前月の歌詞検索ランキングを掘り下げて、キラっと輝くキラー・チューン(名付けて“キラ☆歌”)を発掘しようというこのコーナー。今月は、1年以上前に発売され今なお支持されているロングヒットTOP20を分析してみた。
新年明けましておめでとうございます。今年も、 “アイデア商法の奇抜さ”が指標化されたCDシングルチャートでは見えないヒット曲を歌詞検索状況から掘り下げていこうと思います!
 さて、今回は紅白効果が現れる1月度のデータが出る前に、歌詞の人気を見ることで、 “紅白(出場)効果”に頼らずとも支持されている旧作を調べてみた。(ちなみに、第53回に続き、紅白“非”依存の人気曲分析をしているが、私自身は紅白大好きなので念のため。どこかの評論家先生は“紅白はとっくの昔に死んでいる”なんて言いますが、1年のうちCDやダウンロードなど最もセールス効果のある番組だというのは紛れもない事実です。)
第54回:ロングヒットTOP20  (2014年1月:2013年12月のデータより分析)
テーマ
順位
総合
順位
アクセス指数 楽曲名 アーティスト名 発売日
1位 4 100 ずっと feat. HAN-KUN & TEE SPICY CHOCOLATE 2012.9.5
2位 7 63.9 Love Story 安室奈美恵 2011.12.7
3位 12 45.2 ベイビー・アイラブユー(English Ver.) シェネル 2011.7.20
4位 13 44.6 ビリーヴ シェネル 2012.7.4
5位 16 42.7 タカラモノ〜この声がなくなるまで〜 ナオト・インティライミ 2010.5.19
6位 21 38.7 ヒカリヘ miwa 2012.8.15
7位 23 37.1 好きだよ。〜100回の後悔〜 ソナーポケット 2011.1.26
8位 24 36.6 don't cry anymore miwa 2010.3.3
9位 27 33.9 花束 back number 2011.6.22
10位 28 32.5 チルドレンレコード じん 2012.8.15
11位 34 30.2 雪の音 GReeeeN 2012.12.19
12位 36 30 Always 西野カナ 2012.11.7
13位 38 29.7 花火 三代目J Soul Brothers 2012.8.8
14位 40 29.1 メリクリ BoA 2004.12.1
15位 42 28.7 奏(かなで) スキマスイッチ 2004.3.10
16位 48 27 小さな恋のうた MONGOL800 2001.9.16
17位 52 26 366日 HY 2008.4.16
18位 53 25.8 Follow Me E-girls 2012.10.3
19位 61 24 FANTASTIC BABY BIGBANG 2012.3.28
20位 62 24 ベイビー・アイラブユー TEE 2010.10.27
次点 63 23.9 キセキ GReeeeN 2008.5.28
※2012年以前に発表された楽曲を対象とした。なお、「じん」については、VOCALOID曲ではあるが、
 男性ソロ楽曲として色分けした。

 表を見ると、大きく分けて3タイプあることが分かる。一つは、タイアップ等をキッカケに発売以来、過去最高位を記録する楽曲。テーマ順位1位のSPICY CHOCOLATEは、元々コアなレゲエファンやミックス好きのドライブユーザーには人気だったが、NTTドコモのCMで幅広いリスナーに一気に広がった。楽曲が収録されているCDの発売時期(12年9月)は、歌詞検索では月間TOP200圏外だったので、やはり今なおCM効果の大きさを実感する。

 次に、二つめは、元々ヒットしていたがタイアップや番組出演をキッカケに再浮上しているもの。2位の安室奈美恵「Love Story」は、11年のドラマ主題歌、13年前半の携帯配信向けのCM、そして13年後半に自身が出演する化粧品CMと時期をずらした3つのタイアップで、3回とも配信や歌詞検索でヒットしている。世界進出の為か、およそカラオケでは歌えなさそうな英語中心でリズムが複雑な楽曲を極める一方で、こうしたベタなバラード曲を長く支持させることで国内外の人気を保つ…という戦略が制作サイドにあるとすれば非常に興味深い。

 また、3位と4位のシェネルは12月に発売されたベスト盤に合わせたCMスポットや本人のTV出演が奏功しているようだ。他にも、5位のナオト・インティライミ「タカラモノ」や8位のmiwa「don’t cry anymore」、12位の西野カナ「Always」は、『FNS歌謡祭』で印象的に歌われたことが影響しているようだ。年々、コラボレーションが本格化する同番組によって、明らかにこれまでにはないファン層に訴求できている紛れもない証拠と言える。

 そして、それ以外のタイプは、時期に関係なく毎月のように上位をキープしている楽曲。7位のソナーポケット、9位のback number、11位のGReeeeN、16位のMONGOL800、17位のHYは、いずれもTV中心のアーティストじゃないからこそ、何かのメディアで紹介されるたび、その楽曲の魅力に気づいて検索する人が多いのではないだろうか。なお、楽曲人気が急落傾向にあるK-POP勢の中でもBIGBANG「FANTASTIC BABY」がロングヒットしていることにも注意されたい。彼らと東方神起は、K-POPの中でもアグレッシブな楽曲が目立つが、それがユニークなヒット傾向に繋がっていると言えよう。

