第72回:最新曲限定人気曲TOP15
最新曲に注目すれば、何が見える?
前月の歌詞検索ランキングから、キラっと輝くキラー・チューン(名付けて"キラ☆歌")を発掘しようというこのコーナー。今月は、最新曲限定で人気の傾向を分析してみた。前月は、映画『カノジョは嘘を愛しすぎてる』が地上波で初オンエアされ、同映画内で披露された「ちっぽけな愛のうた」、「明日も」、「サヨナラの準備は、もうできていた」がこぞって再注目され、歌詞検索ランキングでも約1年半ぶりに大きく再浮上した。また、SEKAI NO OWARI「RPG」のように、発売から何年も歌詞ランキングで上位入りしている楽曲も少なくない。 勿論、これは歌詞サイトの特性でもあるのだが、それではこうしたロングヒットを除いた最新曲だけだと、一体どんな特長が見られるのか、あらためて検証しようと思った。
第72回バンド別人気曲TOP15(2015年7月:2015年6月データより分析)
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※2015年6月30日時点で、各アーティストが発表している最新シングル曲、
または最新アルバムのリード曲で最も人気の楽曲をリストアップした。
または最新アルバムのリード曲で最も人気の楽曲をリストアップした。
男性ボーカルバンド、女性ソロが歌詞の支持からヒット!
UNISONやゲス乙女、[Alexandros]のヒットにも着実に寄与
1位は西野カナ、2位はback numberと、歌詞サイト上位常連の最新シングルが他を大きく引き離す結果となった。この2組は、西野なら「好き」「Darling」、back numberなら「花束」「高嶺の花子さん」「わたがし」と旧作ロングヒットもありつつ、最新曲も支持されているという最強の状態にある。実際に、最新シングルが気に入って、以前の作品を歌詞サイトから復習するという人も多いのだろう。UNISONやゲス乙女、[Alexandros]のヒットにも着実に寄与
そして、3位はMACOの1stシングルがランクインし、昨年のテイラー・スウィフトのカバーである「私たちは絶対に絶対にヨリを戻したりしない〜We Are Never Ever Getting Back Together(Japanese Ver.)」に次ぐヒットとなっている。もともとYouTubeから人気を得てきた彼女だが、最近ではTV番組『水曜歌謡祭』でのコーラス隊としても活躍しているので、歌声や本人キャラの魅力がより多くの人に浸透することを期待する。他にも、女性ソロは、7位の西内まりや、8位のCrystal Kay、さらに9位のSuperflyと今旬の注目作がしっかり挙がっている。
これに対抗するように、人気上昇中の男性ボーカルバンドもこぞってランクイン。まず、5位のUNISON SQUARE GARDENはiTunesで発売から1か月以上TOP3級をキープしているし、10位の[Alexsandros]はメジャーデビュー後初めて『ミュージックステーション』や『スッキリ!』にも出演し、大きくファン層を広げた結果、歌詞サイトでも初めて上位入り。さらに、男女混成4人組のゲスの極み乙女。も、「私以外私じゃないの」に続く「ロマンスがありあまる」もシングルが2作連続でヒットしている。
このように、最新曲に限定してみると、女性ソロや男性ボーカルのバンドが、歌詞の魅力から着実にヒット実績を作っていることが分かる。女性アイドルグループは歌詞だけではなく、その活動自体に共感を得るシステムが出来上がっているので、ここに出なくても、大きな問題はないが、男性ソロはナオト・インティライミ以外見られずやや寂しい。ちなみに、16位以下を見ると、米津玄師、福山雅治、ハジ→、高橋優、秦基博、浜田省吾、そして星野源などもいるので、今月はたまたま弱かったとも言えなくもないが、やはり男性ソロは、そのメッセージ性が肝となるので、もっともっと歌詞サイトから注目されて欲しいと願わずにいられない。
