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Q1. 歌詞を書くことになった、最初のきっかけを教えてください。
しっかりとした歌を初めてつくったのは、高校生のときでした。うちの高校は文化祭のテーマソングを校内で募集し、お昼の時間に全校放送で流して、生徒の投票で決めるという面白いイベントがありました。学内のバンドたちがこぞって応募するのですが、そのためにつくった歌が真剣につくったものでは初めてのものだったと思います。
先輩たちの有力バンドがたくさんあったなか、友達と組んだバンドで僕がつくった曲がダントツの1位になったんですね。それまで僕はクラスの誰とも話せなかったような地味な生徒だったんです。なのに、そんな僕がつくった曲が急に学校中の話題になって。あんなにも世界が変わったと感じた瞬間はなくて、魔法のように思いました。自分には音楽という武器があるのかもしれないと思った瞬間でした。 -
Q2. 歌詞を書く時には、どんなところからインスピレーションを得ることが多いですか?
なにか直接的に他の作品からイメージを拾うことはあまりないように思います。メロディをつくるのも、歌詞を書くのも、映像をイメージすることが多くて、なかなかうまく説明できないのですが、たとえるならば映画の予告版くらいの印象的なシーンだけがつながれたようなものをなんとなく頭に浮かべることが多いですね。
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Q3. 普段、どのように歌詞を構成していきますか?
書くというよりは、とにかく「歌う」ことが多いです。僕はメロディから作り始める、いわゆる「曲先」が多いのですが、鍵盤で伴奏を弾きながらメロディを何度も、何度も、飽きるほど歌います。そのなかでパシッとハマったり、イメージの膨らむワードがいくつか出てきたところで、物語を構築していくことが多いです。
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Q4. お気に入りの仕事道具や、作詞の際に必要な環境、場所などがあれば教えてください。
MacOSの標準アプリなのですが、スティッキーズというメモ用ソフトがあって。それをいつも使って作詞しています。作詞は手書きから始めて、ある程度まとまったところでスティッキーズに打ち込んでみる流れです。同じ色のメモ用紙に、同じフォントの同じサイズで、どの楽曲の歌詞も書きます。それはなぜかというと、前に書いた歌詞と比較するためです。同じフォーマットですべてを書いていれば、フォント自体が持っているイメージとかに左右されず、微細な雰囲気の違いなどを比べやすいんですね。画面上に何曲も歌詞を並べて、見比べるときもあります。
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Q5. ご自身が手掛けた歌詞に関して、今だから言える裏話、エピソードはありますか?
さして面白い話はないと思うんですが、「コイスルオトメ」の手を握って指が震えちゃった男の子は、十代のときの僕ですね笑。
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Q6. 自分が思う「良い歌詞」とは?
それ以上でも、それ以下でもない、聴き手が感動し、想像するために、必要なものだけがある歌詞。
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Q7. 「やられた!」と思わされた1曲を教えてください。
「やられた!」という言葉のニュアンスとは違うかもしれませんが、椎名林檎さんの「ありあまる富」の歌詞は最近、読み直してみて、とてもすばらしい歌詞だと感動しました。存在への強い肯定がそこにはあって、優しい歌詞だなと。言葉づらだけになってしまいがちな応援ソングより、よっぽど励まされました。
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Q8. 歌詞を書く際、よく使う言葉、
または、使わないように意識している言葉はありますか?時代性を帯びた言葉は、あまり使わないようにしているかなと思います。まぁ、でも基準は曖昧ですし、場合によりけりだとは思います。「電話」はまだよくて「メール」はどうなの?「LINE」はどうなの?考えるとキリがありませんよね。単語ひとつでの判断というよりは、あくまで全体のなかで、本当にその言葉が必要になっているのかということになるのかなとは思います。
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Q9. 言葉を届けるために、アーティスト、クリエイターに求められる資質とは?
それを、自分で考えようとする覚悟じゃないですかね。
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Q10. 歌詞を書きたいと思っている人へのアドバイスをお願いします。
「あなた」自身を表現したいのか、それともあなた以外の「誰か」に喜んで欲しいのか。僕もいつもそのふたつを行ったり来たりしていて答えが出ていませんが、それを考えながら、自分の書いている歌がどこに向かっていくものなのか、意識するのは大切だなと、僕自身は思っています。
1982年12月17日神奈川県出身。
1999年2月、小・中・高校と同じ学校に通っていた水野良樹と山下穂尊が、いきものがかりを結成。
1999年11月、同級生の妹、吉岡聖恵がいきものがかりの路上ライブに飛び入り参加したことがきっかけでいきものがかりに加入。
2006年メジャーデビュー。作詞作曲を担当した代表曲に「ありがとう」「YELL」「じょいふる」「風が吹いている」など。国内外を問わず、様々なアーティストに楽曲提供をする他、ラジオ・テレビ出演、雑誌・webでの連載執筆など幅広い活動を行っている。