 以上のように、旧作ヒットの中にも、「初ヒット」「再ヒット」「継続ヒット」の3パターンがあることが分かった。なお、これら21曲中「ビリーヴ」「タカラモノ」「花束」「ベイビー・アイラブユー」「キセキ」の5曲を収録したコンピレーションCD『大切な人と聴きたい15のラブソング』も地味〜にロングヒット中。手前味噌であるが、他にも息の長いラブソングが多いので、発売時期に関係なく聴いていただけると幸いである。




ずっと feat. HAN-KUN & TEE
SPICY CHOCOLATE


Love Story/ 安室奈美恵

ベイビー・アイラブユー(English Ver.) /シェネル

 SPICY CHOCOLATEは、KATSUYUKI a.k.a. COUNTROLERが率いるレゲエ系の音楽ユニットで94年に活動を開始。本作は、07年以降オリジナルCD+ミックスCDの2枚組のスタイルでリリースされているヒット作品の一つで、12年に発売された『渋谷RAGGA SWEET COLLECTION 2』のリード曲だったもの。今回、歌詞検索での急上昇はじめ、レコチョクとiTunesでの週間ダウンロードでも1位、CDアルバムチャートでも異例の再ヒットとなったのは、NTTドコモネットワークCMにて同曲が使われ、その男女の切ないドラマが共感を呼んだことが大きい。(このSWEET COLLECTIONシリーズは、その名の通り、ちょっとヤンチャな男女の純情を描いたものが大得意!)ちなみに、現在CMで流れているバージョンは、この発売中のオリジナル音源とは異なり、2月12日発売のベスト盤『ずっとスパイシーチョコレート!〜BEST OF渋谷RAGGA SWEET COLLECTION』に初収録の予定(タイトルが秀逸!(笑))。12月18日に配信予定だったが、直前になって発売中止となったこのバージョンがパッケージに収録されることで、どれだけCD売上げが伸びるのかにも注目したい。


ここではデビュー2年内のアーティストを対象に、毎月注目のアーティストを"歌ネット・ルーキー"として紹介していく。ただし、「ルーキー」として選定するのは1アーティストにつき1度限りとする。


 今月は、映画『カノジョは嘘を愛しすぎてる』の劇中歌「明日も」で昨年12月4日にデビューしたMUSH&Co.に注目。たった1曲で、30万回以上のアクセスとなり、ルーキー部門でも堂々の1位となった。MUSH&Co.は、劇中で小枝理子役を演じた大原櫻子のボーカルと、俳優の吉沢亮と森永悠希が演奏役をつとめる男女混成の3人組。大原は、映画のオーディションで、5000人の中からヒロイン役に抜擢されているが、その圧倒的な歌唱力から、間違いなくウタヂカラを優先して選ばれたことがよく分かる。CD『カノジョは嘘を愛しすぎてる〜MUSCI BOX』では、小笠原秋役の佐藤健のギターと共に、「卒業(アコースティックVer.)」も披露しているが、シンプルな演奏でも明るい景色が思い浮かぶほど、周囲をウキウキさせるような歌声だと感心した。更に、TVで披露された同名義の「ちっぽけな愛のうた」では地声と裏声がスイッチする部分も自然で、切ない感情が溢れていることもよくわかる。全曲の作詞・作曲を手がけた亀田誠治に拍手喝采すると共に、一連の『カノ嘘』キャンペーン終了後も、名シンガーとして彼女を育てていってほしいと大いに期待している。
順位 アクセス比率 タイトル アーティスト
発売日
1 100 明日も MUSH&Co. 2013.12.4
(参考1) 16.3 ちっぽけな愛のうた 小枝理子&小笠原秋 2013.12.18
(参考2) 13.1 卒業 CRUDE PLAY(劇中で
小枝理子&小笠原秋も歌唱)
2013.12.18


つのはず・まこと。1968年京都府出身。理学部修了→化学会社勤務という理系人生を経て、97年に何を思ったか(笑)音楽関係の広告代理店に転職。以降、様々な音楽作品のヒットに携わり、05年にT2U音楽研究所を設立。現在は、本業で音楽分析やCD企画をする傍ら、日経エンタテインメント!、共同通信などでも愛と情熱に満ちた連載を継続中。Twitterは@t2umusic
 2013年は、一部のグループ系アーティストの影響で、Twitter等ではごく普通の人でさえ「これは一般流通では売れていない」とか「ミュージックカードが売れているだけで、CDはヒットしていない」とか発言するようになって、ますますヒットチャートの見方が大事になってきたなぁ〜と痛感するばかりです。そんな中でも、ダウンロードや動画サイトの人気と見事にシンクロして“本当のヒット曲”を体現していた歌詞検索「歌ネット」を、私も応援していきたいですね〜。・・ただし、歌詞検索の中でも、そのランキングが「これ、10年以上前のLDカラオケチャートかな??」と思えるようなものもあり、“歌詞検索ランキングならば、どれでも信用できる”と言えず、これまた歯がゆくもありますが。ともあれ、2014年は、複眼的なヒットチャート分析で、ますますヒット曲が生まれるよう頑張ってまいります♪