前月の歌詞検索ランキングを掘り下げて分析し、キラっと輝くキラーチューン(名付けて"キラ☆歌")を発掘しようというこのコーナー。
今回は、サブタイトルのある楽曲に絞ってランキングを出してみた。

TwitterやFacebookなどネットコミュニティの隆盛もあり、ますます文字情報が氾濫する現代では、その中でいかに自分を印象付けるかが大きな課題だと言えるだろう。それは音楽界においても同様で、ある楽曲はコラボレーションで勝負したり、またある楽曲は動画サイトで面白可笑しいPVを公開したりと、大きく広がりを見せている。アーティスト性を無視したような行き過ぎた戦略はよくないが、創意工夫が促されるという意味で、楽曲の進化も期待できる。
そんな中で、最近、サブ・タイトルが印象的な楽曲が増えてきたような気がする。これまでも、メインタイトルが既存有名曲と被ったとしても、サブタイトルでそれ以上の意味を持たせたり、またタイアップ作品名をつけることで、音楽以外に興味のあるリスナーにも印象付けたりと、サブタイトルは様々な役割を果たしてきたが、最近はどんな傾向にあるのだろうか。
第23回:サブタイトル・ソングTOP10 (2011年6月:前月データより分析)
テーマ
順位
総合
順位
アクセス指数
メインタイトル
サブタイトル
アーティスト
発売日
1位
6
100.0
HELLO 〜Paradise Kiss〜 YUI
2011/6/1
2位
11
76.7
好きだよ。 〜100回の後悔〜 ソナーポケット
2011/1/26
3位
19
52.1
ラブレター。 〜いつだって逢いたくて〜 ソナーポケット
2011/4/27
4位
30
45.5
タカラモノ 〜この声がなくなるまで〜 ナオト・インティライミ
2010/5/19
5位
54
33.6
サムライハート (Some Like It Hot!!) SPYAIR
2011/6/8
6位
56
33.4
not alone 〜幸せになろうよ〜 SMAP
CD未発売
7位
95
25.5
Each Other's Way 〜旅の途中〜 EXILE
2011/2/9
8位
103
24.4
secret base 〜君がくれたもの〜
(10 years after Ver.)
本間芽衣子(茅野愛衣)・安城鳴子…
2011/4/27
9位
137
20.8
secret base 〜君がくれたもの〜 ZONE
2004/2/18
10位
147
19.9
サクラブ -桜、散る- Juliet
2011/4/13
次点
178
17.7
誰かのために -What can I do for someone?- AKB48
2007/3/7

 1位には、YUIの19作目となるシングルで、サブタイトルは主題歌となっている同名映画から付けられた。映画の内容も存分に考慮してか、パワフルかつガーリーな楽曲というのは彼女のシングルでは珍しい気がするので、セールス面での再浮上が期待できる。

 2位と3位には、1月発売の2ndアルバム『ソナポケイズム②』がロングヒット中のソナーポケットがランクイン。確かに、「好きだよ。」や「ラブレター。」だけなら、過去にも似たような楽曲があるだろうが、そこに「〜100回の後悔〜」や、「〜いつだって逢いたくて〜」が入ると、感情の度合いがぐんと高まることが分かる。それにしても、ソナーポケットは、第20回の「数字うたTOP15」でも4位&5位にランクイン、また別の機会に分析しようと考えている"句読点付きタイトルTOP10」でも今月なら1位&3位、さらにはグループ名も英語表記のSonar Pocketからカタカナ表記に変更するなど、レコード会社移籍後は、楽曲を届けることやメッセージを伝えることを非常に大切にしているように思える。彼らのストレートな歌ヂカラもさることながら、周囲のスタッフの理解度も相当なハイレベルではないだろうか。

 全体を見渡すと、4位のナオト・インティライミ「〜この声がなくなるまで〜」、6位のSMAP「〜幸せになろうよ〜」、7位のEXILE「〜旅の途中〜」、8位&9位のZONE「〜君がくれたもの〜」、次点のAKB48「-What can I do for someone?-」と、人気曲のサブタイトルはメインタイトルに比べてダイレクトで、また心の繋がりを感じさせるものが多い。震災以降、様々な人から人へのメッセージがクローズアップされる現代において、こういった傾向はますます顕著になりそうだ。ちなみに、9位のZONEは、8位のアニメ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない』のタイアップによるカバーに加え、歌詞通り"10年後"にZONEが再結成するという話題もランクアップの要因に。ふとしたキッカケに歌詞検索数が上昇するというのも、歌詞ランキングの面白さだろう。

 以上のように、サブタイトルは、リスナーをさらに惹きつける効果があることが分かった。今後、サブタイトルと数字と句読点とカギカッコとフィーチャリング表記を併用した楽曲が現れるのも時間の問題かも?(笑)




