Q)初めて作られた曲が「夜空の星」で14歳の頃だったそうですが、どういう風にできたのですか?
それがね、べつに、作曲をするなんて意識は全くなくてね。なんかピアノを弾いているうちに自然とできちゃったんだよね。バイエルとかソナチネみたいな感じで、「ドソミソ、ドソミソ」って、でたらめに弾いてたら、あのメロディが出てきたんだよ。
当時、バッハのチェンバロに興味を持っててね。でも、チェンバロなんて、そうそうお目にかかれるもんじゃないじゃん。だから、なんとかそういう音を出したいと思って、ウチにあった中古のピアノのフックのところにブリキ板を取り付けたら、完全にチェンバロになったね(笑)。そういう、チェンバロのイメージで出来た曲なんだよね。
Q)最初は、ずいぶん雰囲気が違ったんですね。
最初は、あんなエレキの早いテンポの曲になるとは思ってもいなくてね。メロディをピアノで弾いたものを寺内タケシに渡したら、あんなアレンジになって帰ってきたんだよ。
Q)ギターの方は、いつ頃から弾き始められたのですか?
高校1年生の頃、友達が質流れの古いレキントギターを持ってて、スキー場に持って来てたんだよ。もうネックは反っちゃってて、ハイコードなんかとても押さえられなくて、ギターってのは相当握力がある人が弾くもんなんだなぁって思ってたよ(笑)。それでも、ハンク・スノウの「I Don't Hurt Anymore」をローコードで弾けるように教えてもらって、それが最初だね。
Q)その頃は、やはりカントリーをよく聴いていらっしゃったのですか?
そうだね、ギターではカントリーしか弾いてなかったね。そのあと、エルビスが出てきて、すぐに、エルビスの歌を買っちゃ聴いてたね。あと、おふくろがジャズが好きだったから、「セントルイス・ブルース」だとか、そういうジャズも聴いていたね。親父はクラシックだったし、そういう風に音楽的な環境には恵まれていたのは、オレの世代では珍しいことだったからね。だから、今のオレがあるんだと思うね。
Q)最近、注目している歌手は誰ですか?
ちょっと前だけど、絢香がすごいと思ったね。音域が広くて、あれだけシャウトできて、外国で言ったらレオナ・ルイスっぽく歌えるってのがすごいと思ったね。しかも、自分で曲つくってるしね。SOULHEADも面白いなぁって思ったね。歌いっぷりもいいし、曲もメロディアスでいいんだよ。あと、倖田來未とかBoAも好きだよ。女性系が多いんだなぁ。男だと、ゆず、キマグレン、Beginとかだね。Mr,ChildrenとかORANGE RANGE、B'zとかも聴いてるよ。洋楽だと、エリック・クラプトン、ビートルズだね。とりあえず、このi-Podにたくさん入ってるから、その時の気分で、いろいろ聴いてるよ。入ってるけど、まだ聴いてないのもあるしね。
Q)そういう最新の音楽情報は、どこから仕入れるのですか?
まあ、やっぱり、事務所の若い衆に教えてもらうことも多いけど、ラジオでFMを結構聴いてるからね。それで知るってのも多いね。
Q)最近、ご自宅でよく聴かれるのはどういう音楽ですか?
これが、またバラエティに富んでるんだよ。寝る前は、クラッシックのピアノがいいね。中道郁代のショパンが定番だね。あと、高橋多佳子だね。オレのコンチェルト弾いてくれたこともあるんだよ。それで、朝起きたら、絢香とか、そんなの聴いてるよ。桑田の曲もよく聴くね。アイツはすごいね、天才だよ!あと、なんとなく、バックでBGMみたいにかけとくのは、アンディ・ウィリアムスがクラッシックの曲に歌詞を付けて歌っているやつがいいね。
Q)加山さんが、「この人にはかなわない!」っていうアーティストはいますか?
そりゃあ、みんなかなわねぇ〜よ! 桑田くんなかには全然かなわないしさ! オレなんか、どさくさに紛れて音楽やってるって、自分では思ってるしさ。
Q)えっ?そんな風に思っていらっしゃるんですか?
そうだよぉ! なんでオレの音楽がこんなにポピュラーになったかって言うと、映画が隆盛を極めていた時代に、「若大将」って映画があって、映画を通してプロモーションしてたみたいなもんだからね。たまたま映画がヒットして売れただけなんだよ。だから、「運が良かったなぁ」って思ってるよ。オレは、ただ音楽が好きでやってただけだからね。
最近、どんどん、次から次へと出て来る若い衆の中には、「本当にすごいな!」って思う人、いっぱいいるよ。みんなすごいよ。そりゃあ、聴いててつまんない音楽もあるけど、やっぱり、抜け出してきて、残っていく人たちの中にはすごい人がいるよね。その筆頭が桑田だね。
Q)歌手生活50年を振り返ってみて、思い出深い出来事は何ですか?
やっぱり、節目節目で武道館でのコンサートが出来たことだね。今回も、50周年で武道館が出来たってことは、これはすごいことだなぁって思うね。最初、お客さんが来なかったどうしよう…って思ってたんだけど、チケット発売後即完売で、1万5百人もの人に買ってもらえて、本当に有り難いなあって思いましたよ。「継続は力なり」で、歌い続けてきて良かったなあと思うね。
50周年記念のアルバムにしても、オリコンのセールスチャートで2位まで行ったしね。70歳を超えてオリコンの10位以内に入るなんて初めてだろうと思って調べてみたら、左卜全ってのがいたけどね(笑)。
Q)今の日本の音楽業界については、どう感じていらっしゃいますか?
そりゃもう、戦国時代じゃないかってくらい、大変だと思うよ。CDの売れ行きも落ちてきているし、まあ、出し過ぎってのもあるんだろうけどね。あと、配信がレコード会社の売り上げの1/3くらいを占めてるわけだけど、そのうち、CDと逆転しちゃんうんじゃないかって思うね。だから、著作権とかの問題も、きちんと形づけていきながら、音楽産業全体を、根本からきちっとしなきゃいけないんじゃないかって、なんとなく肌で感じてる。
業界としては、いろんな波風もあったりするかもしれないけど、でも、いい音楽は、いつの世でも必ず出て来るからね。人間が生きてる以上、音楽は絶対に廃れることはないよ。人間が祈り始めた時から、音楽も始まったんだと思う。最初の音楽って祈りだったんじゃないかなって思うよ。それくらい人間の人生に必要なものだって思っているからね。
今の時代は、音楽も多様化していて、これだけたくさんの音楽があるわけだからさ、音楽を聴いて楽しむ側にとっては、セレクトの幅が広くていいよな。 |