1位は西野カナの「私たち」。彼女は、"着うたの女王"として大ブレイクを果たし、その経緯から説明的な長文タイトルが多いと思いきや、意外にも「君って」「もっと・・・」「Distance」など短文タイトルで端的に示したものが目立つ。本作も"私たち"と聞けば、「あー、きっと女の子同士の友情ソングだろうな」というのがすぐに想像できるし、「会いたくて 会いたくて」や「たとえ どんなに・・・」など短文タイトルじゃない場合も、非常に分かりやすい。考えてみれば、着うたに強いという女性ボーカリストの中で、この分かりやすさがズバ抜けているのも、彼女の人気の秘訣なのかも。
2位のいきものがかりの場合は、「ありがとう」「SAKURA」など圧倒的に短文タイトルが多い若手アーティストだが、彼らの場合は幅広い世代に向けた歌謡曲全"肯定"なスタンスゆえに、曲調だけでなくタイトルも短いのが多そうだ。また、例えばアルバム収録曲で比較的長文タイトルを探しても、「KISS KISS BANG BANG」や「センチメンタル・ボーイフレンド」など、まるで80年代アイドルのようなキャッチーなタイトル。西野カナのように明解さは必ずしもないものの、この「ハルウタ」しかり、歌詞を読んでみたいと思わせるタイトルが多いように思う。
5位と12位に今月の歌ネット・ルーキーにもなっている今年デビューの家入レオがランクイン。発売された2枚のシングルで、「サブリナって何のこと?」と気にさせたり、夢追いを"Shine"という言葉で象徴的に示したり、タイトルのセンスもヒットに貢献しているのではないだろうか。少なくとも、今のアイドル・グループとは大きく差別化できているだろう。
そして、今回のテーマで最も多くの楽曲がランクインしているのが5月に20周年ベストを発売したMr.Children。2001-2005の"micro"盤も、2005-2010の"macro"盤も共に5文字以下のタイトルが、約半数となり、明らかに短文タイトルが多い。これもミスチルの歌が名作映画、名作小説を想起させるのは、もちろん作品の完成度の高さがあってこそだが、このどこか余韻を感じさせるタイトル・センスも大いに奏功しているのではないだろうか。(ちなみに、桜井和寿がカラオケの十八番と様々なメディアで公言しているaikoの「カブトムシ」や中島みゆきの「糸」も短文タイトルで、両者とも短文タイトルが多い。これも必然的?)
前回、ソナーポケットやももいろクローバーZに代表されるように、面白い長文タイトルの旬なアーティストが増えているように述べたが、今回のMr.Childrenにより短文タイトルで名作感があらためて認識されたことで、今後は長短の両極が増えるような気がする。とはいえ、「母」「山」「川」「道」「歩」「橋」など漢字1文字シリーズは北島三郎が大半を押さえているので、注意(?)が必要だ。(ご丁寧に『"一文字シリーズ"』という企画CDまで発売されている。誰か対抗して英単語シリーズもやって欲しいなぁ〜。)