2020年1月22日に“阿部真央”がニューアルバム『まだいけます』をリリースしました。アルバムタイトル曲である「まだいけます」をはじめ「お前が求める私なんか全部壊してやる」や「どうにもなっちゃいけない貴方とどうにかなりたい夜」など、もう曲名から気になる楽曲揃い…!デビュー10周年を駆け抜けた彼女の“今”が詰まっております。
そして今日のうたコラムでは、そんな阿部真央のインタビューを【前編】【中編】【後編】に分けてお届けいたします!読めばいっそうアルバムを楽しめる、濃厚なトーク内容となっておりますので、是非チェックを。【前編】【中編】に引き続き【後編】をご堪能ください!
― ちなみに、昔と比べて、恋愛観で変わったところってありますか?
大いに変わりましたねぇ。年齢と、子どもが生まれたことで、10年前の19~20歳くらいのときとはまったく違う。何が一番違うかというと、相手を変えることはできないんだともうわかったところ。変えようとしてはいけない。子どもを育てていても思いますね。今、うちの子は4歳なんですけど、まだ分別もついていませんし、これからいろんなことを学んでいく小さき命だから、私もつい「こうしなさい」とか「こうしちゃダメ」とか言っちゃうんですよ。でも、言っても聞かないところがうちの子にはとくにあって。
そういう姿を見ていると、私は親だけれど、この子を支配する存在ではいけないし、そうはなれないし、この子が自分で感じて学ばないといけないこともあるから、この子を「変えよう」なんて思っちゃいけないんだなって年々、感じるんですよね。で、子どもを生んでからも恋愛をしたりしましたけど、やっぱり子どもに対して思うのと同じことを、その相手にも思うんです。本人が変わろうと思わない限り変わらない。変えようとしたら、余計に変わらない(笑)。そうなると、何も求めない、期待をしない。それはこの10年ですごく変わったというか、学んだことですね。
― かつては「私が変えられるかもしれない」という気持ちが強かったのでしょうか。
うん。もはや支配欲に近いですね。私が一緒にいたいと言っている、言うことを聞いて。私が会いたいと言っている、会いに来て。という感じでした(笑)。今思えばそれって、相手の都合は丸無視だから、子どもがワーワー言っているのと同じだったんですよね。でも、もう大人の恋愛だし、人間同士だし、それじゃダメだなって。あと結局、そのままだと何回恋愛したって自分が成長できないんですよ。なんか…やっぱり子どもはいろんなことを親に教えてくれますね。
― ラブソングで言うと、今回のアルバムの最後に収録されている「おもしろい彼氏」はどのように作られたのですか?
これはね、この曲を書いたとき、まさに付き合っていたこういう歳上の彼がいて、すごく変わっているひとで、面白かったんですよ。だからその当時、フワッと作ったんですよね。でも<死ぬまで側にいて>とか<来世もよろしくね>とか言いながら、その恋愛は終わった(笑)。
― …(笑)。
曲って自由ですよねぇ。で、この曲はたまたま彼のことをディスっていませんけど、もしかしたら次のアルバムとかでディスる曲も出てくるかもしれないし(笑)。
傷つける恋はそろそろ飽きた
笑ってくれる間に大人にならなきゃね
街並みはもう色を変えたよ
来年も来月も来世もよろしくね
死ぬまで側にいて
来世もよろしくね
「おもしろい彼氏」/阿部真央
だって言ってたもん。まだ付き合っていた頃に彼が「俺は“何男”になるのかなぁ~」とか。私はこれまで「27歳の私と出がらし男」とか「逝きそうなヒーローと糠に釘男」とか、別れたひとのことを「○○男」と歌っていたので。それを彼は知っていたから「俺はどうかな~」とか言っていたけれど、今となっては「笑っていたけどお前、本当に何男になるかわかりませんよ!」って。一応、現状は「おもしろい彼氏」であることに感謝してほしいですよね(笑)。
― 私は6曲目や7曲目、そして最後の「おもしろい彼氏」を聴いて、今の真央さんは歳上の恋人と幸せな恋愛をされているのかなぁと想像していたのですが、実は終わっていたのですね…。
……このひとはね(笑)。すごいよね、ここまで喋っちゃっても止めないレーベルと事務所!まぁいいんですよ。昔からこうなので。多分ね、ファンのみんなもそうであってほしいと思っているはずですよ。だって離婚したとき喜んでたもん!
