Q)作詞・作曲は、いつ始められたのですか?
前座で回っているころですね。だって、楽屋でやることがないじゃないですか。当時はフォーク全盛でしたから、高田渡さん、岡林信康さん、三上寛さん、遠藤賢司さんとか聴いていて、そういう影響もありましたね。渋谷のジャンジャンとかにライブもよく見に行きましたよ。かっこよかったねぇ。「俺はぜったい!プレスリー」が初めて作詞作曲して出した歌ですが、カップリングの「青春荘」って歌なんかは、やっぱり「神田川」の影響を受けていますね。(2曲ともペンネームの「作詞:やまだあつし、作曲:山鉄平」名義)
Q)曲はどういう風に作られるのですか?
まず、詞を書きます。とにかく歌詞は一気に書きます。早いものだと5分くらいで1コーラスできちゃいますね。出来なくても、最低でもワンコーラス書けない限り、絶対に途中ではやめません。詞を書いてる段階でメロディも浮かんでますから、忘れないうちに、すぐ、その場で作っちゃわないといけないんです。とりあえず、ワンコーラスができれば、あとは展開のストーリーを考えるだけですから。
詞が出来たら、曲のイメージを決めるための楽器選びですね。ギターの時もありますけど、今は、キーボードで色んな音色が出るじゃないですか。オカリナとか琴とかパンフルートとか三味線とか和太鼓とかって。だから、詞に合う楽器を探しながらイメージをふくらませますね。そこで決めた楽器の音で、アレンジのイメージを組み立てて、サウンドと一緒にメロディを作ります。その後は、打ち込みで、ある程度、アレンジもしてカラオケまで作ってしまいますね。
とにかく、やり始めたら最後までやらないと気が済まないので、一気に作ってしまいます。だから、自宅のスタジオから出たら朝ってことはしょっちゅうですよ。スタジオの中には時計は置いてないですし、「今日はここでいい」ってのはないですね。
でも、他の人に書く曲ではなくて、自分の曲の場合は、作ろうと思って作ることはあまりないですね。楽屋でギター弾きながら自然にできたりとかが多いです。湧いてこない時は、もう何か月もやらなかったりしますし。どっちにしても、出来るときには、一気に出来ちゃいますね
Q)歌詞が良く書けるような場所はありますか?
たとえば、旅先だと、ホテルじゃ書けないんですよ。旅館で畳じゃないと。コタツなんかがあるといいねぇ。そういう温泉宿に行くと、急に書きたくなっちゃうね。昔は、よく自宅でも書いたけど、今では、あんまり書かないですね。家だと、孫とリビングのストーブの前にずっといるからね(笑)。
Q)ご自身の曲の中で、とくに歌詞が良くできているという曲を教えてください。
「海峡」「情炎」「故郷(ふるさと)」ですね。僕自身が、一番よくわかる歌詞は「津軽平野」だね。
Q)歌詞を書く時に、大事にしていること、気をつけていることはありますか?
たとえば、女の人のことを歌うにしても、不幸なことを書いたりしても、必ずフォローをするようにしていますね。やっぱり、救いとか夢がないとね。もちろん、選択肢としては「救わない」ってのもあるし、それも詞として面白いかなと思うんだけど、どうしてもフォローしてしまうんですよ。悲しい歌を人に歌わせるのは簡単なんだけど、自分が歌うとなると歌えないから、だから、人に書くときでも、常に自分が歌うかもしれないってイメージをしながら書いています。言葉もね、昔は、よく落っこちてたけど、今は、あんまり落っこちていないんですよ。最近は、言葉がなかなか見つからないね。
あと、最近、言葉が見つからない原因のひとつは、あんんまり旅してないからだね。10年くらい前までは、よく一人旅してたんです。泊まる宿だけ決めておいて、あっちこっち回ってました。在来線やバスに乗ったりしてね。「あれ!おたく吉幾三?なんでココに?」ってよく驚かれましたけどね。「どちらまで行かれるんですか?」なんて聞いたりして、そういう出会いもあるじゃない。「おかーさん、荷物重そうだけど、手伝ってやろうか?」なんてね。そういう時に、電車の窓から風景を見ながら、「どうしてるかな…」って自分の母親を思い出して、「かあさん」の歌になっちゃうんだよね。「しあわせでしたか 母さん…」てね、ああいう詞も出てくるし。旅すると、何か得るものがあるのよ。
Q)母親や家族、友人をテーマにした曲をステージで歌われている時、毎回、感極まって涙ぐまれていますが、歌えなくなったりはしませんか?
歌ってる時に、お客さんが泣いてるのが目に入っちゃうとダメなんですよ。やっぱり、自分で書いてる歌詞で、自分の中にあることだから、その歌詞の中の風景やイメージ、思い出が、歌いながら感情として出てきて当然だし、それを我慢して歌う人もいるけど、ウルウルしながら歌ったっていいんじゃないかと思うんだよね。自然なことなんだから。男はさ、泣く時は泣けばいいじゃないかって思うんですよ。泣くってことは誰にもあることなんだしね。もし、泣いて歌えなくなったとしても、歌としては、みんなに伝わると思うんですよ。
Q)今後は、どういう音楽を作っていきたいですか?
僕がやりたい音楽は、歌謡曲とかなんですけど、本当はコミックソングもやりたいんですよ。でも、まわりの事務所スタッフもレコード会社も、あんまりいい顔しないんだよね(笑)。今の世の中を歌った面白い歌いっぱい作れるんですけど、「それはまた次の機会にしましょう…」って言われちゃうんだよね(笑)。まあ、「北見熊の助」とかはやってますけど。
実際、CDには入れてませんけど、「うちのかみさん」とか「雪國レゲエバージョン」とか、いろんな面白いデモテープを作ってあるんですよ。いつまでも、過去をひっぱりたくないんだよね。「吉さん!どうしたの!」って言われるくらい裏切りたいというか、イメージをひっくり返したいというか。だから、半年間くらい休んで、髪の毛のばして、レゲエみたいに編んでもらおうかなと思って。それで、全員黒人のバンドを組んで、日本手ぬぐいを首にかけて、レゲエとかやりたいね〜。「このオヤジ、すごいパワーあるな!」って思われたいですね。
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