第79回:2016年1月上昇曲TOP15
"紅白効果"以外にも1月の人気曲はある?
前月の歌詞検索ランキングから、キラっと輝くキラー・チューン(名付けて"キラ☆歌")を発掘しようというこのコーナー。今回は1月に歌詞検索数がTOP100圏外から急増した人気曲に注目してみた。なお、ここでは前月には登録されていなかった初登場曲も含む。毎年1月はNHK紅白歌合戦をはじめとする年末年始の特番効果による上昇曲が目立つ。しかし、実際にはそれ以外にも注目すべき楽曲があるのではないか、もしあればそこからヒットの芽を探れないのかというのが今回の分析のキッカケである。相変わらず、観点はヒネクレているが、だからこそ見えることもあるのだと信じたい(笑)。
第79回 2016年1月上昇曲TOP15(2016年02月:2016年01月データより分析)
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※前月の歌詞ランキングで総合TOP100圏外だったものを対象とする。「☆」は前月200位圏外。
ゲスの極み乙女。にAIの三太郎CM曲、手嶌葵の月9主題歌に
Mrs.GREEN APPLE・・・バンドと女性ソロを中心に多くの注目作あり!
1位と4位にはゲスの極み乙女。がランクイン。1位は、1月13日発売の2ndアルバム『両成敗』のリード曲として音楽番組やラジオ局、音楽チャンネル等で大量に流れていた。ノンシングルならが総合でも5位と大健闘だ。3位の方はTVでもあまり歌われていなかった昨年発売の3rdシングルだが、「私以外私じゃないの」などの人気に紐づいてこちらも気になったファンが多いということだろう。その意味で、アーティスト自身に興味を持った人も多いということが分かる。Mrs.GREEN APPLE・・・バンドと女性ソロを中心に多くの注目作あり!
他にも、昨年メジャーデビューし1月に初のフルアルバムをリリースした5人組のMrs. GREEN APPLEが4位と9位、メジャーデビュー15年にして紅白歌合戦に初出場したBUMP OF CHICKENが7位、そしてiPhoneのCMで「Wherever you are」が起用されて以来、これまでの全アルバムのセールスが再浮上するなどさらなる高評価が進むONE OK ROCKが11位とバンド人気が目立つ。いつもの歌ネットランキングはback number一色に見えるが、彼らはアルバム『シャンデリア』が発売された前月が大きなピークだったので今月は一段落し、その代わりに他のバンドの上昇が目立ったという訳だ。
女性ソロの上昇曲も目を引く。2位は、AIのau"三太郎"シリーズCM曲。ちなみに、浦島太郎「海の声」も本作も作詞は、同CMのプランナーである篠原誠。5位は、紅白歌合戦でのパフォーマンスが話題となった椎名林檎。彼女にしては珍しく明解で、夏の盛りをテーマにした歌詞やノリの良さが共感を呼び、かつてのファンも呼び起こせたのではないだろうか。そして、6位の手嶌葵は1月クールのフジテレビ月曜夜9時枠のドラマ『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』の主題歌となっている儚い歌声のバラード。今旬の若い俳優が多数出ているので、さぞユルフワな青春ラブコメ系かと思いきや、敵キャラが強すぎたり、主人公の2人が極貧だったり、なかなかにシリアスな展開。だからこそ、この主題歌もいっそう心に沁みるのだろう。年配の方には『ふぞろいの林檎たち』の現代版だと思えば、楽しめるはず。
他には、SMAPの楽曲のうち、12位に「夜空ノムコウ」がトップでランクイン。ネット上では「世界に一つだけの花」の購買運動が起こっているが、歌詞の魅力という意味ではこの「夜空〜」が最大になるというのも興味深い。作詞のスガシカオが同月に久しぶりのニューアルバム『THE LAST』をリリースしたことも影響しているのかもしれない。 実は、紅白効果が顕著だった西野カナ「トリセツ」や星野源「SUN」も1月に上昇しているのだが、歌ネットでは常に上位で、"TOP100圏外からの上昇曲"となると対象外となってしまう。しかし、だからこそ、それ以外のバンドや女性ソロの注目作を見つけることが出来た。こんな風に、今後も埋もれがちなヒット曲にスポットを当てていく予定です♪
第2位:AI「みんながみんな英雄」
