Q)今年、2010年は、歌手生活50周年の記念年ということで、6月にはNHKホールで、鳩山元首相や白鳳関ら大勢の著名人も駆け付けた記念コンサートが行われたり、50周年の記念アルバム「道程(みちのり)」を出されたりしていますが、これまでの曲の中で、とくに思い入れのある曲を教えていただけますか?
難しいですね〜。とっても難しいですね、その質問は。あげるとすれば、やっぱりデビュー曲「潮来笠」は欠かせないですね。いろんな意味で。歌手生活のスタートだしね。あと、「江梨子」は、僕の青春時代の代表曲として1番なんだよね。それと「恋のメキシカン・ロック」とかかなあ。B面の中にも、いい曲がいっぱいあるんだけどね。あと、転機という意味では「子連れ狼」ですね。デビュー10年くらいで、ちょっと売れなくなってきてた頃でしたし、ちょうど、昭和46年というのは、僕が結婚した年でもあるんですよね。
Q)最近の曲ではどうですか?
最近は、いろんなことやっていて「ゆるキャラ音頭」までやってますからね(笑)。でも、最近、ハマったのは、やっぱり、小椋さんの「母を恋うる歌」なんだよね。母ものの歌は、これまでにも2〜3曲あるんだけど、決定的な歌はこれですよ。あと、「人生はまだ語れない」などもいいですね。
Q)50周年記念曲「生きて、悔いなし」は、前作「母を恋うる歌」に続き、小椋佳さんの作詞作曲ですが、そもそも、橋さんから小椋さんにお願いされたのですか?
そうです。去年「母を恋うる歌」の時、ディレクターを通して、お願いさせていただきました。その時、初めてお会いしたんですよ。49年目にして初めての出会いだったんですけど、もともと、僕も小椋さんの作品では好きな曲がたくさんあってね、昔、「愛燦燦」とか「シクラメンのかほり」とかをライブで何度か歌ってたこともあって、いつか機会があったらご一緒したいなと思っていました。恩師の吉田正先生、遠藤実先生亡きあとは、小椋さんくらいしか、僕に書いてくれる人はいないんじゃないかなって気がしてたんです。詞も曲も、あそこまで書ける人は小椋さんくらいだと思いますよ。必然の流れかなと思っています。
Q)「生きて、悔いなし」というテーマは、小椋さんと相談されて生まれたのですか?
打ち合わせの時に、記念曲だからどういう感じの曲にしましょうかということで、いろんな話をしていたら、それを聞いていた小椋さんが、「それじゃあ、橋さんは、生きて悔いなしですか?」って聞いてきて、「そうですね」って答えたら、そのままタイトルになっちゃったんですよ(笑)。
Q)最初に、出来上がった歌詞を読まれた時は、どう思われましたか?
もう、全く、本当に僕の人生そのままって感じでしたね。びっくりしました。ただ1か所だけ、「大人がみんな 羨ましくも 汚くも 映った日」ってとこだけが、ちょっと違うなって思ったけど、あとは全部、ぴったりだね。
Q)歌詞の内容に関しても、小椋さんからかなり取材されたのですか?
そうでもないんです。僕の生き様って、あんまりわかってたはずはないんだけど、でも、小椋さんとは同い年だし、もともと作家だから、いろんなこと調べて、インプットされてて、あとは想像されたんだと思いますよ。
Q)とくに気に入った個所はどこでしょうか?
「思えばいつだって その場所 その時 一生懸命な私の振舞い…」ってところですね。ここが全く私の人生そのものなんですよ。
Q)橋さんは、本当に「生きて、悔いなし」なんですか?
そうですね。「生きて、悔いなし」って言うと、それで終わっちゃうみたいだけど、本当に、性格的に、過去のことをくよくよしたり、ジメジメしたりするのは嫌いなんですよ。だから、反省はするけど、過去にはこだわらない性格なので、これまでやってきたことに悔いはないですね。
Q)橋さんの歌を聴いていると、それがたとえマイナー調の曲であったとしても、どこか明るくて、歌声に夢とか希望がある感じがするのも、そういう性格的なことも関係しているのでしょうか?
そうですかね〜、意識はしていないですけどね。どっちらかと言うと、僕は思い入れをうんと入れる歌い方をあまりしていないですからね。だから、演歌っぽくないし、幅が広いんだと思うんですけどね。あまり思い入れを入れるとね、その詞には合ってはいるんだけど、なんか重くなる、暗くなる感じが好きじゃないんですよ。それがいいのかもしれないですね。感情をあまり入れすぎると、聴く人が引いちゃうこともありますからね。
Q)50周年記念アルバム「道程(みちのり)」では、過去の大ヒット曲を、新たに録りなおしていらっしゃいますが、どうして録りなおされたのですか?
どれも、もう相当昔の録音ですから、新しく、今の声と今のアレンジで録りなおしたかったんです。やっぱり、ファンがよく知っている歌から選ぼうってことになって、最初の4曲はすぐに決まりましたね。アレンジを変えるとマイナスの部分が出てくることもあるけど、意外とそうはならなかったと思いますよ。とくに「潮来笠」なんか、初めての試みですけど、全然、色が変わっちゃたでしょ。新しい「味」になればいいかなと思っています。 |