言葉の達人

SAKUSHIKA

 達人たちは1曲の詞を書くために、言葉を巧みに操り、その時代を象徴する言葉を探した。その言葉は多くの老若男女の心を掴んで離さず、その歌は大ヒットした。
「孤独がつらく感じるとき」、「愛することがよくわからなくなったとき」いつも、勇気と力を与えてくれた…、作詞家は言葉の魔術師である。そんなプロの「作詞家」の皆さんをゲストにお招きして、毎月、紹介していくこのコーナー。
今回は、常に歌い手・聴き手を念頭に置きながら、「あなたのKissを数えましょう〜You were mine〜」などのヒット曲を世に送り出し、英詩、訳詞も手がけるなどジャンルを問わず幅広く活躍されている「高柳恋」さんをゲストにお迎え致しました。

高柳 恋

代表作

Stormy Town」/SMAP
「月下の獣達」/アン・ルイス
初愛」/郷ひろみ
あなたのかけら」/華原朋美
Sad Song」/Tina
「エンゼルフィッシュは眠らない」/大橋純子
「STAND」/Skoop On Somebody
あなたのキスを数えましょう 〜You were mine〜」/小柳ゆき
その他、多数。

作詞論

作詞家が書く詞は人のためのものです。それを歌うヴォーカリストのためのものであり、それを聴くファンのためのものです。決して自分のためのものではありません。それは自己表現でもなければ芸術でも、文学でもない。このことをいつも忘れないようにしています。ちょっと油断するとすぐに、ひとりよがりで傲慢な作品を生んでしまいます。人のためにどれだけ慎重に真剣になれるか、それが作詞家が書く詞のすべてだと思います。

高柳さんに伺いました。
Q:
作詞家になったきっかけは?
A:
大学中退後、舞台の大道具を仕事にして、あるミュージカルの劇中歌の作詞を手伝わされたのがきっかけでした。
Q:
プロ、初作品について
A:
もう放送は終了しましたが、フジテレビ系列の子供番組、「ひらけ!ポンキッキ」に使われた、「ピンクのバク」という曲です。確か、1986年頃だったと思います。
Q:
作品を提供したいアーティスト
A:
必要とされるならどなたでも。
Q:
あまり売れなかったが、私の好きなこの歌
A:
ずいぶん昔の作品になりますが、渡辺真知子さんの「フィレンツェより遠い」という曲が好きです。
Q:
なぜ「詩を書くことを選んだか」
A:
特に「選んだ」という記憶はありません。大道具をやっていたので、裏方として出演者を支えるのが仕事でした。その気持ちは今も変わりません。誰かのためにしなければならないことがあるなら、それが力仕事であろうと詞を書くことであろうと、取り組んできたら偶然ここにたどり着いたというのが、正直な感想です。
Q:
プロの作詞家になりたい人へのアドバイスを
A:
すべてのことに興味を持つことでしょう。自分のテリトリーに固執していたら、自己満足に陥ります。自分と違う意見を聞き、理解しようとすれば、いずれその考え方は自分のものになります。そうやって自分を新しくしていかない限り、数多くの作品を書くことはできません。一、二作なら書けるでしょうけれど。
歌詞を見る HANABI〜8月の日〜未来

TBSのドラマ、「キッズ・ウォー」の主題歌になりました。二年前の夏休みにやっていた、お昼の連続ドラマです。友人が、アマチュアの書道の作品展に行ったら、この詞が縦書きで出品してあったそうです。携帯電話のカメラで撮影して、後に見せてくれました。嬉しかったです。

■私の好きなあのフレーズ
「ぼくたちは生きる意味など
 わかるほど利口じゃなくて
 いつもなにか起こるたびにただとまどうけど」

PROFILE

高柳恋Ren Takayanagi

1958年3月生まれ。
学生時代、フォークソング・ブームに影響を受けて、ボブ・ディランやポール・サイモン、ジャニス・ジョップリンの詞を個人的に和訳していたのが下地を作ったのかもしれない。
舞台大道具から1985年作詞家に転身。
以降、ジャンルを問わず幅広く、アーティストに詞を提供。アニメの挿入歌やCMソングなども多数。

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