第80回/最終回: ロングラン・アーティスト人気曲TOP20
09年の連載当初から活躍するアーティストの人気曲は?
前月の歌詞検索ランキングから、キラっと輝くキラー・チューン(名付けて"キラ☆歌")を発掘しようというこのコーナー。今回は、長年活躍するアーティストの人気曲を分析してみた。突然ですが、サイトのリニューアルに伴い、今回が最終回となります!ただ、毎回、他の連載ではありえないほど(笑)変わった切り口でヒット分析をし尽くしたので、丁度良い時期かな〜と思っております。
今回は、連載の始まった2009年8月以前から活動するアーティスト限定で、その人気曲を調べてみました。
第80回/最終回:ロングラン・アーティスト人気曲TOP20(2016年03月:2016年02月データより分析)
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※09年7月以前にデビューし、なおかつ現役のアーティストを対象に、人気曲を抽出。
男性バンドや男性ユニットが優勢の中で、西野カナが健闘
BUMP OF CHICKENも常に新作が注目されるベテランに
全体を見ると、上位20曲中5曲が女性、2曲が男女混成、残り13曲が男性と、圧倒的に男性アーティストに偏っている。女性アーティストのベテランが少ないのは、歌詞だけに限られることではなく、例えば各女性アーティストのセールスのピークが1stアルバムに集中することともリンクしている。やはり、女性ならではの華やかさやニュー・デイーバとしての話題性も相まって登場時のインパクトが絶大となるからだろう。BUMP OF CHICKENも常に新作が注目されるベテランに
その中で、西野カナが1位の「トリセツ」、11位の「No.1」、20位の「もしも運命の人がいるのなら」と3曲もランクインしているのが見事。09年にブレイク、10年の「会いたくて 会いたくて」でセールスのピークを迎え、その後は安定してヒットを飛ばしていたが、14年の「Darling」以降、突如、コミカルな歌詞やカントリーか?はたまたミュージカルか?と思わせるほどJ-POP枠に囚われない曲調にシフトし、更にロングヒット化。CDセールスでは分かりづらいが、こうして歌詞サイトではその量産ぶりが顕著だ。他にも、4位のAIはauのCMソング、6位の手嶌葵はフジテレビ月9主題歌『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』の両タイアップ効果だが、二人ともその後の若手アーティストに紛れることのない個性を放っていることが再ヒットの要因だろう。
男性の方を見ると、コブクロやスキマスイッチのような2人組、BIGBANGやEXILE、GReeeeNといったボーカル&パフォーマンス・グループ(GReeeeNは一切メディア露出しないものの、イラストを巧みに用いたプロモーションは一種のパフォーマンスと言えるだろう)、さらに歌詞サイト上位常連のONE OK ROCKや再結成が決まっているTHE YELLOW MONKEYなどのバンドと、様々な活動形態のロングラン・アーティストが見られる。男性ソロがいないのは、市場全体の厳しさや、シンガーソングライターが中心ゆえデビューやブレイク年齢自体が高めで、長く活動すると歌詞サイトで人気の10代や20代から遠ざかる傾向が強いからだろうか。
また、スキマスイッチの「奏(かなで)」やEXILE「道」など懐かしい楽曲がずっと上位入りする例もいれば、GReeeeNやAAAのように新作が出る度に、「遥か」や「恋音や雨空」といった少し前のヒット作が再浮上して新旧上位入りするという例も見られる。 その中でも、BUMP OF CHICKENは新作が出る度に、その新曲自体がランクイン。今回は、2月に発売されたオリジナルアルバム『Butterflies』からリード曲のアッパーチューン「Butterfly」といかにも彼ららしい穏やかなギターロックの「GO」がTOP20入りしており、既にメジャーデビュー15年を迎えベテランの域に達しつつも、エバーグリーンな作風が常に若者を取り込んでいるということだろうか。(なお、個人的には、本アルバムの隠しトラック「TO.I.KI」のような、あえて荒削りなギャグまじりの楽曲も、永遠の少年性を醸し出すポイントだと思っている。)
このように、長く活動できるアーティストは、いずれも「ヒット曲」があるということが大きい。昨今は、バンドにせよアイドルにせよ、LIVEでのパフォーマンスが重視されて、どのような人気曲があるのかメディアにて伝わりづらくなっているが、やはりより多くのアーティストが長く活動するには「ヒット曲」の存在、そしてそれを伝えうるメディアの存在が重要だとあらためて実感した。今後、クチコミにも伝播しやすい歌詞サイトが、その役割を担ってくれることを期待したい。
ということで、今回の第80回をもって、このヒット分析の連載も終了となりました。歌詞という側面から、そのヒット曲を"コトバ"ではなく、その"検索数"から分析するという(汗)、しかも毎回テーマを決めて深堀りするという(大汗)、何とも変わり種の連載を6年半も続けさせていただいたこと、読者や歌ネットスタッフの皆さんに感謝することしきりです!
