前月の歌詞検索ランキングから、キラっと輝くキラー・チューン(名付けて“キラ☆歌”)を発掘しようというこのコーナー。今月は、久しぶりに映画タイアップ人気曲を分析してみた。ちなみに、前回(09年10月度)の記事はこちら

  昨年末以来、邦画の『カノジョは嘘を愛しすぎてる』とディズニー洋画の『アナと雪の女王』の関連楽曲がそれぞれ複数のヒット曲を放っている。どちらも、主題歌のみならず、劇中歌が多く映画全体に音楽的要素が強いことも、CDに留まらず、ダウンロードやカラオケ、そして歌詞検索のヒットに広がっているようだ。それでは、他の主題歌はどうなっているだろうか。
第60回:映画タイアップ人気曲TOP10 (2014年7月:2014年6月のデータより分析)
テーマ
順位
順位
アクセス指数
タイトル
アーティスト
タイアップ映画名
発売日
1位 1 100.0 Let It Go〜ありのままで〜(エンドソング) May J. 『アナと雪の女王』 2014.3.26
2位 3 42.6 RPG SEKAI NO OWARI 『クレヨンしんちゃん バカうまっ!B級グルメサバイバル!!』 2013.5.1
3位 10 23.8 君に届け flumpool 『君に届け』 2010.9.29
4位 29 13.8 明日も MUSH&Co. 『カノジョは嘘を愛しすぎてる』 2013.12.4
5位 43 12.1 366日 HY 『赤い糸』 2008.4.16
6位 50 11.1 レット・イット・ゴー〜ありのままで〜 松たか子 『アナと雪の女王』 2014.5.3
7位 51 11.0 スターライトパレード SEKAI NO OWARI 『今日、恋をはじめます』 2011.11.23
8位 54 10.5 TSUKI 安室奈美恵 『抱きしめたい-真実の物語-』 2014.1.29
9位 79 8.2 The Beginning ONE OK ROCK 『るろうに剣心』 2012.8.22
10位 82 8.1 最愛 KOH+ 『容疑者X の献身』 2008.10.1
11位 92 7.8 放たれる Mr.Children 『青天の霹靂』 (配信のみ)
12位 93 7.8 ビリーヴ シェネル 『BRAVE HEARTS 海猿』 2012.7.4
13位 96 7.7 ちっぽけな愛のうた 小枝理子&小笠原秋 『カノジョは嘘を愛しすぎてる』 2013.12.18
※総合TOP100内となる上位13曲までを表示した。

 表を見ると、総合TOP100に入った映画タイアップ曲は13曲。09年調査時の10曲よりは多少増えているものの、さほど顕著ではない。一方、ドラマタイアップの方は、総合TOP100内に15曲と映画に比べやや多い程度。しかし、ドラマ主題歌は1クール3ヶ月ごとに15〜20曲量産されるのに対し、映画の方は大規模な興行は年に十数本程度だと考えると、映画主題歌のヒット確度はかなり高いと言えるだろう。

 テーマ別順位を見ると、1位と6位に『アナ雪』の主題歌と劇中歌がそれぞれランクイン。この2曲、最初と最後の歌詞と、ラストの終わり方が異なるので、カラオケで選択する際には注意が必要(微笑)。2位は、映画『クレヨンしんちゃん』の主題歌で、このタイアップがキッカケとなり、今では幼稚園児までも歌えるほどの真のスタンダードヒットとなっている。確かに、お友達同士で手をつないで歌いながら歩く様子が目に浮かぶほど、この歌はタイアップ側のニーズにバッチリ答えている。だからこそ長くヒットしているのだろう。

 3位は、flumpoolの同名映画主題歌、5位は、ドラマと映画が連動した作品『赤い糸』の主題歌がそれぞれランクインしており、なんと6位までの大半がロングヒットということが分かる。また、この中では通常のヒット程度に見える4位のMUSH&Co.『明日も』も、非アイドルという逆境真っ只中にいる大原櫻子のブレイクに貢献しているので、その功績は大きい。そう考えると、映画タイアップの影響力は以前より大きくなっていると言えそうだ。

 また、TOP10中5作が恋愛映画となっているのも興味深い。しかも、アニメの『アナ雪』やヒーローものの『海猿』のようなメガヒット作ではない。やはりラブストーリーを盛り上げるような楽曲であれば、映画の興行成績にさほど関係なくヒットに結びつきやすいということだろうか。(10位と12位も恋愛映画には分類されないものの、楽曲自体はラブ・バラード。) しかも、重厚なスローバラードから軽快なアッパーチューンまで様々な曲想が揃っているのも特長的。

 但し、MUSH&Co.以外は、既に実績のあるアーティストとなっている点は、ドラマ以上に新人がブレイクしづらい状況となっているようだ。今後も、好況が続きそうな映画界なだけに、タイアップの方も保守的なアーティストに頼ることなく、新人や隠れた名曲を果敢に取り上げて、ヒット楽曲の量産に貢献していただければと、映画関係者や広告代理店等ブッキング担当の方々には是非ともお願いしたいものだ。




Let It Go 〜ありのままで〜
May J.


