1990年にDREAMS COME TRUEがブレイクして以来、globe、Every Little Thing、Do As Infinity、day after tomorrow、AAA、いきものがかり、さらに最近では莫大な宣伝費でのプロジェクトのGIRL NEXT DOOR(匿名掲示板では様々なアンチ意見が飛び交っているが、最新曲「Freedom」を中立的な立場で聞いてみると、仰々しい軍隊風ダンサーも含めやりすぎな感じが面白いですよ(微笑))、と様々な男女混成グループ、とりわけ女性ボーカル+男性ミュージシャンという形式のアーティストがブレイクしてきた。
 これに加え、08年の"そばにいるね&ここにいるよ"ブーム以来、近年は男女コラボも激増したが、現状を調べるため、今回は男女混成アーティストの楽曲を分析してみた。

第13回:男女混成グループ&男女コラボTOP10 (2010年8月:前月データより分析)
テーマ
順位
総合
順位
アクセス
指数
タイトル
アーティスト
発売日
1位
9
100
Sunshine Girl moumoon 2010.5.12
2位
26
49.3
ありがとう いきものがかり 2010.5.5
3位
41
38.2
噛むとフニャン feat.Astro 佐々木希 2010.7.21
4位
52
36
YELL いきものがかり 2009.9.23
5位
54
35.6
遠くても feat.WISE 西野カナ 2009.3.18
6位
67
32.9
ブルーバード いきものがかり 2008.7.9
7位
80
28
Love Forever 加藤ミリヤ×清水翔太 2009.5.13
8位
81
27.1
FOREVER LOVE 清水翔太×加藤ミリヤ 2010.2.3
9位
89
25
ねぇ DREAMS COME TRUE 2010.6.30
10位
105
22.3
君の声を feat.VERBAL(m-flo) 西野カナ 2009.6.24
11位
125
20.8
366日 HY 2008.4.16
12位
140
20.4
アイデンティティ サカナクション 2010.8.4

 1位は、男女ユニットmoumoonの「Sunshine Girl」。一聴すると雑貨店限定で売ってそうなインディーズのボッサ系アーティストかと思われがちだが、実際はglobe、ELT、DoAs、ガルネクらと同じエイベックスのアーティスト。それ自体は意外だが、同社所属だからこそ、しっかりとブレイクできたのだろう(→後述)。
2位、4位、6位は2006年デビューのいきものがかり。彼らの楽曲は、どのような切り口でも、必ず何かしら上位入りしてくる。それだけ普遍的な楽曲が多く、幅広く支持されているということだろう。それにしても、年間TOP10級のメガヒット・アルバムを連発しているのに、いまだに"ポスト・いきものがかり"が生まれていないのが不思議。親しみやすくても、実は真似できないほど絶妙なバランスから成立しているからだろうか。

 3位には、佐々木希自身が出演してきたガムのCMソングに、6人組男性ヒップホップ・ユニットのAstroが新たな詞曲を加え、OLの日常ソングに仕上げたもの。サビの♪噛むとフニャンニャン〜のインパクトが強すぎて、Astroの良さが今一つ現れていないような気もするが(笑)、これを機にグループ単体でもブレイクすることを期待したいものだ。(しかし、彼らのLIVEの度に、佐々木不在の中、Astroが♪噛むとフニャンニャン〜 をやらされるのはいたたまれない・・・。)なお、同作品の限定DVD付きCDには振り付け教則ビデオも収録。宴会芸の予習にどうぞ。

  男女コラボは、3位の他に、4作入っているが、実際は西野カナと加藤ミリヤの、しかも半年以上前の旧譜が2曲ずつ分け合うという寡占状態。昨年10月に"コラボソングランキング"を分析したが、この同世代に絶大人気の二人を凌駕するほどの存在でなければ、コラボソングのヒットは難しいのかもしれない。

 11位、12位には、男女混成のバンドがランクイン。特に、12位のサカナクションは、ベースとキーボードが女性という5人組で、その女性ならではのクールネスがあるからこそ、"踊れるロック"として洗練されたサウンドが実現できている気がする。これまで大きなタイアップがない中で、アルバム最高位(オリコン調べ)は、105位→53位→8位→3位と順調に進めており、今後はこういった男性ボーカルを中心とした男女混成グループがブレイクすることにも期待したい。