第一に、19世紀のフォークソングに日本語をつけてカバーしても、人々にメッセージが届くということ。カバー曲といえば1970年代〜1990年代の名曲から選ぶとヒット確度が高いように思われていたが、より幅広く選択してもヒットが生まれるということだ。
第二に、昨年末にベスト盤『THE BEST』を発表したAIが、また新たなる代表曲を持ちうるということ。彼女といえば、「Story」と「ハピネス」の2曲ばかりが注目されるが、繊細さを含め実は多彩に歌えるボーカリストなのだ。本作のヒットを機に、まずは本作とベスト盤を取っ掛かりとして、彼女の力量がさらに浸透すれば嬉しい。
そして、第三に、"三太郎"シリーズのCMから、浦島太郎「海の声」に続き、2つ目のヒットが出たということ。かつてKDDIのCMでは"LISMO"ブランドを軸に、数多くのヒット曲(絢香「三日月」、YUI「CHE.R.RY」など)を生み出してきたのだが、その後コミカル路線に転換し、音楽の匂いが無くなっていたのがやや残念だった。しかし、こうしてCM好感度がトップレベルになった今、再びヒット曲の源泉として復活したのが、とても嬉しい。今後も、良い意味で調子に乗って第3弾、第4弾のヒットを大いに期待したい。
ここではデビュー2年内のアーティストを対象に、毎月注目のアーティストを"歌ネット・ルーキー"として紹介していく。ただし、「ルーキー」として選定するのは1アーティストにつき1度限りとする。
ルーキー部門第4位:Mrs. GREEN APPLE
今回、歌詞検索が急増したのは15年12月発売の1stシングル「Speaking」と翌月のフルアルバム『TWELVE』が大きな評判を得たことが要因。勿論、先行シングル「Speaking」が人気アニメ『遊☆戯☆王ARC-V』のエンディング曲となったこともキッカケの一つだが、こちらは夕方枠のアニメゆえ、この1曲でアルバム購入が進むほど、今の世の中は甘くなくて(笑)、やはり、それまで発表したCDやLIVEでの実績が認められてきたからだろう。
実際に聴いてみると、どの曲もメロディーが緻密ながら非常にポップ。「Speaking」ではアッパーながら楽しげな雰囲気もあってLIVEで皆が踊りだしそうだし、アルバム3曲目の「パブリック」もBメロで一旦内省的になりつつ、サビで一気に高揚するという曲想が見事。他にも、6曲目のバラード「私」もじっくり聞かせる。
また歌声も、女子受けの良さそうな甘い声にも疾走感が似合うハイトーンにも、勢いを感じさせる。つまり、ポルノグラフィティのファンからONE OK ROCKファンまで取り込みそうなメジャー感があるのだ。
そして、何より、大半を日本語で書いた歌詞が魅力的なのも、本サイトで支持が急増した理由だろう。リズムに乗って楽しく聴いてもいいし、その後に歌詞カードをじっくり読みながらでも楽しめる。どの曲もかなり行数が多いのに、行間を感じさせるし、一人称が「僕」「ワタシ」「ワタクシ」と曲ごとに変わるのも、様々な視点から世の中を見ているのだなとその器の大きさを感じさせる。
これだけ多才だから、音楽マニアとして長年くすぶっていたのかもと思い、大森のプロフィールを見たら1996年9月生まれとあってあまりの若さに驚き!夢は紅白歌合戦出場とのことだが、今後同レベルで幅広く支持されるのも時間の問題だろう。
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臼井孝の「キラ☆歌発掘隊」
プロフィール:臼井孝
うすい・たかし。1968年京都府出身。理学部修了→化学会社勤務という理系人生を経て、97年に何を思ったか(笑)音楽関係の広告代理店に転職。以降、それまでのヒットチャートデータと理系的センスを織り交ぜた音楽市場分析を持ち味として、05年にT2U音楽研究所を設立し独立。現在は、本業で音楽分析やCD企画をする傍ら、日経エンタテインメント!、共同通信、日経トレンディネット、月刊タレントパワーランキングなどでも愛と情熱に満ちた連載を継続中。Twitterは@t2umusic。2015年より、会社員時代から15年使っていたペンネーム「つのはず誠」を本名に戻して、分析事業を一本化した。 14年5月からダウンロードサイトLISMO Storeの「イチオシ」曲を選定しており、特集の一部、"特選"と名のついたものを監修中。1月から2月は「特選!真冬の想い出ベストテン」として『ザ・ベストテン』にランクインした楽曲のエピソードをあれこれ書いてみたら、結構なダウンロード数になっています。よかったらご参考ください♪