RPG / SEKAI NO OWARI

君に届け / flumpool

 本年5月24日に配信で発表された楽曲(今回も、着うたはなく、フル音源のみの配信)。劇団ひとりが原作・監督・脚本をつとめ、大泉洋、柴咲コウとのトリプル主演となるコミカルな映画『青天の霹靂』の主題歌だが、ミスチルが映画公開CMで流れるだけで、「あぁ、この映画コミカルだろうけど、ラストはホロリとさせるんだろうな」と思わせるのが凄い。事実、曲全体を聞いてみると、時をこえ愛が育まれている様子が描かれた全篇日本語のバラード。桜井がファルセットを多用して歌っていることで、母性を感じさせるのも聞きどころだろう。
 幅広い世代に受け入れられそうな楽曲なだけに、配信限定で発売されるのが残念。確かに、メチャクチャ大ヒットが見込まれる映画でもないし、同じ週にはCDでAKB48が発売されており、オリコン1位を逃したりしたら、様々な世論を引き起こしそうだが、「ミスチルだけは絶対に買う」というファンも多い信頼されるアーティストなので、今後もシングル発売を続けてもらいたいものだ。ちなみに、配信は、iTunesで2週連続1位となったものの、レコチョクでは松たか子と氣志團に阻まれて最高3位に留まった(AKB「ラブラドール〜」も配信最高位3位。)


ここではデビュー2年内のアーティストを対象に、毎月注目のアーティストを"歌ネット・ルーキー"として紹介していく。ただし、「ルーキー」として選定するのは1アーティストにつき1度限りとする。


  今月は、ルーキー7位にランクインしたSilent Sirenに注目。彼女たちは、2010年に結成したガールズバンドで全員が読者モデルの活動を行っていることが話題。一部のメディアや厳しいモデル業界のプロからは“読者モデルなんて、ちょっと可愛くて登録すればノーギャラでも簡単になれるんでしょ”と批判されがちで、尚且つ音楽ヘビーリスナーからは“モデル兼業で、音楽は中途半端でしょ??”と穿った見方をされがちで、実際に話題性が高かった割に、12年末の1stシングル「Sweet Pop!」、2ndシングル
「stella☆」とセールスの急落傾向が続いていた。それが、3rdシングル「ビーサン」、4thシングル「I×U」あたりで、ただ可愛いだけじゃなく、より元気だったり、切なかったりと、感情的な部分が前面に押し出されるようになり、多くの10代・20代女性からの共感を得るようになったのではないだろうか。勿論、それらのシングルは5種類で発売したこともCDセールス高初動の要因となっているが、シングル同レベルの他の女性アイドルと彼女たちはアルバムの売上が大きく異なっている。2ndアルバム『31Wonderland』はオリコン最高位4位、1stアルバムも同時期にTOP300に再浮上と、アルバムがちゃんと売れており、これは彼女達の音楽面も支持されている何よりの証拠だろう。
  そして、最新シングル「ラッキーガール」も、サビが実に憶えやすく中毒性の高いポップロックチューン。今後、日々練習を欠かさないというバンドの魅力がより浸透していけば、唯一無二のアーティストとしてヒット連発に繋がりそうだ。
順位 アクセス比率 タイトル 初収録作品
発売日
1 18.6% ラッキーガール 5th Sg 2014.6.18
2 7.2% ビーサン 3rd Sg 2013.8.14
3 6.6% I×U 4th Sg 2013.10.30
4 5.7% stella☆ 2nd Sg 2013.2.20
5 3.24% 恋花 5th Sg c/w 2014.6.18
6 3.23% ぐるぐるワンダーランド 2nd AL『ぐるぐるワンダーランド』 2014.2.12
7 2.9% 1st AL 『Start→』 2013.4.10
8 2.6% LOST.W 5th Sg c/w 2014.6.18
9 2.22% LOVE FIGHTER ! 4th Sg c/w 2013.10.30
10 2.19% Ring Ring Ring 2nd AL『ぐるぐるワンダーランド』 2014.2.12
 


つのはず・まこと。1968年京都府出身。理学部修了→化学会社勤務という理系人生を経て、97年に何を思ったか(笑)音楽関係の広告代理店に転職。以降、様々な音楽作品のヒットに携わり、05年にT2U音楽研究所を設立。現在は、本業で音楽分析やCD企画をする傍ら、日経エンタテインメント!、共同通信などでも愛と情熱に満ちた連載を継続中。Twitterは@t2umusic
 最近は、クリス・ハートのカバーアルバム『Heart Song II』をよく聞いています。昨年のデビュー作が25万枚売れていて、何をいまさら・・・と言われるかもしれませんが、カバー第2弾は、中島みゆき「」、秦基博「アイ」、藤田麻衣子「手紙〜愛するあなたへ〜」、斉藤和義「歩いて帰ろう」などなど、記録のメガヒットよりも長く愛される記憶の名曲を多数カバーしているせいか、心にジワジワと響きます。それでいて、ドリカムの「うれしい!たのしい!大好き!」あたりは、黒人歌手ならではのグルーブ感も持ち合わせていて、本当にこの人多才。おそらくJeff Miyaharaプロデュースというのも大きいのでしょうね。絶対に第1弾よりもオススメです♪