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Q1. 歌詞を書くことになった、最初のきっかけを教えてください。
最初は、音楽会社の方から頼まれたり、ですかね。CMソングだったり。あとはミュージシャンの方からとか。本に書いていたものをみて、これ歌にしたいなというものがあったりとか。一緒に何か作ろうってことで、私が詩を書いたりとか。本当にケースバイケースです。
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Q2. 歌詞を書く時には、どんなところからインスピレーションを得ることが多いですか?
実際のできごとだったり、空想だったり、流れ行く景色だったり、過ぎ行く人やカフェにいる人を観察していてだったり。
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Q3. 普段、どのように歌詞を構成していきますか?
テーマを決めて、サビのことばを決めて、とか。あとは音をなんども聴きながら浮かぶことばを書き留める。
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Q4. お気に入りの仕事道具や、作詞の際に必要な環境、場所などがあれば教えてください。
コーヒーを豆から挽いていれるのが儀式のようになっています。喫茶店を転々として書くことが多いのですが、歌詞は実は、飛行機の中がいちばん、はかどります。なぜか。あとは移動中の電車とか。移動と集中により歌詞が生まれますね。
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Q5. ご自身が手掛けた歌詞に関して、今だから言える裏話、エピソードはありますか?
うーん、『アナザースカイ』という番組のロケでスペインを5箇所もバス移動したことがあって。それが、着いて撮影して、その場所の感想をコンパクトに考えて言って、はい次、っていう、かなり過酷な旅でして。実はハナレグミの「旅に出ると」は、そのバスの中で書いたんです。
もともと「旅に出ると」や「逃避行」の言葉は、ただメモとして、ハナレグミの永積さんに渡したものでした。でも、なんでそういう流れになったのかは忘れたんですが、メモを書いて送ったとたん、「できた!」ってメールをもらって。え?何が?もしかして曲が?まじで?早すぎない?と、よくわからないでいたら「すぐ聞いて」と、音源が送られてきて。それが素晴らしすぎて、もう、なんだろう、鳥肌たちました。アーティストってすごいですね。
言葉だけだったのが、音がつくと、世界に色がついて、とびはねて、3次元が6次元くらいになる。音を生み出すって、メロディーを生み出すって、本当に天才の技だなと思いました。想像もつかないし。どれとも似ていない独特なメロディー。神様からもらった才能だなあと。それからまたアレンジが加わってどんどん色がついていく。またまた驚かされました。作詞は別に、まあそれにくらべたら想定内の仕事かなと思っています。
あと、自分が書いた歌詞の話ではないんですけど。私が会社を辞めることを、宮沢和史さんに話したんです。歌詞になったらいいなと思って。ならなくてもなにか、こう、タネみたいなのに使ってもらえたらと。そしたら、宮沢さんからしばらくして連絡があって「HABATAKE!」って曲ができたから聞かせたいって。テレパシー通じてました笑。「最初に聞かせたくて」と聞かせてくださった。涙が出ましたね。会社を辞めてフリーになる勇気をもらいました。もう戻るところがなくなるわけですけど、そういう方が背中を押されてくれたらいいなと思って、そのときの気持ちを話したから。宮沢さんは本当にすごい人です。
「楽園」は、CMソングをお願いに宮沢さんのところに行ったんです。で、一応、クライアントに求められていた“「島唄」みたいなやつを”という依頼をですね、失礼にならないように伝えたところ「コンセプトいちばんわかってるエリーさんが、サビを書いてみてください」って優しく言われて、えーーーっ、て(笑)。それで<空色の君、海色の僕 忘れかけてた 大切なこと 君は海鳥 僕は海風 他には何もいらない>というフレーズだけ書きました。
島に行った時、熱血サラリーマンだった私は、やっぱり<忘れかけてた 大切なこと>を思い出したんですよねぇ。そういう時間が大切ですよねって伝えたかった。あと、まあ自然があれば、他に何にもいらないじゃんって。これがあればいいじゃんって思えると、すごく肩の力が抜けますから。そうしたら、そのあと宮沢さんが続きの歌詞を書いてくださって。お手紙交換のような、文通のような気持ちになりました。「こういうことだよね?」という。「そ、そうなんです!」という。
MISIAちゃんのは曲先なんですが、「One day, One life」を書いたとき、「すごく伝えたいことで嬉しい」って言われて嬉しかった。彼女は“mudef - Music Design Foundation -”という財団をやっていて、いろんな国、人々の支援をしているから、一緒にご飯を食べたりしていて、こういうのを書いてみたいなと思いました。震災のこともあって、いろいろ辛いことはあるけれど、乗り越えていくこと、大切にしていくこと。その1日がタペストリーのようにきちんとね、連なって人生になるよね、って。そういうのを伝えたかった。MISIAちゃんが歌うと届くというか、説得力あるっていうか。「歌ってて泣きそうになった」ってMISIAちゃんが言ってくれて、ああまた、誰かの心を包み込んだんだなあと思いました。 -
Q6. 自分が思う「良い歌詞」とは?
