知らないおっちゃん

わけも分からなくなって
人目も気にせずに泣いた
深夜1時を過ぎた
コンビニの裏手

暫くたって隣に
知らないおっちゃんがいてさ
姉ちゃんひとりきりなの
おっちゃんも同じよ
この世でいちばん優しい声だった

知らないおっちゃんは言った
愛とか僕もまだわからんよ
なぁ泣きたいなら泣けばいい
東京が冷たく見えるなら
おっちゃんが優しくしたるからさ
元気出しぃや

見知らぬ大人なんかには
頼らずに生きていくのが
当たり前のこの国じゃ
孤独なんて普通さ
だけど
君より少しね
ほんの少しだけ早く
この国に生まれちゃってさ
言えることが一つ

みんな鎧を着込んで生きている

知らないおっちゃんは言った
愛とか優しさなんて
自分が持てる分しか貰えないんだ
おっちゃんが優しく見えるなら
それは君が貰える分だから
持って帰りや

1人で歩けるようになって
鎧は分厚くなって
持ち物は人を殺せる武器と
冷たくなった心
戦場じゃないこの街で
そんなものじゃ何も守れない

知らないおっちゃんの言った
言葉は特別じゃなかった
泣きたいなら泣けばいい
東京が冷たく見えるのは
私だけだと思っていた

知らないおっちゃんは言った
愛とか僕もまだわからんよ
なぁ泣きたいなら泣けばいい
東京が冷たく見えるなら
おっちゃんが優しくしたるからさ
元気出しぃや

元気だしぃや

元気だしぃや
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