どちらか一方だけでは起こり得ない音楽的魔法。
たとえ意味のない言葉であっても、印象的に響く。
たとえありふれた言葉であっても、説得力を持つ。
この音楽的魔法を最大化することが作詞をする上で大切だと感じます。
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Q1. 歌詞を書くことになった、最初のきっかけを教えてください。
事務所(アップフロント)が主催するオーディションに応募したことがきっかけです。
自分で作詞作曲した「眼鏡の女の子」という楽曲を提出しました。
オーディションの本選には残らなかったものの、曲は面白いと評価していただきました。
それから事務所の楽曲コンペに参加するようになり、2015年からハロプロ楽曲にも参加。
そして現在に至ります。
ちなみにオーディションの時に提出した楽曲「眼鏡の女の子」は、2018年「眼鏡の男の子」にタイトルを変え、BEYOOOOONDS(ビヨーンズ)の楽曲になりました。 -
Q2. 歌詞を書く時には、どんなところからインスピレーションを得ることが多いですか?
今まで聴いてきた音楽、見てきた映画、読んできた本、経験や記憶からです。
心が動いた瞬間の記憶は誰しもが鮮明に残っているものだと思います。
そのワクワク感や衝撃を自分の歌詞に昇華するイメージです。 -
Q3. 普段、どのように歌詞を構成していきますか?
メロディーから先に作ることが多いので、とりあえず出鱈目な言葉で歌ってみます。
そうすると「サビのこの部分は、こんな語感の言葉がきてほしいな」と感じたりします。
そこからメロディーの字数制限に合わせて言葉を脳内から探してきます。
いい言葉が見つからない場合は、本屋さんに行ってブラブラ歩きながら言葉を探します。
そしてベストな言葉がサビの一部分にハマったら、その言葉の周りを埋めていきます。
ジグソーパズルの角を最初に見つけて、次に外側の枠の部分のピースをはめていく感覚。
ある種の思いつき、結果自分でも思いもよらない歌詞が書けたりするこの手法が好きです。 -
Q4. お気に入りの仕事道具や、作詞の際に必要な環境、場所などがあれば教えてください。
A4のコピー用紙にテーマを決めてとりあえずなんでもいいので言葉を書きます。
この時は他人の目を気にすることや、カッコつけた表現などは一切排除します。
一人きりの部屋で黙々と感情を白紙に吐き出すイメージでしょうか。 白紙がボールペンの文字でビッシリと埋まったら、それをスマホで撮影しておきます。
そこからは外へ出かけ、メロディーだけのデモ曲を聴きながら散歩します。 さっき吐き出した言葉の断片を思い出しながら、何度も何度もメロディーを聴きます。
吐き出した言葉を忘れたら、撮影した写真を見返して思い出します。少しでも言葉がメロディーにハマりだしたら、もうこっちのもんです。言葉と言葉の間のストーリーを想像しながら、いい気分で散歩を続けます。謎解きゲームのようにストーリーが繋がった瞬間は楽しいです。ということで必要なものは、紙とペンとスマホとイヤホンと一人きりの時間です。 -
Q5. ご自身が手掛けた歌詞に関して、今だから言える裏話、エピソードはありますか?
BEYOOOOONDS(ビヨーンズ)内の4人組ユニット、CHICA#TETSU(チカテツ)の楽曲に関して。
ユニット名からお察しの通り、コンセプトが「電車×アイドル」です。リーダーの一岡伶奈さんが電車好きということからこのコンセプトになったのでしょう。正直、作詞をするにあたっては、「ヤバい無茶振り、キターー!」と感じました(笑)。ただこの一見相容れなさそうな「電車」「アイドル」という要素が作詞中に繋がった瞬間、自分で作っておいてすごく感動しました(笑)。
「都営大江戸線の六本木駅で抱きしめて」というタイトルなのですが、日本一深い地下鉄の駅(地下42.3m)くらいに彼のことを深く愛しているの、という曲です。無謀そうだった知恵の輪が、ある日突然カチャっと音を立てて解けた感覚でした。これは難しい依頼を受けて作詞するときの辛さでもあり、楽しさでもあります。 -
Q6. 自分が思う「良い歌詞」とは?
第一に、歌っていて気持ちが良く、リズミカルで響きの良い言葉。
第二に、自然と耳に残るような印象的な言葉。
第三に、物語の主人公や作者の気持ちの乗っかった人肌の言葉。 -
Q7. 「やられた!」と思わされた1曲を教えてください。
「真珠のピアス」/松任谷由実
こういう無駄のない、隙のない歌詞を書けるようになりたい!
1番Aメロ<背中にまわす指の力とはうらはらな あなたの表情が見たい>
2番Bメロ<どこかで半分失くしたら 役には立たないものがある>
別れゆく男女の小さい物語でもあるし、人間誰しもに共通する大きな物語でもある。 -
Q8. 歌詞を書く際、よく使う言葉、
または、使わないように意識している言葉はありますか?意味や響きが明るい言葉をよく使っていると思います。
あとこれは松本隆さんの受け売りですが、否定形の言葉は多用しないよう気をつけています。
鋭利な言葉は人の心に刺さりますが、傷つけてしまうこともあります。
要所に効果的に使うなど、取り扱いには注意しています。 -
Q9. 言葉を届けるために、アーティスト、クリエイターに求められる資質とは?
自分の心の奥深くに潜っていく勇気と忍耐力。いつまでも言葉や音楽に感動できる純粋で澄んだ心。
基本的に歌詞を書くときは一人なので、孤独に対する耐性もあった方が良いかもしれません。
長時間一人で居ても苦に感じない、むしろ楽だという人は作家向きかもしれません! -
Q10. 歌詞を書きたいと思っている人へのアドバイスをお願いします。
友達に聞かせてみたり、自分の作品を公開してみたり、オーディションを受けてみたり。
アウトプットして誰かに感想を聞いたり、評価してもらうことに慣れましょう。
最初は恥ずかしいし、怖いですが、やり続けていれば必ず前へ進めます。
相手が漠然と求めているものに自分の言葉がハマれば、徐々に仕事に繋がります。
自分のために書く歌詞も楽しいですが、他人のために書く歌詞はもっと楽しいですよ。
1985年生まれ、東北出身。
12歳でギターに出会い、作曲に興味を持つ。
高校卒業後、音楽学校進学のため上京。
2015年より作家活動をスタート。