第8位:Crystal Kay「君がいたから」
本作のタイアップドラマ『ワイルド・ヒーローズ』はTAKAHIROほかEXILE TRIBEやEXILE劇団のメンバーが勢揃いするドラマで、またミュージック・ビデオにはEXILEメンバー最年少の佐藤大樹が主演するという内容と、昨年末LDHに事務所移籍した効果を存分に発揮したこともヒットの要因だろう。さらにその前年、EXILEのUSAやNESMITH 、TETSUYAらのユニット、DANCE EARTH PARTYに参加した事も大きなキッカケと言える。
2011年からは海外での活動を視野にユニバーサルミュージックに移籍し、より洋楽志向のR&Bを進めてきた彼女(実際2012年のアルバム『VIVID』はUtadaや安室奈美恵並みにカッコいい!)だが、今後、その進化形となる洋楽路線か、本作のようなベタなJ-POPか、はたまたEXILEやE-girlsのようにダンスポップス路線になるのか、本格的なブレイクまでの道のりを期待したい。
ここではデビュー2年内のアーティストを対象に、毎月注目のアーティストを"歌ネット・ルーキー"として紹介していく。ただし、「ルーキー」として選定するのは1アーティストにつき1度限りとする。
ルーキー部門第7位:西内まりや
その後、女優としてドラマや映画に出演、またバラエティー番組『ピカルの定理』ではレギュラー陣として、お笑い芸人たちとコントもこなすなどTVでの人気者に成長。
その流れから2014年8月、シングル「LOVE EVOLUTION」でデビューしたのだが、"人気モデルがとりあえずCDも出しちゃいました"的な軽いノリではなく、いきなりビートの強いポップロックに乗ってパワフルな歌唱を披露しド肝を抜いた。続く、2ndシングル「7 WONDERS」はさらにシリアスなハードポップ路線に挑戦。まぁ、この辺りまでの海外作家ナンバーをJ−POPに変換するというのは、所属事務所、ヴィジョン・ファクトリーのお家芸でもあるので、予想を上回る完成度とはいえ、まだ考えられる範ちゅうかもしれない。
しかし、最新作「ありがとうForever...」では、作詞・作曲・ピアノ弾き語りを披露。同事務所の俳優陣が主演するドラマ『恋愛時代』の主題歌に抜擢された事もあって、伸びやかで素直な歌声のバラードがクライマックスにしっかりハマり、ダウンロードや歌詞サイトでも初の上位入りとなった。
このように、モデル、女優、タレント、司会、歌手、シンガーソングライターと、あまりにマルチな才能ぶりを発揮する彼女。デビュー4か月で日本レコード大賞新人賞を獲得した際は、事務所&レコード会社の政治力(?)かと穿って見ていた人もいるかもしれないが、今回、実際にスマッシュヒットとなったように、今後もこれを超えるマジックを次々と実現しそうだ。
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つのはず誠の「キラ☆歌発掘隊」
プロフィール:つのはず誠
つのはず・まこと。1968年京都府出身。理学部修了→化学会社勤務という理系人生を経て、97年に何を思ったか(笑)音楽関係の広告代理店に転職。以降、それまでのヒットチャートデータと理系的センスを織り交ぜた音楽市場分析が評判となり、05年にT2U音楽研究所を設立し独立。現在は、本業で音楽分析やCD企画をする傍ら、日経エンタテインメント!、共同通信、日経トレンディネット、月刊タレントパワーランキングなどでも愛と情熱に満ちた連載を継続中。Twitterは@t2umusic。清竜人と6人の妻という一夫多妻制(!)ユニット"清竜人25"。毎回、奇天烈な作品を発表しているが、3rdシングル「Mr.PLAY BOY…」は、最高潮にスケベ(笑)なファンキー・チューン。あまりに早口で大量の仕掛けがあるので、是非歌詞サイトをチェックしながらその深遠な魅力にどっぷりとハマってください。9月発売予定の1stアルバムも超楽しみ♪