前月の歌詞検索ランキングを掘り下げて、キラっと輝くキラー・チューン(名付けて"キラ☆歌")を発掘しようというこのコーナー。今月は、(『ミュージックステーション』のナレーション、ウォード・セクストン風に読んでみて→)「夏うた、海うた」人気曲として、歌詞中に夏や海の景色が出てくるものを総合ランキングからピックアップして分析した。
 春夏秋冬のうち、最もJ-POPや歌謡曲に投影しやすいのが夏だろう。かつては80年代の松田聖子など、1年にリリースする4枚のシングルのうち初夏と晩夏の2作を「夏うた」にしていたほどで(例:「夏の扉」+「白いパラソル」/「渚のバルコニー」+「小麦色のマーメイド」)、最近のAKB陣営にしても、水着を着た時のミュージックビデオ収録のDVD付きCDがよく売れるということもあって(笑)、毎年のように必ず「夏うた」が入ってくる。では、実際にどんなアーティストの「夏うた/海うた」が、支持されているのだろうか。
第50回:夏うた・海うた人気曲TOP10 (2013年9月:2013年8月のデータより分析)
テーマ
順位
総合
順位
アクセス指数 楽曲名 アーティスト名 発売日 歌詞中の
キーワード
1位 3 100 潮騒のメモリー 天野春子(小泉今日子) 2013.7.31 潮騒
2位 4 90.7 RPG SEKAI NO OWARI 2013.5.1
3位 5 80 憂、燦々 クリープハイプ 2013.5.1 燦々
4位 6 73.9 SUMMER NUDE '13 山下智久 2013.7.31 浜、波
5位 9 63.6 高嶺の花子さん back number 2013.6.26 夏の魔法、焼けた肌
6位 11 57.8 太陽と向日葵 Flower 2013.8.7 夏が終わる・・
7位 12 54.4 ラブホテル クリープハイプ 2013.7.24 夏のせい
8位 16 49.3 ミラクル miwa 2013.4.24 夏の恋
9位 20 39.1 社会の窓 クリープハイプ 2013.3.6 愛憎の海
10位 25 33.6 恋する季節 ナオト・インティライミ 2013.4.17 夏の向こう
次点1 28 31.1 イカロス GReeeeN 2013.4.17 海山川 どこでも
次点2 29 31 花火 三代目J Soul Brothers 2012.8.8 夏花火
※歌詞中に「夏」や「海」およびそれに準ずる季語を含む楽曲を上位からピックアップしてみた。

 1位は、ネットでも人気沸騰中の『あまちゃん』劇中歌である「潮騒のメモリー」。筆者自身は、小泉今日子について、その歌声よりも「Fade Out」など時代ごとの新進気鋭作家の楽曲を上手く取り込める人というイメージが強かったが、覆面歌手として活躍する本作にて、KYON2ならではのアイドル歌唱も魅力的だったんだなぁ〜と再認識した。つまり、松田聖子的な上手さがちゃんと備わっているのに今更気づいたのだ(汗)。無論、これは単なる「夏うた」というよりも、無関係そうでドラマの内容に密接に関係しているというミステリアスな歌詞への注目度も高いのだろうが、それでも全体に「夏」ならではの爽やかさも伝わってくる。

 次に目立つのが、バンド系の「夏うた/海うた」が意外に多いということ。2位のSEKAI NO OWARI、5位のback numberに加え、目下ブレイク中のクリープハイプに至っては3位、7位、9位と3作もランクインしており、今夏のアルバムヒットは、夏を意識した作風が受け入れられたことも大いに影響していそうだ。かつて、GLAYやポルノグラフィティなどJ-POPと親和性の高い一部のバンドには夏うたが多数あったものの、多くのバンドには他のアーティストに比べて衝動的な部分や逆に内省的な部分な部分が多く、夏を前面に出したものは少なかったように思う。(むしろ、夏うたが顕著に多かったのは、眼前で相手のことを思っている歌が多いヒップホップ系や、リズムそのものが夏をイメージするレゲエ系だった。)しかし、ここへ来て、「夏といえばフェス、フェスといえばロック!」というのが定着したのか、このように、バンド系の「夏うた」人気曲が多数出てきたことに繋がっているのかもしれない。

 次々点までの12曲を男女別を見ると、男性ボーカルは9曲に対し、女性ボーカルは3曲と圧倒的に少ない。これは、昨今の女性楽曲はアイドルポップスが優勢となったことで、単に歌詞だけではなく、ルックスやダンスのフォーメーションなどビジュアル面も加味した所で「夏」をイメージすることが多いからではないだろうか。つまり、楽曲だけで「夏」を体現する女性アーティストが減った、あるいは市場全体として目立たなくなったのかもしれない。その意味で、8位のmiwa「ミラクル」は、音だけを聴いてもそのキラキラ感が伝わるし、彼女のキュートな部分を前面に出したルックスも「夏うた」にピッタリだ。今後、女性ソロが逆境の中でサバイブするには、こうした季節感も上手く取り入れることも重要となりそうだ。

 以上のように、直近の人気曲で「夏うた/海うた」を探ってみると、圧倒的に男性優勢となった。ちなみに、4位に山下智久がランクインしているが、ジャニーズ系のドラマ主題歌でここまで上位になるのは嵐以外ではかなり珍しい。これも、色あせない名曲カバー(原曲は真心ブラザーズ)に加え、季節感を上手く取り入れたことが勝因と言えるだろう。やはり、今も昔も「夏」は音楽界にとって大きな味方なのだ。




