前月の歌詞検索ランキングを掘り下げて、キラっと輝くキラー・チューン(名付けて“キラ☆歌”)を発掘しようというこのコーナー。今月はアニメ関連人気曲に注目してみた。
「新人のシングルはアイドルの多種類販売以外ヒットしない」という半ば諦めムードも漂う音楽業界の中で、相変わらずヒットを飛ばしているアニメ関連の楽曲。その多くがイベントに依存せずともシングルセールスの上位常連になるアーティストや人気ブランド(「IDOLM@STER」や「うたの☆プリンスさまっ」など)であるというのは、それだけファンとの信頼関係が築けているということだろう。
ただ、その一方でアーティストやキャラクターが先行しすぎて、ヒット「CD」なのにヒット「曲」として世に広がっていないのが多いのも現状だ。そこで、今回はそんなアニメ関連のタイアップを持ちつつも、歌詞検索で興味をもたれファンを広げている真のヒット「曲」に迫った。
第47回:アニメ関連人気曲TOP10 (2013年6月:2013年5月のデータより分析)
テーマ
順位
総合順位 アクセス指数 楽曲名 アーティスト名 タイアップアニメ
発売日
1位 2 100 RPG SEKAI NO OWARI クレヨンしんちゃん(映画) 2013.5.1
2位 16
/32
28 Preserved Roses T.M.Revolution×水樹奈々 革命機ヴァルヴレイヴ 2013.5.15
3位 43 10.4 あいうえおんがく GReeeeN LINE TOWN 2013.6.19
4位 46 10.2 マジLOVE2000% ST☆RISH うたの☆プリンスさまっ♪ 2013.4.24
5位 60 8.3 恋は渾沌の隷也 後ろから這いより隊G 這いよれ!ニャル子さん 2013.4.24
6位 69 7.6 CORE PRIDE UVERworld 青の祓魔師 2011.5.11
7位 80 6.6 偏愛の輪舞曲 GRANRODEO カーニヴァル 2013.4.17
8位 82 6.6 愛詞(あいことば) 中島美嘉 宇宙戦艦ヤマト2199 2013.5.22
9位 86 6.5 赤い靴 Salley トリコ 2013.5.29
10位 101 5.7 儚くも永久のカナシ UVERworld 機動戦士ガンダム00 2008.11.19
次点 102 5.7 REASON ゆず HUNTER×HUNTER 2013.1.9
※テーマ2位の「Preserved Roses」は、アニメバージョン(16位)と、フルバージョン(32位)の合計で指数を算出した。

 テーマ1位は、映画版『クレヨンしんちゃん』主題歌となっているSEKAI NO OWARIの最新シングル。彼らはバンドというスタイルでありつつ2種類の異なる内容を収録したDVD付きシングルをリリースしたり、巨大ショッピングモールのフリーLIVEに登場したり、そして今回のようにアニメソングを担当したりと、とにかく新規ファンの獲得に貪欲(微笑)で、アーティスト自らヒット戦略家として闘っている様子がありあり。当然、ポップスファンにもロックファンにも馴染める音楽性があるのが大前提だが、「バンドは売れなくて結構」といったひと頃のイメージをポジティブに覆しているのが見事。メジャー2ndアルバムは、20万枚突破も大いに期待できる。
 全体を見ると、上位10曲のうち、声優中心で構成されるのは4位、5位、7位の3曲と、2位の水樹奈々のT.M.Revolutionとのコラボ作。アニメファンの方は、これを少ないと見るかもしれないが、声優系アーティストの一般認知度の低さからすれば、かなり善戦していると言えるだろう。実際、5位の「後ろから這いより隊G」の毎回アグレッシブな作風は、より多くのガールポップファンにも聞いて欲しいところ。作詞を担当する畑亜貴の中毒性を重視したかのような言葉の使い方には毎回舌を巻く。

 一般アーティストでは、男性アーティスト4組(+次点のゆず)に対し、女性アーティスト2組で、アニメ人気曲では男性優勢となっている。特に、UVERworldはいずれも2年以上前の楽曲で、彼らのアニメタイアップとの相性の良さが分かる。ソニーはアニメ枠を多数持ってはいるものの、毎回ヒットが確約されているのは、T.M.R、ポルノグラフィティ、UVERworldなど意外と少ない。やはり、ファンも買うに値するものかどうか見極めているのだろうし、そのタイアップのあり方も、再検討すべき時期なのかもしれない。他の注目作では、9位の男女ユニットSalleyのデビュー曲だろうか。アニメソングというよりも、いかにもFMディレクター達がこぞって放送でかけたくなるようなクールで伸びやかな女性ボーカルなので、今後アルバム発売まで大きく飛躍しそう。いずれ「歌ネット・ルーキー」の方で登場することは間違いないだろう。

 以上のように、アニメソングと言えど、結局はアニメファンにも一般の音楽ファンにも関心を持たれるような、ポピュラリティーやデリカシーがなければヒット「曲」には結びつかないということが読み取れた。ドラマタイアップでも大半が配信ヒットで留まってしまいがちな現在、CDも配信もそして歌詞検索でもヒットする可能性のあるアニメタイアップだからこそ、より大きなヒットが出ることを今後も期待していたい。




