僕らは誰かのために恋をするわけじゃない。

 2022年4月15日に“wacci”が新曲「恋だろ」を配信リリースしました。今作は、土屋太鳳が主演の木曜ドラマ『やんごとなき一族』挿入歌として書き下ろした楽曲。誰もが共感できる一途な片思いを歌った恋愛ソングとなっております。さらに、メジャーデビュー10周年となる節目の今年、ライブハウスとホールでの全国ワンマンツアーの開催も決定!
 
 さて、今日のうたコラムでは、そんな最新作を放った“wacci”の橋口洋平による歌詞エッセイをお届け。綴っていただいたのは、新曲「恋だろ」にまつわるお話です。ドラマに何度も登場する言葉から、浮かんだフレーズとは…。今、自分の恋になかなか自信が持てないあなたへ。この歌詞とエッセイが届きますように。



『やんごとなき一族』という作品がドラマ化されるにあたり、
挿入歌を書き下ろしで担当させてもらえることが決まった。
 
一般庶民の主人公「佐都」が、大富豪の家系である深山家の次男「健太」と結婚。
嫁ぎ先となった深山家の理不尽なしきたりや争いごとに立ち向かい奮闘する物語だ。
 
せっかく頂いたドラマ挿入歌のチャンス。絶対にいい曲で応えたい。
そんな想いで、1コーラスのみだが合計10曲~15曲ほど書いて、アレンジしてドラマ制作側に送った(アレンジに付き合ってくれたメンバーには本当に感謝している笑)。
 
シリアスというよりは、少し派手で、エンタメ要素の強いドラマになりそうとのことで
衝撃的な出来事や発言、場面転換に合うような、少し派手めでコミカルな楽曲を中心に送ったのだが
その中で、提出する直前に、「これも入れておこう」とメンバー内で一致して
そっと忍ばせておいたのが、ピアノと歌だけの、アレンジも何もされてない楽曲「恋だろ」だった。
 
 
ドラマ内では何度となく、「釣り合わない」「身分不相応」「分をわきまえろ」といった言葉が出てくる。
その言葉に何かヒントがあるような気がして、ずっと頭の片隅で考えながら日常を過ごしていた中で
 
<僕はこの世界で第何位で 君はこの世界で第何位だ>
<関係ないのが恋だろ>
 
ふとこの2フレーズが浮かんで、一気に書き上げた歌だ。
 
僕らは誰かのために恋をするわけじゃない。
そして恋をすることに許可や資格はいらない。
実るか実らないかは別として、
自分がどれだけダメでもそして相手がどれだけすごい人であろうと
釣り合わないと言われようと、身分不相応だと言われようと
好きという気持ちを抱く自体は自由だ。
 
性別も年齢も家柄も国籍も外見も年収も
好きだと言う気持ちを否定するための理由にはならない。
全て「それでも好きだ」という一言で片づけられるほど強い感情。
それが恋だろ。それでいいだろ。
 
と、実際はそううまく考えられないし、開き直れないものだが
そう言い聞かせて、今日も自分の恋を正当化して前を向けるような
そんなラブソングだけど応援歌の面を持った楽曲だった。
 
これを書き終えた時に、これまでとは違った爽快感があった。
うまいこと言えたとか、上手に書けたとかじゃなくて
多分自分の中にずっとあった、「言いたい事」だったんだと思う。
だから、この歌を選んでもらえた時は驚いたが、嬉しかった。
 
 
「ドラマが進むにつれて きっと役割を担ってくれる楽曲だと思います」
 
ドラマを制作する田中亮監督とプロデューサーの宋ハナさんが
この楽曲を聞いて最初に言ってくれた言葉だ。
 
 
この先どんな展開が待っていて
佐都と健太は恋や愛を武器に、深山家とどんな戦いを見せてくれるのか。
ドラマと共に、楽曲も育っていくことを願っている。
 
<橋口洋平(wacci)>


◆紹介曲「恋だろ
作詞:橋口洋平
作曲:橋口洋平