自分にとって作詞とは、世界と繋がるための窓のようなものです。その窓を通して、光や影、明るさや暗さ、強さや弱さ、美しさや醜さなど、人間も人生も色んな面を持っている多面体なのだということを意識しながら、簡単な言葉で、より深いところまで表現できたらいいなと思っています。
一番大切にしているのは、「作詞が好き」という気持ちです。
どんな時でも、この気持ちさえあれば、書き続けることができます。
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Q1. 歌詞を書くことになった、最初のきっかけを教えてください。
小学4年生の時に宿題で書いた詩を褒められたのがきっかけで、言葉を使った表現を意識するようになりました。そこから詩を書くようになり、高校生になってバンド活動を始めてから本格的に歌詞を書くようになりました。
作詞家になると決心してから、レコード会社や音楽出版社などの住所を調べて、勝手に『新人作詞家募集係』と宛名を書いて作品集を送り続けていたところ、ある音楽プロデューサーの方から連絡が来ました。それから作詞コンペなどに声をかけていただけるようになり、たくさんの良き縁に恵まれて、現在に至ります。 -
Q2. 歌詞を書く時には、どんなところからインスピレーションを得ることが多いですか?
今まで自分がしてきた実体験(普段の生活や会話、音楽、映画、小説、漫画などを通して心が動かされた経験)の蓄積からインスピレーションを得ることが多い気がしますが、依頼されるほとんどが曲先ですので、その際に渡される曲とそれを歌うアーティストから得る閃きも多いと思います。
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Q3. 普段、どのように歌詞を構成していきますか?
音源が届いたら、最初に曲の構成をつかみます。その後で、メロディーの響きに合う言葉を探ります。そこからイメージを膨らませていきます。
サビを意識して作り始めることが多いですが、頭から最後まですらすらと書けてしまうこともあります。Bメロあたりから出来始めることも。
バラバラに散らばっていた言葉が、一つの流れに向かって動き出して、少しずつ歌の世界が出来上がっていく過程が、作詞の醍醐味です。 -
Q4. お気に入りの仕事道具や、作詞の際に必要な環境、場所などがあれば教えてください。
仕事部屋で書くことが多いですが、気分転換に外へ出て、街の景色やそこにいる人たちを見ながら曲を聴き、言葉を探すこともあります。
普段は、iMacとiPhoneを使って書いています。
あと、脳が疲れるので、仕事机にはいつもブドウ糖が置いてあります。 -
Q5. ご自身が手掛けた歌詞に関して、今だから言える裏話、エピソードはありますか?
あるシングル曲に歌詞が採用された時の話ですが、コンペに歌詞を提出して何も連絡がなかったので落選したのだと思っていたら、ある日、昼食を食べながら観ていたテレビのCMで曲が流れてきて、その歌詞が自分が書いたものだったことがあります。泣きそうになるくらいの嬉しさと同時に、ビックリし過ぎて口の中にあったパスタを飲み込むことができませんでした。後日、採用の連絡が来ました(笑)。
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Q6. 自分が思う「良い歌詞」とは?
意味を理解する前に、通じてしまう。頭で考える前に、心で理解できてしまう。そんな、歌詞です。
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Q7. 「やられた!」と思わされた1曲を教えてください。
やられた!と思わされた曲をあげればきりがないですが、ここ数年の中でいうと、
平井堅さんの「ノンフィクション」は、初めて聴いた時、激しく感情を揺さぶられたのを覚えています。強い覚悟を持って書かれたことが、どの言葉からも伝わってきます。職業作詞家の自分には書くことのできない歌詞だなと、どこか憧れのような気持ちを抱きながら聴いていました。もちろん、平井さんの歌唱力があってこその、凄い歌です。
最近だと、藤井風さんの「罪の香り」に嫉妬しました。歌全体にちりばめられた言葉のチョイスが、素敵で秀逸。サビ頭の<おっと 罪の香り>だけでも印象的なのですが、そのあとの<気付いた時にはまだ早い>で、そっと「罪の香り」を嗅いだような気持ちにさせられて、うわぁ~!かっこいい!この歌、いいなぁ~!となりました。このような歌を詞曲共に作り出せる藤井さんの才能に、まさに、やられた!って感じです。 -
Q8. 歌詞を書く際、よく使う言葉、
または、使わないように意識している言葉はありますか?きっと、好きで使っている言葉や、無意識に避けている言葉はあるかもしれませんが、正直なところ、自分でもよくわからないです。
ただ、どんな言葉を使ったとしても、その言葉がメロディーに乗って、歌詞として成立しているのなら、それでいいと思います。 -
Q9. 言葉を届けるために、アーティスト、クリエイターに求められる資質とは?
「自分らしく在る」という覚悟が、必要だと思います。
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Q10. 歌詞を書きたいと思っている人へのアドバイスをお願いします。
書き始めたら、最後まで書く。
当たり前ですが、途中でやめてしまうと作品にはなりません。書き続けていれば、
奇跡みたいな瞬間に出逢えたり、たまにですが、自分を天才だと思えることもあります(笑)。
難しく考えずに、作詞を楽しんでください!