「ありがとう」
いきものがかり

 ボーカルと作詞担当のYUKAと作曲・演奏担当の柾昊佑(まさき・こうすけ)からなる男女ユニット。2007年にシングル「Do you remember?」でメジャー・デビューして以来、お洒落で浮遊感のあるボーカルやサウンドが静かに人気ではあったものの、TOP30への壁は厚かった。
  しかし、今年5月から戦略ありきの快進撃が続く。勝負作となる7thシングルは、その前月末から大量OAされた資生堂『ANESSA』CMソングと確かに大型タイアップであるが、それに安住せず、シングル・ジャケットにCMと同じ蒼井優を起用、しかも"初回限定盤"として破格の500円で販売、そして着うたフル音源はシングル発売から6週間後に解禁、と徹底的に"パッケージ"のヒットにこだわった。その結果、狙い通りTOP10入りを実現し、その後、CMの2回目のOAピーク時期に合わせ、ようやく着うたフルを解禁し、これまでの期待感の高まりもあり、一気に着うたフルもTOP3入り。
  こうしてパッケージとデジタルの双方のヒットを十分に告知して7月のミニ・アルバム『SPARK』の発売に臨んだ。しかも、ここでも5つのタイアップ曲とYEN TOWN BAND「Swallowtail Butterfly」のカバーを収録し、訴求力を徹底的に高めてTOP10入りを確実に。そして、その前後から各メディアでもYUKAの可愛さにもスポットを当て、楽曲からキャラクターへと魅力を広げ、アルバム・アーティストへと育てた。
 ちなみに、大コケしたと言われた2008年の1stアルバムは8つのタイアップ付ながら、最高位32位。大抵のレコード会社なら、ここで諦めてしまうものの、才能を信じてリリースを続けるところもまたエイベックスらしい。


ここではデビュー1年内のアーティストを対象に、毎月注目のアーティストを"歌ネット・ルーキー"として紹介していく。ただし、「ルーキー」として選定するのは1アーティストにつき1度限りとする。


 今月は4ヶ月連続で新人部門TOP5入りしているGalileo Galileiに注目。彼らは、2007年に北海道稚内市で結成された4人組のバンドで、2ヶ月前のランキング注目作で"ヒットしそう"と予想した1stシングル「夏空」がオリコン最高位14位(週が異なればTOP10に入るレベルの初動売上)、累計約2万枚のスマッシュ・ヒットとなった。人気曲TOP5のうち、1位は野球アニメ『大きく振りかぶって』主題歌、2位はau「LISMO」CMソングとしてTVでお馴染みなので、今回は3位以降を見ていこう。
  3位の「花の雨」は初期レミオロメンを彷彿とさせるスピード感のあるロック。「ソーダ」「スカート」「キーホルダー」なんて青春とリンクしたキーワードが散りばめてあり(良い意味で)汗臭い。4位の「フリーダム」は、スピッツが得意としてきたような春を描いた爽快ソフトロック。そして5位の「胸に手をあてて」は、何かを探求しようとガムシャラな様子を描いたポップロックで、内容だけであればポルノグラフィティかスキマスイッチにも共通しているか。いずれも大ブレイクを果たしたアーティスト並みのポテンシャルを有するが、彼らの最大の個性は、無理にお洒落にせず、10代、北海道出身という純朴さを反映させた楽曲にあるだろう。是非ともロングレンジでゆっくりと飛躍していって欲しい。9月22日には、2ndシングルを発売予定。これまでのアルバム、シングルにはいずれも購入者特典としてLIVEチケット先行予約が出来たので、次回作も期待できるはず。


Galileo Galilei

Galileo Galileiのインタビューページ

順位
占有率
楽曲
初収録作品
発売日
1
68.3%
夏空 1stシングル 2010.6.9
2
17.0%
ハマナスの花 1stアルバム『ハナマスの花』 2010.2.24
3
4.2%
花の雨 1stシングル c/w 2010.6.9
4
1.8%
フリーダム 1stアルバム『ハナマスの花』 2010.2.24
5
2.7%
胸に手をあてて 1stアルバム『ハナマスの花』 2010.2.24



つのはず・まこと。1968年京都府出身。理学部修了→化学会社勤務という理系人生を経て、97年に何を思ったか(笑)音楽関係の広告代理店に転職。以降、様々な音楽作品のヒットに携わり、05年にT2U音楽研究所を設立。現在は、本業で音楽分析やCD企画をする傍ら、日経エンタテインメント!、共同通信などでも愛と熱に満ちた連載を継続中。「CDはもう無くなっちゃうよ」と弱い者イジメの如く切り捨てる業界外の評論家や、「CD、売れないもんね〜」と内輪で傷を舐め合っている業界内のレコードマンよりも、その狭間で「面白いものを作れば、まだまだ売れるじゃん〜」とフットワーク軽くブレークスルーしようと企んでいる人をマジリスペクト(笑)。提案型の人生って素敵ですね♪