“言葉にする前の何か”がテレパシーみたいに伝わってくる。

―― 3曲目「Turn the Page」はどのように生まれた楽曲ですか?

デビュー10周年のメモリアルライブをビルボードでやらせてもらったんですけど、そこに未発表曲を1曲持っていきたいなと思って作り始めました。ライブのタイトルも『Turn the Page』にしようと決めていて、「また新たなページをめくるような気持ちでライブをやりたい!」と思っていたので、そのテーマで歌詞を書いてみようと。

自分にとっての音楽の存在、ファンのみなさんの存在、ライブの存在を考えながら、自分が歌う理由を深掘りしていって。それはやっぱり、普段の現実からちょっと離れて、幸せな瞬間をみんなでシェアするためだと思って。その気持ちを歌詞にしました。なので<愛とかほしいから また泣いてさ 何度も歌ってる>っていうのは、「愛のタンクが切れそうになったらうちにおいで!」ということです(笑)。

―― サビの<dalalalalalalalala>もライブでファンのみなさんと歌うことをイメージされたんですね。

photo_03です。

そうなんです、一緒に歌えるパートを作りたくて。でもビルボードで歌ったときは完全な未発表曲だったので、みんな「え、わからないんだけど、これ合ってる!?」みたいな顔をしていて、あの空気がすごくおもしろくて(笑)。2部制だったので、1部と2部も観てくれている方は、「俺、知ってるよ。ついてこい」って感じで。みんなすごく頑張って歌ってくれていました。この曲はこれからもライブでいっぱい歌っていって、シンガロングのパートも浸透させたいですね。

―― この曲の歌詞は、<知らない言葉を覚える度 痛みは増えるこの旅>や<言葉にしたら崩れるもの 言わないと伝わらないもの 間違えてばっかだ>など個人的にも共感するフレーズばかりでした。

もう等身大の私が詰まっていますね! カフェで友だちと話しながら出てくるような言葉というか。とくに今、なんとなくモヤッと自分のなかにあった気持ちが、明確に言葉になり始めている時期だとも思っていて。いろんな人と話したり、作品を観たり、曲を聴いたりして、新しい言葉を知ってちょっとずつ答え合わせができているというか。「あ、それだ! 痛い! 苦しい! 知らないほうがよかったかも!」みたいな(笑)。歳を重ねるにつれ、そういうことが増えていきますよね。

―― レイさんは歌詞を書くとき、人称の使い分けに何かこだわりはありますか?

歌詞を書き進めて、最初に登場したワードを使うようにしています。だから無意識といえば無意識。たとえば<あなた>ってワードが浮かんで来たら、その曲は<あなた>になる。曲のニュアンスによって、自分の脳が勝手に選択しているというか。あ、でも<僕>ってほとんど使ったことがないかもしれない。

―― 日常のなかで<僕>と使わないから、自然には出てこないのかもしれないですね。

たしかに! きっとそうだと思います。「Ray of Light」のように、曲のイメージを狭めないようにあえて外すパターンもありますし。あと私自身のイメージと<僕>というワードがリンクしない可能性も考えちゃう(笑)。でも歌詞のなかにあると、キャラクター設定が明確に見えてくるから、いつか<僕>が主人公の歌詞は書いてみたいですね。

―― 楽曲が0から1になるときは、どのようにイメージが見えてくるものなのでしょう。たとえばワンフレーズがきっかけになる方もいれば、映像で見える方もいて…。

私の場合はいちばん最初の段階って、実は夢を見ているときの感覚に似ているのかもしれません。実際の言葉ではなくて、なんとなくの雰囲気というか。 “言葉にする前の何か”がテレパシーみたいに伝わってくるんですよ。そこから紙とペンを出して、乗せたい言葉をランダムにバーッと並べて、さらにイメージが湧いてきてセンテンスっぽくしたり、膨らましていく感じです。

―― テレパシーで受け取った“何か”を言葉に翻訳していくような感覚なんですね。

普段からそういう感覚があるんですよ。だから、「私のこのイメージ丸ごと、言葉にせずに届けばいいのに!」って思います(笑)。ピタッと適切な言葉を見つけるって本当に難しい。誰かとお話していても、歌詞を書いていても、常に頭に浮かぶ“何か”にハマる言葉を探していますね。

―― レイさんが描く主人公像には何か共通する特徴や性質はあったりしますか?

自分では気づかないんですけど、スタッフさんによく、「これ安田レイの歌詞あるあるだね」って言われるんですよ(笑)。でも今、全然思い出せない。逆に何かよく使うワードとかありますかね…。

―― たとえば今回の「Ray of Light」でも出てくる“光”と“闇”はレイさんのイメージがあります。

あ! そうだ、光と闇! それこそ2020年にメールインタビューしていただいた「through the dark」から光と闇を使うようになっている気がします。曲によっていろいろあるけど、「闇のなかで私は光になりたい」という主人公もいれば、「光と闇のなかを生き抜こう」という主人公もいるし。

あと昔はやっぱり光にばかりポイントを当ててしまっていたけど、最近はそうじゃなくて。時には光よりも闇が大きかったりもして。闇のなかにいるときこそ、いちばん大事な光が明確になるんだろうなって今は思います。まさに“きみセカ”の響もそうですし。主人公を光と闇で表現するのは私あるあるですね。

―― ありがとうございます。最後にこれから挑戦してみたい歌詞を教えてください。

誕生日の歌ですね。「生まれる」というテーマで歌詞を書いてみたいです。

―― それはきっと親友にお子さんが生まれたことにも通じていますね。

まさにそうなんです。その親友の結婚をお祝いした「each day each night」という曲を作って、エッセイにも書かせていただいたんですけど。次は生まれてきてくれたベイビーに曲を作りたいなって。これ、今年中にやります!

―― その親友の人生にもレイさんの音楽が寄り添っていますね。

「each day each night」を作ったときも親友はすっごく喜んでくれて。結婚式で歌う予定だったんですけど、コロナ禍でずっと延期になっていました。でも今年ついに式を挙げられるんですよ! 今は赤ちゃんも生まれて、いろんな意味で私は本当に嬉しくて。やっとそこで歌える日が来ると思うと、今から泣いてしまいそうです。赤ちゃんの1歳の誕生日とか、5歳の誕生日とか、どんどん作っていきたいですね(笑)。


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