前月の歌詞検索ランキングから、キラっと輝くキラー・チューン(名付けて“キラ☆歌”)を発掘しようというこのコーナー。今月のテーマは、前月から急浮上した楽曲TOP15だ。
毎年1月のランキングは、紅白歌合戦をはじめとした年末年始の音楽特番効果が現れるのが面白いので、本連載でも過去何回かそれを分析してきた。しかし、実際にはそれだけじゃなく、忘年会や新年会も多数行われフレッシュな気分になれるのか、はたまたボーナスやお年玉で大人も子どもも経済的に潤うのか、新譜リリースに対してよりビビッドに結果が現れるのもこの季節なのだ。また、紅白効果以外での旧譜の再浮上も実際に起こっている。ということで、今回はこれらすべての楽曲に注目してみた。 |
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第67回:2015年1月急浮上曲TOP15(2015年2月:2015年1月のデータより分析) |
※2014年12月のTOP50以下から上昇した楽曲、または当月初登場の楽曲をピックアップした。
「圏外」は前月TOP200圏外。 |
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1位は、サザンオールスターズの「ピースとハイライト」。昨年の紅白出演の大反響のみでは総合5位クラスだったが、その後の政治的な憶測、さらに桑田氏による謝罪報道で話題が続き1月のトップとなった。筆者自身は当日のLIVEを観て、オークションの下りはジョークにしか聞こえなかったし、チョビ髭もサザンLIVE定番のドリフネタだろうと笑っていたのだが、“本人の意図しない方向に解釈”したファンもいたということで、今回の謝罪に至ったのだろう。実際、そのコメント文を読めば、謝罪は紫綬褒章に対してのみであって、一昨年のLIVE演出、楽曲自体に対しては丁寧に理解するように促していた。LIVE演出で他国の過激な様子を「右」「左」問わず流すのは別に今回に限った事じゃない。ゆえに、かなり限定した謝罪だったのに、「謝るなら最初からやるな」と拡大解釈している人がいて驚いた。いずれにしても、2013年の大ヒット曲を引っ張り出しては現在の社会情勢に強引にリンクさせては揚げ足取ろうという人こそ、“都合の良い解釈”をする人たちでは(笑)。本読者の方には、どうか純粋に音楽の魅力を味わっていただきたい。
そして、2位のback numberはJR東日本のタイアップ効果で、シングル曲が過去最大級の勢いで初登場。back number。3位〜5位のSEKAI NO OWARI、6位のE-girls、10位の三代目J Soul Brothersはいずれも1月に大ヒット・アルバムをリリースした結果、それらのリード曲が初登場している。これらの4組は、いずれも旧作も再浮上していることから、新作によって、旧作も気になったという人が増えていることが現れている。CDやダウンロードでもこのような現象は起こっているが、気軽にアクセスして調べられる歌詞サイトゆえ、より顕著に現れているのだろう。back numberの4thシングル「恋」はティーンの甘酸っぱい恋心が描かれ、また6thシングルの「わたがし」はそんな彼が慣れないデートでもっと接近したいと願っており、いずれも青春期の永遠のテーマゆえ今回のヒットで再浮上しているのがよく分かる。また、三代目J Soul Brothersの「LOVE SONG」はまだ大ブレイクする前の3rdシングルで、当時は目立たなかったが、女子がウットリしそうなしっとり系の純愛ソングなので、今後再評価が高まりそうだ。
更に、7位のE-girls「Follow Me」は、今回『金スマ』で特集したことも大きく伸びた要因に。本作は、12年〜13年に大ヒットして既にお馴染みとなっていると思われたが、視聴者がミドル世代の女性中心で、なおかつ音楽以外の番組で取り上げられることによって、まだまだファンは広がるのだなとあらためてその楽曲パワーやスタッフの戦略に感心した。また、8位のAAAは、一昨年の「恋音と雨空」と同様に、もともとヒットしていたものが、紅白歌合戦での歌唱により再注目され更にロングヒットするというパターン。ダンサブルな楽曲でヒットが多い彼らだが、ここへ来てカラオケ人気のミディアムからスローで代表曲を増やしているのが興味深い。
以上のように、1月は紅白効果が現れつつも、それ以外に新作も多数登場し、さらに紅白で歌唱されていない旧作も再浮上していることが分かった。こんな風に楽曲主体でヒット現象が多数語られるようになれば、音楽のチカラがより多くの人に届くことを願う。
