Q)曲作りは、メロディを先に作ってから詞を乗せるのですか?
そうですね、結果的には、その順番になる曲が少し多いですね。でも、だいたいは、最初にイメージを作って、詞のモチーフみたいなものがあってメロディを作っていったりとか、どっちともなく始まることも多いですね。メロディとか歌詞とかってことよりも、まず、イメージ先行で作り始めるんです。それで、結果的にカタチとして出来上がるのは、メロディが先のことが多いですけど、サビとかは、最初の詞のモチーフでメロディと一緒に作っていったりしますね。
Q)その「最初のイメージ」というのは、どういう感じのものなのでしょうか?
それは、ケースバイケースですね…。あんまり公式はないと言うか。「この言葉面白い!」とか、「この切り口面白い!」とかって始まることもあるし、圧倒的に綺麗な夕焼けを見て作ったこともあるし…、まあ、いろいろですね。
Q詞を書きなおしたりすることはありますか?
あんまりないです。でも、今回は、ちょっとだけ変えたりしましたね。と言うのは、今回のアルバムは、全体的に「音楽讃歌」みたいになってるんですよね、「音楽大好き!」みたいな。「音楽に何が出来たんだろう?」って悲しかった時から、「音楽に出来ること」をずーっと探してきたと思うんですよね。まだまだわかったとは言えないんだけど、でも少なくとも、私自身が、音楽ですごく救われたことがあったから、音楽が大好きなわけじゃないですか。だから、「音楽讃歌」って意味合いを強めたりする変更をしたこともあったし、逆に、「ちょっとこれは痛すぎる…」「痛みにまかせて書いている…」ってところもあって、それを少しだけやさしくしたこともありましたね。でも、なおしたものは少ないですね、ほとんどが新しく生まれた曲ですから。
Q)いつも、歌詞は一気に書き上げるのですか?
それも、わりといろいろなんですけど、でも、イメージが出来上がった中で曲を書きだすので、切り口を見つけたりすると、わりと一気に「ドドドッ!」って出来たりします。それで、何回か歌っているうちに、「これは、こっちの方が口が喜ぶ」とか「こっちの言葉が面白い」ていう感じで推敲していったりしますね。
Q)今回のアルバムの中で、その最初のイメージから、歌詞が一気に「ドドドッ!」って出来た曲はどれですか?
そうですね…、わりと面白い作り方をしたのは「A New Song」ですね。これは一番最後に作った曲なんですけど、もともと「New Song」ってしていた仮タイトルに、ただ頭に「A」を付けただけなんですよ。ず〜っと「New Song」って仮タイトルのままで、エンジニアの人なんかも「ところで、この『New Song』って、なんてタイトルになったの?」って聞かれたりして、「New Songでいいかな〜って思ってるんですけど…」って答えたら、ウチの小原さん(小原礼)に、「アタマにAを付けたら…」って言われて、それで「A New Song」になったんです。
Q)仮タイトルがそのままタイトルになったのですね…
コンピューターで新たに曲を作る時、タイトルが出来ていない場合、まず「New song」って打つんですね。作業しようと思ってソフトを立ち上げるたびに「New Song」ってファイル名が勝手に出てくるから、「New Song」って文字はすごい見てるんです。そのうち、「New Songってなに?」って思うようになっていってね(笑)。その「New Song」って文字を見てて、その字ズラに触発されてイメージが広がって詞が出来た曲なんです。
Q)「A New Song」は、ファンキーなサウンドに乗せた言葉遊びもあって、ユニークな歌詞ですね…
「気分はクインシー・ジョーンズ!」みたいな気持で作った曲なんだけど、「詞も面白い感じがいいな」って思って、「泣けるよな〜笑えるよな〜」ってとこが最初に出てきたんです。そのサビの歌詞とメロディが同時に出来た時に、「そうだ!この曲の歌詞は、曲を作る時の気持ちにしよう!」って思ったんです。だから、タイトルも「A New Song」なんです(笑)。だから、「毒なんてない」って思ってたけど、でも、あとから読んだら「ちょっとだけ毒入り」だったのね(笑)。
Q)今回のアルバムで、とくに苦労した歌詞はどれですか?
苦労したってことは、そんなにないですね。でも、「Crying Dog」が男っぽかったんで、少しやさしく変えました。それでも、「誰かの時代を踊るのはやだ」とか、「群れることや 媚びることは 弱さの証…」とかって、ちょっと硬派で、詞がちょっときついんですけど、でもね、こういう切り口のものも、「soup」の中に入れたかったんですよ。日本人て、我慢して泣かないでしょ。だから、「crying out するってこと」、私も含めてなんだけど、「泣いてもいいよ」って歌もいいかなって思って。それで、こんなのも作ってみました。ちょっとブルージーな感じでね。
Q)そうですね、ゴスペル風のバラードで感動的な歌です。言葉の意味合いとか、そういうことではなくて、コード進行とメロディと言葉で、直接心に響く、理由もわからず涙が流れる歌です…
ギュ〜ッって弓矢を引っ張っておいて、サビの「Crying Dog〜」で一気に放すような、そういう音楽の形式って感動的だったりするんですよね。Crying Outするイメージで、この曲全体を作っているんです。ただ単に字ズラで感動とかってことじゃなく、「音楽の在り様」で伝わってくれると嬉しいですね。それで、鈴木茂さんのギターがまたいいんですよね…大好き。民生くん(奥田民生)が弾いてくれている生ギターもいい音してますよねー。
Q)今回のアルバムの中で、とくに気に入っている歌詞とかフレーズを教えていただけますか?
まあ、「スープ」は別格なんですけど…、たとえば「1グラムの歌」でね、「雨が降ったなら… 見えない星を歌うよ 消えない歌を歌うよ…」っていうフレーズがあるんですけど、そこは、私らしくて好きですね。とても私らしい感じなんだと思うんです。偉そうな感じとか、説教くさい歌は、あまり好きじゃないんで。自分の音楽なんて、とっても軽いもので、1グラムの価値しかないかもしれないけど、重たい価値観も大袈裟な励ましも何もないけど、でも「そこにある」ってことだけで、やさしい気持になってもらえたり、誰かの役に立てるんだったら、どんなに嬉しいだろう…っていう、象徴的な歌詞だと思います。私が今音楽で思っていることを表している一番の歌、私のベーシックに一番近いことが言えている歌かもしれないですね。
Q)「説教くさいのはイヤ」ということ以外に、歌詞を書く時に、何か気を付けていることとかはありますか?
イントネーションには気を付けていますね。メロディに乗せた時に関西弁になったりしないようにね。でもね、わざとちょっと残したりもするんです。キュートかなって思って(笑)。でも、基本的には、パッと耳で聴いた時に、それが何を歌っているのかが伝わるために、なまらないようにしています。油断して聴いていてもわかる方がいいので、わかりやすいイントネーションでメロディにはまるようにって考えています。あと、これは、表現する方の話になるんだけど、とっても詞を聴いてほしいんで、歌う時、滑舌とか気を付けていますね。 |