つい口ずさんじゃう、ですかね。
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Q7. 「やられた!」と思わされた1曲を教えてください。
松本隆先生の詩はもう全部好きですよ。
<渚のバルコニーで待ってて ラベンダーの 夜明けの海がみたいの>なんて、書けないですよー。 -
Q8. 歌詞を書く際、よく使う言葉、
または、使わないように意識している言葉はありますか?好きとか、そういうのは、ちょっと、、躊躇されますね。愛してるとか、そういうのも、ちょっと、、難しいですね笑。理由?えー?恥ずかしいからですね。あとなんだろう、人を侮辱したりバッドにする言葉や汚い言葉は使いません。
昔のね、古き良き日本の言葉が好きなんです。たおやか、とか、はんなり、とか。でもなかなか使えないんで、そういう香りがするといいなとは思います。あと、できるだけ、平易な言葉を使うようにしています。 -
Q9. 言葉を届けるために、アーティスト、クリエイターに求められる資質とは?
資質とかよくわからないです。ただ、ことばは、言霊だから。いいことばは、誰かのこころをとかしたり、やわらかくしたり、寄り添ったりしますよね。私たちがそばにいれなくても、私たちの生み出したことばが、そのひとのそばにいられたりする。そう思うと、素晴らしい仕事だと思います。
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Q10. 歌詞を書きたいと思っている人へのアドバイスをお願いします。
うーん。。。ひとりよがりにならないように。それでいて、吐露しないでさらけださないでいては、何も伝わらない。難しいですよね。ただ、メロディーとともに寄り添うものであればいいですよね。自分の書いた言葉を素晴らしいミュージシャンが歌ってくれて、歌声として届けてくれる。そんな素晴らしい仕事に携われるということのありがたさと責任を肝に命じて、ですね。
主な著書は、『生きるコント』(文春文庫)、『なんとか生きてますッ 』(毎日新聞出版)、コンプレックスが解消する短編集「猫のマルモ」(小学館)、「思いを伝えるということ」(文藝春秋)心の洗濯ができる写真集「見えないものが教えてくれたこと」(毎日新聞出版)等。そして最新刊「なんでこうなるのッ?!」(毎日新聞出版)が好評発売中。現在、「サンデー毎日」、「日本経済新聞出版社HP」などにて連載を担当。
2012年よりPARCOミュージアムにて「思いを伝えるということ展」という体験型のインスタレーションを発表、アート活動をスタートさせる。近年では画家としても活動。昨年は十和田市現代美術館にて美術館での初の個展「シンシアリー・ユアーズ」を開催。2017年は福井県 金津創作の森にて個展を開催。2018年は、愛媛県の芸術祭、道後オンセナート2018、六甲ミーツアート2018に参加。
著書:『なんでこうなるのッ?!』(毎日新聞出版)
2017年11月23日発売
¥1,300(税別)
著書:『なんとか生きてますッ2』
(毎日新聞出版)
2015年12月18日発売
¥1,300(税別)
※MISIAさん 帯コメント提供
著書:『思いを伝えるということ』(文藝春秋)
2014年11月7日発売
¥580(税別)
【イベント】
『大宮エリーのギャラリー・トーク』写真展『あの日の椿』&『スピリットチャージ写真展 II』
同時開催記念トークイベント
2018年6月28日(木)19:30~21:00
会場:SUNDAY & CAPSULE(東京都世田谷区池尻 2-7-12 B1F)
詳しくはコチラ