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ここではデビュー2年内のアーティストを対象に、毎月注目のアーティストを"歌ネット・ルーキー"として紹介していく。ただし、「ルーキー」として選定するのは1アーティストにつき1度限りとする。 |
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今月は、6位の男性5人組Da-iCEに注目。彼らは、ボーカルの大野雄大(89年、愛知県)、花村想太(90年、兵庫県出身)、パフォーマーの工藤大輝(87年、北海道)、岩岡徹(87年、千葉県)、和田颯(94年、群馬県)からなる5人組で、2011年1月に結成。事務所の先輩である男女混成グループAAAのオープニングアクトなどのイベント出演を重ね、14年1月にシングル「SHOUT IT OUT」でメジャーデビューを果たした。初期3枚のシングルは、インディーズ時代から積み上げたファンの人気と、“顔面偏差値75”“イケメン界の東大生”というアイドル的な話題性で、初登場でオリコンTOP10入りするほどの高初動をはじき出した。 |
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その一方で、2週目以降急落したり、ダウンロードでもさほど伸びなかたったり、その人気はしばらくコアファンだけに留まっていた。今だから言えるが、筆者自身も、「顔面だけで(音楽主体の)CDをアピールされても・・・」とCD資料を聴かずじまいだった。
しかし、1stアルバム『FIGHT BACK』では、その4オクターブに及ぶボーカルやキレのあるダンスなど、スキルの高さが話題となり、CDのみならず配信でもチャートを上昇。実際に聴いてみると、アイドル・ポップスという感じは皆無で、洋楽ボーイズ・グループのような曲想が多く、これまでのシングルとは対照的にアルバムがロングヒットし始めた。
そうして迎えた4thシングル「もう一度だけ」は、ミディアムテンポの失恋ソングで、これまで以上に歌詞の内容が響いたことや、アルバムの好評ぶりも相まって、歌詞サイトでも検索数が一気に上昇。前年末のLIVEでは男性ファンも3割前後に増えていて確実にファンが広がっているので、今後、パフォーマンスが注目される男性グループの中でも、EXILE TRIBEよりもソフトな印象で、K-POPグループよりも(当然だが)国内活動が多く親しみやすいという点で、大いに差異化し更にブレイクしそうだ。
ちなみにDa-iCEの業界向けのプロモーション用紙資料は、毎回ものすごく手がこんでいて、最新作でもオールカラー24Pで、オークションで高値取引されそうな(笑)レベル。一度どこかでPDFファイル等で公開されないかな〜。
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つのはず・まこと。1968年京都府出身。理学部修了→化学会社勤務という理系人生を経て、97年に何を思ったか(笑)音楽関係の広告代理店に転職。以降、それまでのヒットチャートデータと理系的センスを織り交ぜた音楽市場分析が評判となり、05年にT2U音楽研究所を設立し独立。現在は、本業で音楽分析やCD企画をする傍ら、日経エンタテインメント!、共同通信、日経ビジネスオンライン、日経トレンディネットなどでも愛と情熱に満ちた連載を継続中。Twitterは@t2umusic。
2015年2月18日発売の工藤静香のベスト・アルバム『My Treasure Best-中島みゆき×後藤次利コレクション』の企画原案と解説を担当しました。これは、タイトル通り中島みゆき:作詞、後藤次利:作曲の既存の提供曲17曲に新曲「単・純・愛vs本当の嘘」を追加した全18曲入りベスト。収録シングル5作「FU-JI-TSU」「MUGO・ん・・色っぽい」「黄砂に吹かれて」「私について」「慟哭」はすべてオリコン1位を獲得するほどの抜群の相性の良さが分かります。ちなみに、解説はご本人に褒められました〜。なんたって、私、中島みゆき×工藤静香の両方のファンですから(笑) 10年前に提案していた企画が、忘れていた頃にご連絡いただき感激しています。よかったらチェックしてみて下さい♪ |
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