2002年の中島みゆき「
地上の星」以来、秋川雅史「
千の風になって」、すぎもとまさと「
吾亦紅」、秋元順子「
愛のままで・・・」など、ほぼ毎年のようにCD売上げが急増し、注目を集める“紅白”(出演)効果だが、今年はそういった話をあまり聞かない。それどころか、視聴率が前年割れだの、出場者が不足していて見所がないだの、とマスコミからのバッシングはヒートアップするばかり。本当に、紅白効果は薄れてしまったのだろうか。
ランキング表を見てみると、総合TOP10には、木村カエラ、いきものがかり、嵐、福山雅治の紅白歌唱4曲がランクイン、しかもそのいずれもが12月度(09/12/1〜28の集計)から上昇している。このような現象は、他のTV番組ではまず有り得ない。年末の他の特番などで何度か歌われ12月中に上昇していた楽曲でも、紅白であらためて観て、あるいは初めて観て楽曲が気になったという人が遥かに多いようだ。特に、木村カエラは着うた解禁から7ヶ月目にして初の月間1位となった。
これと並んで上昇著しいのが坂本冬美の「また君に恋してる」。同作は、中村あゆみ作詞・作曲のシングル「
アジアの海賊」のカップリングに収録されたフォーク系バラードだが、10月発売のJ-POPカバーアルバム(これを“E-POP”と呼んでいただければ幸いである)『Love Songs』のリード曲として徐々に注目され始め、年末の日本レコード大賞・金賞受賞と紅白出演で一気に上昇した。それまで、焼酎のCMや、音楽番組、アルバム記念のインストアイベント等で着実に浸透させて紅白での歌唱を確実にしつつ、紅白リハーサル時に“初の洋装”とスポーツ紙や情報番組で話題を集め一気に注目させ、更に年明けに「着うた」ダウンロードが伸びた事もしっかりネットや携帯ニュースに載せる、といったレコード会社側の制作・宣伝の連携プレーが、今回の急上昇に大きく繋がったように思う。単に、良いカバー曲を制作しても、CDを出して放置しているようではヒットなんて生まれないのだ。
デビュー11年目にして初出場となった嵐も、メドレー内で歌った4曲いずれもが上昇。「Believe」以外の3曲は08年以前に発表された旧作だ。他の旧作でも、アンジェラ・アキ「手紙〜拝啓 十五の君へ〜」や、レミオロメン「粉雪」が上昇しており、時代に関係なく“歌の力”が通じたということだろうか。
意外なところでは、17位のAKB48「RIVER」も急上昇。これまでは、生写真、ポスターなどのグッズやメンバー別握手会など、“特典ありき”で、CDヒットが先行してきたが、この結果から紅白出場によって楽曲自体が浸透したことが見て取れる。やはり、常連ファン以外をも惹きつける重要な番組なのだ。
以上のように、紅白歌合戦は、昨今の音楽の楽しみ方の多様化によって、その効果測定が難しくなってはいるものの、こうして歌詞検索数を見てみると、現在もなお様々な楽曲を再注目させる一大番組である、ということがよく分かる。最近は、「紅白?もう○年は観てないなあ」と、○の数をサバ読んでまで、個性をアピールする20代〜30代も見受けられるが、実際はこっそりチェックしている人が案外多いはず(笑)。なお、上位20曲だけでその人気曲のポイントを紅白に分けて計算してみると、紅組=220ポイントに対し、白組=160ポイントで、紅組が“歌の力”では勝利している。にも関わらず、実際は白組が5連勝中だ。いかに、一般視聴者を偏重した現在の審査方法が実情を反映していないか、ということについては問題提起しておきたい。