない。20歳になったばかりのきゃりーぱみゅぱみゅは総合6位の「ふりそでーしょん」と20位の「キミに100パーセント」(共に20歳の誕生日翌日に発売)にあるのだが、これを入れても合計15作。つまり、かつて90年代後半、SPEED、安室奈美恵、宇多田ヒカル、椎名林檎、浜崎あゆみ、MISIAがいずれも20歳以下にして歌詞からも絶大な人気を得ていた状況とは大きく異なっている。思うに、今はアイドルブームで10代の活躍は多いものの、楽曲の魅力がしっかりと伝わっている10代アーティストはかなり少ないのではないだろうか。前述の20世紀末に若くしてブレイクしたアーティストが当時の記録のみならず今でも記憶にも残る楽曲を多数生み出していることを考えると、この若手"アーティスト"が育っていない現象は大いに検討すべきかもしれない。
ともあれその中で健闘した10代部門1位は、EXILEの弟分として現場でパフォーマンスを磨き上げた7人組の2ndシングル。メンバーの恋愛スキャンダルによりプロモーションが一部制限されたが、それでも上位をキープしているので、次回作ではもっと飛躍しそうだ。激しいダンスチューンなのに、ピッチを崩さず歌い続ける様子に歌詞全体がどうなっているのかと気になって検索した人も多いのではないだろうか。
2位以下を見ると、きゃりーぱみゅぱみゅ(10代作品)、Kylee、山崎あおい、家入レオと女性ソロはそれなりに見られるのに対し、男性ソロは皆無だ。この10代男性アーティスト枠はジャニーズ系で占められているという状況は、90年代からずっと変わらない。(今回のランキングには現れていないが、ジャニーズ楽曲は歌詞検索でも上位になることが多いことを付け加えておく。)その中で、6位の女性シンガーソングライター・山崎あおいは、まだCDではTOP50に入っていないが、歌詞ランキングでは着実に人気を伸ばしているので今後大きく伸びる可能性がある。既に大ブレイクを果たしている家入レオとは対照的に、素朴さが逆に新鮮に映る。
アイドル・グループでは、EXILEの妹分となるE-girlsが2曲、ももいろクローバーがZ以前も含め3曲ランクインしたのに対し、AKB48、SKE48、NMB48はいずれもゼロ、辛うじてスマートフォンCM曲としてダウンロードでもヒットしている乃木坂46「制服のマネキン」のみが上位入りした。秋元康が、セールス面で日本一の作詞家になったと言うが、歌詞としての人気はCDセールスとは大きく乖離しているようだ。AKB48の楽曲人気は決して低くないのだが(むしろアイドルの中では上位)、それでも歌詞やメロディーといった音楽的要素から多くの支持を得る楽曲を増やすことが、AKBバッシングを減らすのに一番の近道ではないだろうか。
以上のように、歌詞が支持される10代アーティストは一昔前に比べ激減していることが分かった。しかし、本当は他分野のように、音楽的才能のある10代もきっと多いことだろう。アイドルブームに胡座をかくことなく、確実に楽曲ヒットを生み出すことが、ここ数年の日本の音楽業界が生き残るための大きな課題かもしれない。