達人たちは1曲の詞を書くために、言葉を巧みに操り、その時代を象徴する言葉を探した。
その言葉は多くの老若男女の心をつかんで離さず、その歌は大ヒットした。
「孤独がつらく感じるとき」、「愛することがよくわからなくなったとき」いつも、勇気と力を与えてくれた‥、作詞家は言葉の魔術師である。そんなプロの「作詞家」の皆さんをゲストにお招きして、毎月、紹介していくこのコーナー。
今月のゲストは、「青いイナズマ」SMAPや、「愛されるより愛したい」Kinki Kidsの作詞で、お馴染みの「森浩美」さんをお迎えいたしました。ミリオンセラーがどのようにして生まれたか、森さんご自身からコメントを頂きましたので、お楽しみ下さい。
「Dance Beatは夜明けまで」荻野目洋子
「夢冒険」酒井法子
「抱きしめてTonight」田原俊彦、
「SHOW ME」森川由佳里、
「いいかげん」近藤真彦、
「じれったいね」少年隊、
「君を忘れない」シブがき隊、
「Dream Power」浅香唯、
「CO CO RO」光GENJI、
「ヴィクトリー」吉田栄作、
「shake」SMAP
「Shinin'on-Shinin'love」MAX、
「愛されるより 愛したい」Kinki Kids、
「Wing」知念里奈、
「タイミング」ブラックビスケッツ
「なかったコトにして」郷ひろみ、
「ヒトミノチカラ」観月ありさ など多数。
作品は、ユーザーに歌ってもらってナンボだということ。鼻歌でもよいし、完全な歌詞なんて覚えてもらえなくても、生活の中に自然と入り込んでほしいということ。それには、世の中に漂う今ある雰囲気を察知し、それを作品の中に盛り込む。元々、理屈屋なので、そういう組み立てが好きです。
例えば、政治や経済、もしくは犯罪なども含め、それらを恋愛中の男女に置き換えるとこういう作品になるだろうし、テーマとしてみんなが感じている空気が根底にあるのだから、人々の心へ入り込みやすいだろう…というような作法。ただし、難しい言葉は一切使わず、喋り言葉を多用するのが私のスタイル。あとは、いかに作曲家の作ったメロディに違和感なく言葉を乗せるかという苦心。母音の並びや撥音便の使い方など、音符の上がり下がりも計算に入れ、かつ文章としても成立するようにすること…ですかね?
この作品は、とてもプレッシャーのかかった作品でした。
デヴュー作が、200万枚ものセールスがあり、その2弾目となるものでしたから、コケるわけにはいかなかったのです。プロデューサーのOKがなかなか出ず、完成まで、ああでもないこうでもないと書き直しをし、仕事場の床で、2、3日倒れ込むように寝た記憶があります。ドラマの主題歌でもあったので、そちらのイメージもうまく取り入れなければ相乗効果が生まれないという考えがありました。ドラマは子供VS大人というテーマだったので、作品中の「ギリギリのオトナたちが・・・」のブロックはまぁまぁ狙い通りに書けたのではないかと思っています。
(森 浩美 談)
放送作家を経て、83年より作詞家をはじめる。86年、荻野目洋子に提供した「Dance Beatは夜明けまで」のヒットを境に、以後、酒井法子「夢冒険」(第60回選抜高校野球行進曲)、森川由加里「SHOW ME」(TBS 男女7人秋物語主題歌)、田原俊彦「抱きしめてTonight」(CX教師びんびん物語主題歌)などヒット曲を出す。現在までの作品総数は700曲。近年ではSMAP「青いイナズマ」「shake」「ダイナマイト」、Kinki Kids「愛されるより愛したい」、ブラックビスケッツ「スタミナ」「タイミング」などのミリオンセラー作品がある。
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【森浩美さんのオフィシャルサイト】
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