RPG
SEKAI NO OWARI


Preserved Roses
T.M.Revolution×水樹奈々



あいうえおんがく
GReeeeN

 まず、最初にこの組み合わせを考えついた方に、勝手ながら敬意を表したい。もともと、TMR西川の声とアニメソングの相性は抜群だし、水樹もTMR御用達の浅倉大介の攻めのメロディーを得意としそうな張りのある声だし、答を出されたら、「こりゃヒットするよね」と多くの人が言いそうだが、実現にはレコード会社枠も二人のキャリアも超える必要があった為、これはまさに「コロンブスの卵」型のコラボレーションだろう。
 そして、楽曲面も3分29秒とコンパクトでありながら、水樹と西川が手を取って闘いに挑んでいくような躍動的なナンバーで完璧。世間には、どちらの方が上手いとか大人気なく (笑)歌唱を張り合うひどいデュエットもあるが、これは西川がベテランの執事のように水樹を支えているのが良い感じ。
 CDのカップリングには、西川、水樹の片方ずつを抜いた2バージョンも収録されていて、双方の実力もよくわかる。(筆者個人は、1人だけで全部を歌いきったバージョンもいずれ聞いてみたい。)ともあれ、紅白歌合戦などで歌われたら、アニメを見ていないもっと小さな子供から、90年代ポップスにハマっていた30〜40代まで広がって再浮上しそうなポテンシャルのある、まさにヒット曲らしいヒットCD。


ここではデビュー2年内のアーティストを対象に、毎月注目のアーティストを"歌ネット・ルーキー"として紹介していく。ただし、「ルーキー」として選定するのは1アーティストにつき1度限りとする。

 今月は、4位にランクインした7人組のダンス・ボーカルグループ(正確には、ボーカル&パフォーマンスグループ?)のGENERATIONS from EXILE TRIBE(以下、GENERATIONS)に注目。5位のケラケラと共に月末まで接戦だったが、旧作にも関心を持たれたGENERATIONSに軍配が上がった。彼らは、『EXILE Presents VOCAL BATTLE AUDITION』の第2弾でファイナリスト10人に残った中でとりわけ若いボーカリスト2人とEXILEの劇団や学校で

可能性を見出された若手ダンサー5人から構成され、実力を持ちつつもデビューに至るまでのフリーライブでのパフォーマンスの積み重ねから、業界内外で大きな期待を寄せていた。その甲斐あってデビュー作「BRAVE IT OUT」はオリコン初登場3位と、昨今の新人ではトップクラスのスタートを切った。ただ、その当時は、優秀な若い子らがシャカリキになって頑張っているなぁという感じで、歌もダンスも上手いけれど、なんだか見ていてこちらにも緊張が伝わってくるほどだった。
 しかし、3rdシングル「Love You More」のような甘いバラードで、その胸キュン女子激増(笑)なメロウな歌詞もさることながら、その世界をしっかり表現しつつ、彼らの若さも手伝ってピュアな感じに仕上がっていることが、本作の好調ぶりに繋がったのではないだろうか。ボーカル2人が歌い分けつつも、自然に歌い繋いでいる様子も上手いなあと感心。(だから、聞き手にも感情が途切れることなく伝わるのだろう。)今後、若さ以外での彼ららしい引き出しがどのように出るかにも期待。個人的には、一人だけデビュー当時から20歳を超え(その為、「メンバー全員10代」という触れ込みを使わず)、日米ハーフで巨体の関口メンディーのキャラが炸裂した時に、(別の意味で)ファン層が広がりそうな予感。
2
順位 占有率 曲名 初収録作品
発売日
1 66.7% Love You More 3rd Sg 2013.5.15
2 11.8% ANIMAL 2nd Sg 2013.1.30
3 5.1% BRAVE IT OUT 1st Sg 2012.11.21
4 5.1% 片想い 1st Sg c/w 2012.11.21
5 4.6% My Eyes On You 3rd Sg c/w 2013.5.15
6 2.7% 今、風になって 2nd Sg c/w 2013.1.30
7 1.8% ECHO 1st Sg c/w 2012.11.21
8 1.5% LET ME FLY 1st Sg c/w 2012.11.21
9 0.6% ANIMAL(English version) 3rd Sg c/w 2013.5.15




つのはず・まこと。1968年京都府出身。理学部修了→化学会社勤務という理系人生を経て、97年に何を思ったか(笑)音楽関係の広告代理店に転職。以降、様々な音楽作品のヒットに携わり、05年にT2U音楽研究所を設立。現在は、本業で音楽分析やCD企画をする傍ら、日経エンタテインメント!、共同通信などでも愛と情熱に満ちた連載を継続中。Twitterは@t2umusic
日経エンタテインメント!7月号では、『女性ソロ冬の時代のブレイク術』として、きゃりーぱみゅぱみゅとmiwaのスタッフインタビューと分析文、更に平成25年間の女性ソロのブレイク系譜について6pでまとめて見ました〜。逆境の中だからこそ生まれるドラマを読み取ってもらえれば嬉しいです。なお、先月号で終了した「つのはず誠の音楽チャート診断」は、p101の音楽コーナーにて「つの
はず誠のヒットは複眼で探せ!」として分析部分に限定して継続しております。よろしければどうぞ♪