第69回:普遍的タイトル人気曲TOP20

ありふれたタイトルの曲でも人気が出るアーティストとは!?

 前月の歌詞検索ランキングから、キラっと輝くキラー・チューン(名付けて“キラ☆歌”)を発掘しようというこのコーナー。今月は、普遍的なタイトルの人気曲に着目してみた。

 第64回第51回で「“タイトル勝ち”人気曲」を分析した結果、SEKAI NO OWARI、ゲスの極み乙女。、RADWIMPS、クリープハイプ、ONE OK ROCKなどのバンドが、そのタイトルや歌詞からインパクトのある世界観をアピールしていることがあらためて分かったが、それでは逆に、普遍的なタイトルでも人気曲を多数出しているアーティストはいったい誰なのだろうか。タイトルがありふれていることで、センスが乏しいように思われるかもしれないが、それでもヒットするということは、やはり何か光るものがあるに違いないのだ。以下、分析していこう。

第69回:普遍的タイトル人気曲TOP20(2015年4月:2015年3月データより分析)

テーマ
順位
総合
順位
アクセス指数
タイトル
アーティスト
別アーティスト例
発売日
1位 4 100.0 花束 back number 北乃きい、徳永英明 2011.6.22
2位 5 85.9 Happiness シェネル AI、タケカワユキヒデ 2014.11.19
3位 9 57.7 ヒロイン back number SOLIDEMO 2015.1.21
4位 10 55.6 R.Y.U.S.E.I. 三代目J Soul Brothers
from EXILE TRIBE
コブクロ、吉田拓郎 2014.6.25
5位 16 44.6 ビリーヴ GReeeeN 西野カナ 2015.2.25
6位 17 42.0 EXILE GReeeeN 2007.2.14
7位 19 38.0 キセキ GReeeeN コブクロ 2008.5.28
8位 22 35.6 Sakura 森山直太朗、コブクロ、三代目JSB、河口恭吾 2015.2.25
9位 23 35.4 花火 三代目J Soul Brothers
from EXILE TRIBE
Mr.Children、浜崎あゆみ、aiko 2012.8.8
10位 25 34.2 O.R.I.O.N. 三代目J Soul Brothers
from EXILE TRIBE
中島美嘉、米米CLUB 2014.12.10
11位 27 31.0 C.O.S.M.O.S.
〜秋桜〜
三代目J Soul Brothers
from EXILE TRIBE
山口百恵 2014.10.15
12位 28 29.9 ありがとう FUNKY MONKEY BABYS いきものがかり、SMAP 2013.2.27
13位 30 29.5 サンキュー。 大原櫻子 AAA、岩崎宏美 2014.11.26
14位 31 29.1 Best Friend Kiroro 西野カナ、SMAP 2001.6.6
15位 32 28.9 好き 西野カナ DREAMS COME TRUE、香西かおり 2014.10.15
16位 34 28.1 back number 松山千春 2012.3.7
17位 39 25.9 YELL いきものがかり コブクロ、HY 2009.9.23
18位 42 25.2 Darling 西野カナ V6、沢田研二 2014.8.13
19位 46 24.5 愛し君へ GReeeeN 森山直太朗 2013.8.21
20位 48 23.4 奇跡 コブクロ GReeeeN 2015.3.4
※筆者の独断で、「読み方」において、同名で異なる有名曲が比較的容易に思い浮かぶものをピックアップした。
(つづりやサブタイトルの有無、「ブ」と「ヴ」の違いなど細かい読み方は気にしないこととする。)

三代目JSB、GReeeeN、コブクロ、back number、西野カナ・・・
普遍的なタイトルとは対照的に、希有な才能を発揮する逸材ばかり!

