見守り続けてきた物語…。『劇場版 君と世界が終わる日にFINAL』挿入歌が収録のEP!

 2024年2月7日に“安田レイ”がNew E.P.『Ray of Light』をリリースしました。タイトル曲は『劇場版 君と世界が終わる日に FINAL』挿入歌です。描かれているのは、ドラマ版の挿入歌「Not the End」にも通じる想いと、ファイナルならではの成長と強さ…。さらに今作にはアニメ『烈火澆愁』日本語吹替版エンディングテーマ「声のカケラ」と新曲「Turn the Page」も収録。インタビューでは、それぞれの歌詞に込めた想いをじっくりと伺いました。安田レイの歌詞の軌跡や作詞法もお楽しみください…!
(取材・文 / 井出美緒)
Ray of Light作詞:安田レイ 作曲:大濱健悟The darkness shows me light
守り続けよう どんな明日が待っていようとも
I feel you deep inside
全て捧げよう その涙が乾くのなら
過去、今、未来へと 最後に誓うよ
Don't be afraid, believe in ray of light
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「無敵な私じゃなきゃ愛してもらえないかも」と不安でした。

―― レイさんには『今日のうた』でいくつも歌詞エッセイを書いていただいていて。文章からその時々の情景や感情が鮮明に浮かんできて、いつも映像を観ているかのような気持ちになります。

本当ですか!? 自分では感情を言葉にするのが下手すぎて悩んでいるんですよ。昔から喋るのも書くのも苦手で。しかも文字を読むこともあまり得意ではなくて、前は本を1冊読み切ることすら難しかったんですね。だけど久しぶりに本を買ったらそれがおもしろくて。急に本読みスイッチが入って、「本をたくさん読もう!自分の言葉ももっと増やしていこう!」というモードに入っているところです。

―― どの本がスイッチを入れてくれたのですか?

平野啓一郎さんの「本心」という小説です。その帯に「映画化決定」って書いてあったので気になって。あと好きなテーマでもあったんです。SF要素のある近未来のお話で、私はそういうアニメが大好きなんですよ。ロボットやAIとの共存みたいな。それで読み始めたらあっという間に読み終わってしまい、「おもしろければ本は読めるんだ!」って(笑)。

それから平野さんの「ある男」という小説も買いまして、これから読んでみようと思っています。本を読むって自分の作詞にも必ずいい影響があるはずなので、新しい扉が開くかもしれないなと。どんどんおもしろい本を見つけていきたいんですよね。

―― では、現在のレイさんの言語化能力はどのように培われてきたのでしょうか。

全く力はないとは思うのですが、強いて言えばいろんなアーティストさんの歌詞からですね。本を読み続けることは難しいけれど、歌詞を文字で読むことが大好きで。「これってひとつの意味じゃなくて、2つ3つと深読みできるな」とか「自分だったらどうするかな」とかいつもそういうことを考えながら読み解いています。なのでそれこそ私、歌ネットさんでよく検索もしていて。すべては音楽、歌詞からですね。

―― 歌詞エッセイにも書かれていましたが、アメリカ生まれのレイさんは、小学6年生まではアメリカンスクールに通っていたんですよね。すると子どもの頃、気持ちが言語化される際には英語と日本語どちらで浮かぶものだったのでしょうか。

どうだったかなぁ…。とっさに感情が出るときは英語だった気がします。たまに今でも「Wow!」みたいなことがありますから。ただ、たとえば「夢をどちらの言語で見る?」みたいな話もあるじゃないですか。だけどそもそも私、夢に言葉って存在していない気がして。なんというか…心と心で、イメージの交換をしている感覚なんです。だから日常でも、何語にもなる前の“何か”が頭のなかにありますね。

―― 作詞の際には、どちらの言語が書きやすいなどはありますか?

それは日本語なんですよね。英語は響き的にパンチが効いていたり、カッコよかったりするんですけど、だからこそ直球すぎるとも思っていて。深読み作業がなくても理解できるというか。日本語のほうが、いろんな要素を持ってくれている気がして好きなんです。

―― ストレートに投げたいときこそ英語になるんですね。

そうなんです。今回の「Ray of Light」も頭から<The darkness shows me light>ですし。なのでサビにはどんどん英語を使って、AメロBメロはより深い意味合いを持たせたいから日本語で書くことが多いです。作詞法も、最初はすべて日本語ベースでバーッと書きます。そこからちょっとエッジの効いた響きを入れたい部分に英語を足したり、日本語を抜いて英語を入れたりしていきますね。

―― また、2020年にメールインタビューをさせていただいた際、「歌詞を書き始めたばかりの頃って、自分の良いところばかりを書いていた気がする」と綴られていましたね。素の自分を出せるようになった明確なタイミングはあったのでしょうか。

photo_01です。

年を重ねるにつれて、作詞の機会が増えるにつれ、「もうちょっとさらけ出したいな…」と自然に思うようになっていったんだと思います。誰しも、自分が昔SNSで書いた文章を読んだりすると、「やば!恥ずかしい!」とか思うじゃないですか(笑)。それと似た感じで、昔の歌詞を見返したときに、「一生懸命に大きく見せようとしているなぁ…」って感じたんですよ。曲で言うとどのタイミングだったかな…。

―― 「この曲を出すときにちょっと勇気が要った」とか。

あ、それで言うと「Re:I」かもしれないですね。この曲は“こんなダメな私だけどいい?”みたいな歌詞で。でも書きながら、「今までカッコつけている私ばかり見てきたみんなはどう感じるんだろう」と思って。もっと言えば、「無敵な私じゃなきゃ愛してもらえないかも」と不安でした。

だけどリリースしてみたら逆に、「レイちゃんのこういう部分がもっと見たいよ!」ってファンのみんなが言ってくれて。そのリアクションの存在はかなり大きかったですし、この曲をきっかけに殻から抜け出せた気がします。

―― ちなみに「Re:I」はどんなときに書けた曲だったんですか?

何かきっかけがあったはず…。自分のなかで「もっとパーソナルな歌詞にチャレンジしてみようかな」と思ったんですよね。でもそういう曲のなかでカッコつけている自分て違うな、距離があるなって思って。「じゃあ等身大の自分てなんだろう?」って考えたときに、いろいろできない自分、弱音を吐いちゃっている自分が出てきて、それをそのまま書いてみたんです。そこにたどり着くまでには、何か心を動かされる出来事があったはずなんだけど…思い出せないなぁ(笑)。

―― いつ頃に書いた曲ですか?

えーっと…4年前…。コロナ禍のちょっと前ぐらいですね。

―― ではわりとここ数年で殻を抜け出すことができたんですね!

うわ、そうかも! だからコロナ禍の3~4年を経てやっと等身大の自分を出せている感覚なんですよ。1度みんなに受け入れてもらえたことで、まったく怖くなくなりました。同じ思いを抱えている人が多いこともわかったし。今思えば、カッコつけていた意味って何だったんだろうって(笑)。やっぱり若さというか、大人のスタッフに囲まれていたときだからこそ、常にファイティングポーズを取っていたんでしょうね。

だけどもう経験も増えてきたし、メンタル面も大人になってきたし、ダメな自分を自分が許せるようになった。逆に自分のダメな部分を書くのが楽しくなっているところもあります。リラックスしている自分も、弱音を吐いている自分も、うまくいってない自分も、そのなかで成功を見つけた自分も、全部そのまま歌えばいいじゃん!ってマインドに今はなっていますね。そう考えると時間がかかりました(笑)。

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