潮騒のメモリー
天野春子(小泉今日子)


RPG/ SEKAI NO OWARI


憂、燦々/ クリープハイプ


 6月26日にCDで発売されたback numberの8thシングル(オリコン最高位11位、iTunes10位とパッケージもデジタルも強いのが彼らの特徴)。彼らの出世作である「花束」の優男っぷり(または女々しさっぷり(笑))全開の歌詞と、彼らが一皮むけたと注目度がアップした「青い春」のアグレッシブな曲調をエエトコドリしたかのような佳曲。全体のグルーブ感は、プロデューサー蔦谷好位置による所も大きいだろう。曲だけ聴くと、すごく根暗なイメージを持たれるかもしれないが、彼らのLIVEに行ってみたら、観客に向かってずっとタメ語のMCで、その友達感覚が本当に田舎の気のいいアンちゃんという感じ。また会場の煽り方も他のロックバンドよりも随分と激しくて盛り上がる。そういった多面性も彼らの人気の秘訣なんだろう。
 ちなみに、シングルのカップリング「バースデー」と「君がドアを閉めた後」も、表題曲に負けず劣らずの女々しさっぷりを披露。しかし、「人の心は見えないし/見えた所できっと悲しい」とか、「季節は巡るからこんな僕も/そのうち君の知らない僕に」とか、何気ない言葉に人生の本質が垣間見える所も彼らの大きな魅力。自意識過剰ならぬ"無意識"過剰なのか?


ここではデビュー2年内のアーティストを対象に、毎月注目のアーティストを"歌ネット・ルーキー"として紹介していく。ただし、「ルーキー」として選定するのは1アーティストにつき1度限りとする。

 今月は、6位にランクインした9人組ガールズグループFlowerに注目。彼女たちは、EXILE系女性ユニットとして3万人が参加したオーディションから選ばれたというボーカリスト&パフォーマー。ボーカリストを3人と多めにすることで、1人あたりの声量が多少抑えられて、それがこのグループの持ち味として全体のしなやかさにも繋がっているように思える。 11年10月に「Still」で華々しくデビューし、その後3作ほどセールスの横ばいが続いたが、HappinessやDreamとの
合同ユニットE-girlsでのヒット連発から注目を浴び始め、今年4月のE-girlsのアルバムチャート1位獲得後初となる通算5thシングル「太陽と向日葵」で一気に歌詞検索でも伸びて今回のルーキー選出に至った。特に本作は、夏の恋の切なさを前面に出しているが、これは三代目J Soul Brothersの出世作となった「花火」と全く同じ作詞、作曲コンビによるミディアム・バラード。歌ネット的には、作詞家「Masato Odake」(小竹正人)氏の描くユラめく世界観に注目したい。
 また、ドラマや映画で努力家の役が板についている水野絵梨奈、ファッションモデルとしても活躍する美形の藤井萩花、雑誌『Seventeen』の専属モデルで雑誌ならではの一瞬のキメ顔が絶妙な坂東希など、音楽以外でも注目されるメンバーが多いのもこのグループの強み。その意味では、EXILEの後輩分の中でも、今後かなり幅広くファンを開拓しうるユニットとかもしれない。
順位 占有率 曲名 初収録作品
発売日
1 60.4% 太陽と向日葵 5th Sg 2013.8.7
2 11.0% Boyfriend (Moonlight Version) 5th Sg c/w 2013.8.7
3 10.3% Still 1st Sg 2011.10.12
4 3.8% forget-me-not 〜ワスレナグサ〜 3rd Sg 2012.8.22
5 2.9% SAKURAリグレット 2nd Sg 2012.2.29
6 2.6% what i want… 5th Sg c/w 2013.8.7
7 2.1% CALL 3rd Sg c/w 2012.8.22
8 1.8% YOUR GRAVITY 3rd Sg c/w 2012.8.22
9 1.1% 恋人がサンタクロース 4th Sg 2012.11.28
10 1.1% Fadeless Love 1st Sg c/w 2011.10.12


つのはず・まこと。1968年京都府出身。理学部修了→化学会社勤務という理系人生を経て、97年に何を思ったか(笑)音楽関係の広告代理店に転職。以降、様々な音楽作品のヒットに携わり、05年にT2U音楽研究所を設立。現在は、本業で音楽分析やCD企画をする傍ら、日経エンタテインメント!、共同通信などでも愛と情熱に満ちた連載を継続中。Twitterは@t2umusic
今年も、クリス・ハート、May J.、絢香など有名アーティストから、石井聖子、西麻由美などマイナーな歌謡歌手までカバー・アルバムが花ざかり!特に、男性が女性曲を、女性が男性曲をカバーした時に大きく話題になりますよね(ニヤリ)。そんな方に朗報です(笑)!9月11日に男女超越カバーの企画CD『COVER WHITE 男が女を歌うとき 3 -VINTAGE-』『COVER RED 女が男を歌うとき 3 -VINTAGE-』が発売。シリーズ第3弾ですが、第2弾までで既に累計7万枚のヒットに。特にオススメは、広瀬香美「大都会」と、及川光博「唇よ、熱く君を語れ」、樹里からん「あまく危険な香り」、中西圭三「たそがれマイ・ラブ」です。よろしかったらどうぞ♪(でも、本当はデーモン閣下の「Mr.サマータイム」やAcid Black Cherry「あなた」あたりも絶品なので収録したかった〜!コンピ収録曲には色んな事情があるものです。)