 1位はback numberの「花束」。彼らは、他にも3位に「ヒロイン」、16位に 「恋」と3曲ランクインしている。確かに、筆者と同世代の中高年にも彼らのファンは少なくなく、この馴染みやすいタイトルも寄与しているだろう。タイトルから入って、実際に聴いてみると、メロディーラインや歌詞に大いに共感するという構図だ。その一方で、「高嶺の花子さん」のように臆病系を象徴するユニークなタイトルも多いのが、彼らの大きな魅力は「言葉」や「歌詞」と言われる理由なのだろう。

 他にも、このランキングで多数挙がっているのが、三代目J Soul Brothers、GReeeeN、そしてTOP20中は1曲だが、別アーティスト例の同名異曲として多数挙がっているコブクロと、いずれもバンド以外の男性ユニットばかりというのが興味深い。特に、三代目JSBの場合は「○.○.○.○.○.」というタイトルで、春夏秋冬を象徴するタイトルのシングルをリリースするという明確な戦略もあり、11位までに最多の4作がランクインしている。

 いずれのアーティストも、たとえタイトルが同じだとしても、パフォーマンス力や楽曲の世界観が抜きんでていることで、そのスター性をアピールできるというのが共通しているようだ。つまり、たとえタイトルがありふれていたとしても、実際に楽曲を聴いてみたら、その個性がしっかりあるという、アーティストやスタッフサイドの自信の表れではないだろうか。

 女性アーティストは、ユニークなタイトルでも少なめだったが、この普遍的なタイトルでも少なめ。このこと自体が「浮いてしまわないようにしつつ、それでいてオシャレな自分も見せたい」という女性のファッションセンスと共通しているようで面白い。その中で、西野カナが別アーティストの同名異曲の多さも含め突出している。やはり彼女の場合も、ファッション・リーダーというキャラクター、年々滑らかになっている歌唱、歌詞における徹底した場面設定などで唯一無二の世界観を醸し出していることが大きな強みだろう。特に、昨夏発表の「Darling」が約半年間にわたってダウンロードTOP10するほどのロングセラーになってからは、彼女への批判が激減したように思える。その明解さ自体が、実は簡単にたどり着けない個性ということに多くの人が気付いたのかもしれない。

 以上のように、普遍的なタイトルでも男性バンドやユニットが多勢になることが分かった。こうして表をざっと見てみると、若いアーティストも少なくないのに幅広い世代が聴いているのが想像できる楽曲の多さにも驚く。そう考えると、やっぱり楽曲のタイトルって多くの人の心を開く為にもとっても大切なんだな、とあらためて教えられた。

第5位:GReeeeN「ビリーヴ」

 2015年、2月18日から3週にわたって「OHA☆YOU」「ビリーヴ」「タンポポ」と立て続けに楽曲を配信したGReeeeNの新曲第2弾(4月現在、CDはいずれも未発売)。その中で本作は、日本赤十字社“平成27年はたちの献血キャンペーンソング”となっており、CM中でフィギュア・スケートの金メダリストの羽生結弦選手や、献血を必要としている患者さん達がGReeeeNの声に合わせエア・ボーカルを披露することでも話題だ。
 しかし、3作のうちで突出して本作がヒットしているのは、単なる話題性だけではないだろう。前半、静かに語りかけるパートはこれまでの作品と比べかなり低音でその分じわじわと胸に沁みるし、サビで「自分で決めた道」を信じていこうと誓う部分の高音がより高らかに響く。こうしたドラマティックな曲想ゆえ、歌詞の内容が印象的に聴こえているリスナーも多いのではないだろうか。
 なお、GReeeeNも審査をつとめたオーディションから選ばれた4人のティーンによるwhiteeeenが、デビュー曲「愛唄〜since 2007〜」として彼らの名曲をカバーして、現在ヒット中だ。彼女たちもまた覆面アーティストとしてメディアには一切登場しないが、この2組のコラボも今後有りそうで楽しみ。

ここではデビュー2年内のアーティストを対象に、毎月注目のアーティストを"歌ネット・ルーキー"として紹介していく。ただし、「ルーキー」として選定するのは1アーティストにつき1度限りとする。

