Q)先ほど、「命結(ぬちゆい)」は、メロディと歌詞の一部が出来上がって、そのあとで歌詞を完成させたとおっしゃっていましたが、普段、曲を書かれる時には、メロディから作られるのですか?
「今どこにいますか」みたいに同時に出来たりもしますし、いろいろですけど、メロディを作って、あとから詞を付ける方が多いですね。でも、運命なんですよね、歌って。生まれてきちゃうものなんです。人が生まれた時に、生まれた子供が取り換えがきかないように運命なんです。
だけど、詞や曲は取り換えられるんですよね、生まれた子供は取り替えられないけど。だから「なんとかもっと良くしないと」とか、「このメロディにこの詞がベストなのか?」って問いをするんですよね。でも、問い詰める時間がいっぱいあって、何曲も作り変えてみても、実際はがっかりすることが多くて、結局、最初のメロディに戻ったりするのね。だから、出来た時が、運命なんです。
Q)「今どこにいますか」みたいに同時に出来るのは、まさに運命的ですね…
そう。だから、詞とメロディが一緒に出来ちゃったっていうのは、一番いいんですよ。もう迷うヒマもない。「今どこにいますか」だって、もう考える隙もない。
Q)他の登紀子さんの曲で、同時に出来上がった曲は、たとえばどれでしょうか?
そうね、それに似た出来方をした曲は、「時代おくれの酒場」とか「時には昔の話を」とかですね。言葉が出来た時に、一緒にメロディも付いてきた。でも、なんで、それがそうなるかと言うとね、締め切りが迫ってたから(笑)。
たとえば、「時には昔の話を」の場合で言えば、「百万本のバラ」とかが入っている「MY STORY」ってアルバムの時だったんだけど、「MY STORY」とか言ってるわりには何かが足りないってずっと思ってたんですよ。それで、オケ録りの最後の日に作ったんですよ。「もう、今日作らないと間に合わない!」っていうタイミングでね。だから、本当にギリギリだったから、最初に出来上がったものから、一字一句なおしていないんです。「時代おくれの酒場」も同じような感じでね、「次の日にやるライブに何かほしい…」「何か足りないのよね〜、何かいい気分になれる歌がないかしら…」って思ってて、前の日の夜に作って歌ったんですよ。
Q)そういうときって、まさに、天から降ってくる感じなのですか?
たぶん、形にはなってなくても、心の中でわかってるんですよね。形にならない何かを感じているから、「こんな感じのものがあったら、もっとよくなるよね…」って思うんでしょうね。欠けているもの、足りないものが見えた時には、そうやって生まれるんですよ。
Q)言葉やメロディが浮かんだ時に書きためておいたりはされるのですか?
やってるんですけど、実は、ほとんど実らないんですよ。
Q)それらを組み合わせたりとか、そこからふくらませていったりして出来上がることはないのですか?
あまりないんですよ。でも、歌が出来上がった時に、あとから、よくよく考えてみると、何年か前に思いついていた曲だったりすることはありますね。つまり、忘れないでいた曲ってことなんですよね。
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