この6年半の間で、CDシングルの買われ方が楽曲ありきではなく、その特典が重要となったり、また音楽配信もダウンロード中心からサブスクリプションの人気も増えたり(とはいえ、スマートフォン向けのダウンロード販売はまだ伸びているのでご注意を)、その一方でアナログレコードやカセットの生産が再び増え始めたりと、音楽市場も大きく変化しています。
また、こういったメディアの文章も、なるべくコンパクトにして、その分、映像や画像をふんだんに使うものが中心となってきて、これもパソコンからスマホ中心での情報収集による所が大きいでしょう。それでもなお、時には、いつもと異なる観点で好きなものを楽しんでみるとか、いつもより詳細な文章を読んで、見出しや写真だけでは分からなかった事実を発見するとか、そういった事のキッカケに、こんな連載が少しでも役立っていたとしたら、それはとても嬉しいです。
私は、引き続き、ヒットチャートを分析したり、配信サイトや企画CDを選曲したり、メディアで解説や執筆をしたりと、相変わらず「人」と「音楽」を繋げるお手伝いをしていきますが(それしか出来ず(苦笑))、今後も愛と情熱をもって取り組んでいければと思います。長い間お読みいただき本当に有難うございました!!
この6年半の間で、CDシングルの買われ方が楽曲ありきではなく、その特典が重要となったり、また音楽配信もダウンロード中心からサブスクリプションの人気も増えたり(とはいえ、スマートフォン向けのダウンロード販売はまだ伸びているのでご注意を)、その一方でアナログレコードやカセットの生産が再び増え始めたりと、音楽市場も大きく変化しています。
また、こういったメディアの文章も、なるべくコンパクトにして、その分、映像や画像をふんだんに使うものが中心となってきて、これもパソコンからスマホ中心での情報収集による所が大きいでしょう。それでもなお、時には、いつもと異なる観点で好きなものを楽しんでみるとか、いつもより詳細な文章を読んで、見出しや写真だけでは分からなかった事実を発見するとか、そういった事のキッカケに、こんな連載が少しでも役立っていたとしたら、それはとても嬉しいです。
私は、引き続き、ヒットチャートを分析したり、配信サイトや企画CDを選曲したり、メディアで解説や執筆をしたりと、相変わらず「人」と「音楽」を繋げるお手伝いをしていきますが(それしか出来ず(苦笑))、今後も愛と情熱をもって取り組んでいければと思います。長い間お読みいただき本当に有難うございました!!
臼井孝の「キラ☆歌発掘隊」
プロフィール:臼井孝
うすい・たかし。1968年京都府出身。京都大学大学院理学研究科修了→三菱化学勤務という理系人生を経て、97年に何を思ったか(笑)音楽関係の広告代理店に転職。以降、それまでのヒットチャートデータと理系的センスを織り交ぜた音楽市場分析を持ち味として、05年にT2U音楽研究所を設立し独立。現在は、本業の音楽市場分析や音楽配信サイトおよびCDの選曲・企画をする傍ら、日経エンタテインメント!、共同通信、日経トレンディネット、月刊タレントパワーランキングなどでも愛と情熱に満ちた連載を継続中。Twitterは@t2umusic。2016年2月に、日経トレンディネットにて執筆した「桑田佳祐のスゴさが分かる5つのヒット分析」という記事が人気となっています。勿論、サザン/桑田人気のスゴさゆえですが(笑)良かったらお読み下さい。今後も、色々なところで、チョロチョロ(笑)と出ていく予定なので、どうぞ構ってやって下さい♪