― そんなことはないでしょう!
いや、本当に(笑)! 離婚して「Don't let me down」とか「逝きそうなヒーローと糠に釘男」とか発表したときに『離婚したことは悲しいけど、これでまたこういう阿部真央の曲が聴けると思うとちょっと嬉しい』みたいなコメントいっぱいあった。でもこれぞ本音だと思いますよ!
― …すみません、私も「バイバイ」とかすごく好きです。
でしょ!? いや、めっちゃ嬉しい(笑)。私もあの曲、大好きなんですよ。まぁ、聴いてくれるひとが喜んでくれればそれが一番です。2019年に本当そう思いましたから。2020年はもっと頑張ります!
― では、このアルバムのなかで今の真央さんの心境にもっとも近い曲というと、どの曲でしょうか。
やっぱり「お前が求める私なんか全部壊してやる」ですね!最初に去年の話もしましたけれど、昨年に引き続き今年も“リミッターを外す”ということがテーマなので。もっと上手に外したり、本当はずっとリミッターなしで、偽らない自分で気持ちよく生きていたい。2020年は、それをちゃんと定着させていく1年にしたいんですよね。このアルバム自体もそういうふうに感じてもらえる作品だと思います。
この歌詞とまったく同じですと言うと<全部壊してやる>なんて歌っているから、ちょっと言い方がきつく感じられるかもしれませんけど、でも自分が自分に対して作ってきたイメージも、どんどん壊して打ち破っていきたいという想いはたしかにあるんです。そして、自分が発する言葉とか、パフォーマンスの端々から「阿部真央、変わってきたな!いいぞいいぞ!」という波が広がっていくような現象が起きていく数年間になればいいなと。なので「お前が求める私なんか全部壊してやる」は、今の私であり、これから何年かのテーマですね。そして「この曲を書いたとき、こう思ったじゃん!だから頑張りましょう!」って原点に立ち戻る力を持った曲だと思っています。
― 真央さんにとって「歌詞を書くこと」ってどんなことですか? 10年前のインタビューでは「自分の気持ちを相手に分かり易く変換していく作業」だとおっしゃっていましたが…。
昔の私、真面目(笑)!今、その質問にパッと浮かぶのは、歌詞を書くことはもう私にとって“作業的に好きなこと”ですね。そしてパズルのような感覚です。自分が書きたいイメージとかシチュエーションが頭の中にあるんですよ。それをピタリと言い当てたフレーズを書ければ書けるほど楽しい。あとはJ-POPなのでわかりやすいものでなければならないとか、文字制限があるとか、そういういろんなミッションに妥協をせずクリアしていく、語弊を恐れずに言うと“ゲーム”に近いかな。でもうまくパズルのピースがハマるまではハゲそうになるくらい悩む、真剣なゲームです。
― ありがとうございました!最後に、真央さんが歌詞を書くときに一番大切にしていることはなんですか?
いかに文字数少なく、簡単な言葉で書くか。ただ、そうするとどうしても薄くなってしまいがちなんですよね。それでも、簡単な言葉なのに聴いたひとそれぞれの経験や情景がブワッと浮かぶのが、素晴らしい日本語の歌詞だと思うんです。多分それが日本でいちばん上手いのが小田和正さん。天才的。前からいろんなところで言っているんですけど、あんなにシンプルで、主観的でありながら、伝わるものが大きい歌詞を書けるってすごいですよね。私はそういう歌詞が大好きだし、自分もそういう歌詞を書けるようになることを目指して“わかりやすくあること”を大切にしていますね。
(取材・文 / 井出美緒)
◆9thアルバム『まだいけます』
2020年1月22日発売
初回限定盤 PCCA-04885 ¥3,182+税
通常盤 PCCA-04886 ¥2,727+税
<収録曲>
01. dark side
02. お前が求める私なんか全部壊してやる
03. まだいけます
04. どうしますか、あなたなら
05. pharmacy
06. どうにもなっちゃいけない貴方とどうにかなりたい夜
07. 今夜は眠るまで
08. テンション
09. 答
10. 君の唄(キミノウタ)
11. おもしろい彼氏