HELLO
〜Paradise Kiss〜

YUI


好きだよ。
〜100回の後悔〜

ソナーポケット


ラブレター。
〜いつだって逢いたくて〜
ソナーポケット

 2005年に結成された愛知県出身の5人組バンド。2010年8月11日にシングル「LIAR」でメジャーデビューし、本年6月8日発売の「サムライハート (Some Like It Hot!!)」が4作目となる。
  本作は、人気アニメ『銀魂』のエンディング曲で、DOESの「修羅」「曇天」並みに、和モノの戦闘を描いたアニメの内容にがっぷりハマったハスキーなボーカルやダイナミックな曲調が特徴的なので、本作でのブレイクも必至。
 所属事務所はドラマタイアップに強い研音、所属レコード会社はアニメタイアップに強いSMEグループだったら、売れて当たり前…と、とりわけネットユーザーから冷ややかに見られがちだが、 彼らの場合は、インディーズで培った実力ありきだから、色眼鏡で見るのは早計だろう。ONE OK ROCKの衝動と、UVERworldのギラギラ感を併せ持ったようなバンドゆえ、今後の更なる飛躍に大いに期待したい。


※ここではデビュー2年内のアーティストを対象に、毎月注目のアーティストを"歌ネット・ルーキー"として紹介していく。ただし、「ルーキー」として選定するのは1アーティストにつき1度限りとする。

 
 今月は、ルーキー部門7位のKGに注目した。彼は、東京都出身の男性ボーカリストで、07年よりソロ活動を開始、以降、09年4月のインディーズ・ミニアルバム『With You』から、10年2月のメジャーデビューを経て、今年5月25日の2ndフル・アルバム『We are one』まで、ミニアルバムとフルアルバムを2作ずつ発表している。彼の特長は、女性とのデュエット実績の多さで、有名どころを挙げただけでも、MAY'S、Tiara、May J.、NOKKO、AZU、菅原紗由理、Sowelu、リサ・ハリム、JAMOSA、DJ KAORIとその数は圧倒的。しかも、驚くべきは、着うたフルが10万件を突破した「いとしすぎて duet with Tiara」ほか、それらの殆どが週間TOP5入りするほどヒットしていることだ。やはり、どんな女声でも包みこむように落ち着いた歌声に定評があるのだろう。
  新作『We are one』でも、現在のところの人気曲は、別れ際ギリギリで引き返すドラマティックな歌詞とエスニック調のアレンジが興味深い「今も胸の奥で duet with DJ KAORI」や、JAMOSAの繊細な声も魅力的な王道ラブ・バラードの「片想い duet with JAMOSA」など、やはりストレートなラブ・デュエットに集中しているが、アルバム全体ではアリシア・キーズの「If I Ain't Got You」や、彼の優しい人柄が垣間見える「We are one」などソロ楽曲が良い味を出している。特に、後者は震災で傷ついた人から、恋愛や結婚について迷っている人まで、共に生きることをそっと誓ってくれるような、ささやかながら普遍的な愛を歌ったバラード。この時代、押し付けがましくない歌声や歌詞は多くの人に共感されるのではないだろうか。今後は、ソロ楽曲への人気にも期待したい。


順位
占有率
楽曲
初収録作品
発売日
1
15.6%
いとしすぎて duet with Tiara 1stフルAL『Songs of love』
2010.10.20
2
11.5%
片想い duet with JAMOSA 2ndフルAL『We are one』
2011.5.25
3
10.4%
どんなに離れても duet with AZU 1stシングル
2010.9.29
4
9.2%
今も胸の奥で duet with DJ KAORI 2ndフルAL『We are one』
2011.5.25
5
7.2%
また出逢えたなら... duet with HanaH 1stフルAL『Songs of love』
2010.10.20
6
7.0%
このまま2人で duet with Lisa Halim 2ndフルAL『We are one』
2011.5.25
7
5.9%
誰よりも duet with 菅原紗由理 1stフルAL『Songs of love』
2010.10.20
8
5.8%
君に言えなかった想い duet with May J. 1stミニAL『Love for you』
2010.2.24
9
3.9%
With You 〜君といつまでも〜feat.MAY'S インディーズAL『With You』
2009.4.8
10
3.2%
叶わない恋でも... duet with 滴草由実 1stミニAL『Love for you』
2010.2.24
         
 


つのはず・まこと。1968年京都府出身。理学部修了→化学会社勤務という理系人生を経て、97年に何を思ったか(笑)音楽関係の広告代理店に転職。以降、様々な音楽作品のヒットに携わり、05年にT2U音楽研究所を設立。現在は、本業で音楽分析やCD企画をする傍ら、日経エンタテインメント!、共同通信などでも愛と情熱に満ちた連載を継続中。Twitterは@t2umusic
6月8日にセルフカバーのコンピレーションとしては初となる企画CDの男性編『PORTRAIT BLUE』と、女性編『PORTRAIT RED』が発売となります。個人的にオススメは、ジャジーな布袋寅泰「POISON」と、ラテン色の強まった中森明菜「ミ・アモーレ」の各ニュー・バージョンでしょうか。既に100枚近くのコンピに入っている(?)であろう岡本真夜「TOMORROW」も、本作ではアコースティック・バージョンで新鮮。いずれも歌詞の良さがよく分かりますので、よろしければどうぞ♪