ルーキー部門第4位:[Alexandros]

 今月は、4位の [Alexandros]に注目。彼らは、大半の楽曲を手がけるボーカルの川上洋平を中心に結成され、2010年より現メンバーで[Champagne]というバンド名で活動を始めた。同年にアルバム『Where's My Potato?』にてインディーズ・デビュー。ハードなロックサウンドと、英語が大半を占める歌詞、衝動的で独特な高音ボーカルが徐々に話題を呼び、ロック系に強いCDショップや媒体で絶大な支持を受けてきた。
 その一方で、朝の情報番組『めざましテレビ』や『ZIP!』にも積極的に出演していたのが、他のインディーズ系バンドには珍しい強み。現在全員が30代ということからも、中高年の番組スタッフにも訴えかける骨太なサウンドだったのも大きいだろうが、TVという場に出てもエピソードや楽曲のアピールポイントを気さくに話せるキャラクターもカッコ良いと話題だった。
 その矢先、2014年3月、シャンパーニュ地方ワイン生産同業委員会からの要請もあって、初の武道館公演を機に、バンド名を[Champagne]から[Alexandros]に改名。このことがより多くの人に伝えようというバンド活動の良い反動になったのか、以降の作品はさらにメロディアスな部分や日本語の多い楽曲も発表され、今回のメジャーデビュー作「ワタリドリ」/「Dracula La」の自己最高のヒットにも繋がったと思われる。
 音楽では唯一無二のカリスマ性を持ちつつも、トークでは気さくな所も見せるというエエトコドリの二面性で、今後更にブレイクすることは間違いない!

順位
アクセス
比率
タイトル
初収録作品
発売日
1 23.9% ワタリドリ メジャー1st Sg 2015.3.18
2 7.0% Kick&Spin 4th AL『Me No Do Karate.』 2013.6.26
3 6.7% Adventure インディーズSg 2014.6.18
4 5.9% starrrrrrr feat.GEROCK インディーズSg 2013.1.23
5 5.7% Dracula La メジャー1st Sg 2015.3.18
6 4.0% Waitress, Waitress! 3rd AL『Schwarzenegger』 2012.4.4
7 3.8% Droshky! インディーズSg 2014.6.18
8 3.0% Stimulator 4th AL『Me No Do Karate.』 2013.6.26
9 2.8% city インディーズSg 2010.7.7
10 2.4% Adam's Apple Pie メジャー1st Sg 2015.3.18
※[Champagne]時代の楽曲も含む。アルバムはいずれもインディーズ作品。
つのはず誠の「キラ☆歌発掘隊」
プロフィール:つのはず誠
つのはず・まこと。1968年京都府出身。理学部修了→化学会社勤務という理系人生を経て、97年に何を思ったか(笑)音楽関係の広告代理店に転職。以降、それまでのヒットチャートデータと理系的センスを織り交ぜた音楽市場分析が評判となり、05年にT2U音楽研究所を設立し独立。現在は、本業で音楽分析やCD企画をする傍ら、日経エンタテインメント!、共同通信、日経ビジネスオンライン、日経トレンディネットなどでも愛と情熱に満ちた連載を継続中。Twitterは@t2umusic
 2015年3月発売の中村中の『LIVE 2014 敵か!?みかたか!?』と、椎名林檎『生・林檎博’14〜年女の逆襲』の2本の映像ソフトを観て、クラクラしました。前者は、とことん訴えかけるような、後者はとことんショータイムに徹するようなLIVEで内容は異なるものの、命を削って、まさに体を張ってパフォーマンスしていることはひしひしと伝わってきました。こうして日夜励む歌い手もいれば、何十種類も異なるCDを発売してオリコンTOP10入りを狙いに行く歌い手(口パク手?)もいるのが、またショービジネスの面白さでもありますが、音楽に魂を込める“アーティスト”が今後も報われればいいなと切に願います!