今年もここに居れてよかった。音楽人として生きれてよかった。

2020年にCDデビュー25周年を迎えた、シンガーソングライター・川村結花。今日のうたコラムでは、その記念企画として2020年~2021年の2年を通じてのご本人によるスペシャル歌詞エッセイをお届けしてまいります!更新は毎月第4木曜。

 シンガーソングライターとして活躍しながら、様々なアーティストへの楽曲提供も行い、ここ数年はピアノ弾き語りのLiveをコンスタントに続けている彼女。この連載でどんな言葉を綴ってくださるのでしょうか…!今回は連載ラスト・第24回をお届けいたします。是非、最後までお楽しみください。



第24回歌詞エッセイ:乾杯のうた

今年もいよいよド年末。この文章がUPされるのは23日なので、もうあと1週間と1日で2021年は終わり、なのであります。そしてここ最近は日が暮れると、近所のビルの広場にある巨大クリスマスツリーにスマホ片手の人たちやカップルに子供たちが集まり、今を味わい尽くせとばかりに賑わっています。赤に青に緑にとめまぐるしく変化する光をキラキラ放つ大きなもみの木。みんなの夢を乗せた光の束。その場所にいてぼんやりしているだけで、なんだかハッピーな気分としみじみした気分が交互にやって来て、切なくて幸せなキュンとする何かでわたしの心はいっぱいになるのです。
 
それが26日になると、まるでそれまでが幻だったかのように灰色の足場が組まれて、ハイ来年までサヨウナラ、と撤去されます。その淡々とした撤去作業の中、鳴り響く鉄骨の無表情な音を聞いていると「ああなんだか夢って儚いなあ、、、」という気持ちになって、また色々物思い始め言葉やメロディが湧いてくる、、、のもつかのま、「いや浸っとる場合やないがな、おせちの用意の買い物いかな。」という現実に引き戻され、バタバタ動いているうちに年が変わって行く、というのが年末の常です。今年もそうなることでしょう。
 
などと思いながら、昨年の12月のこのエッセイを読み返してみたら、「なんか今年は実感湧かん」と書いてありました。そう、2020年は1年丸ごとワープしてしまったかのようであったなあとこないだも音楽仲間と話したばかりです。それを思えば、今年2021年は僅かではあったけれどとても心に残る幸せなライブができたこと、そして夏ごろは刺激的なCo-Writeでの歌作りを結構な曲数リモートで行えたことなど、やれたことがあったということで、いつもならそれほど感じ入ることもない巨大クリスマスツリーの風景も年末への思いもことさらだったのかもしれません。
 
今年もここに居れてよかった。音楽人として生きれてよかった。この先どうなるかわからないことこの上ない世の中で、音楽業界でわたしも年を取って行くけれど、これからも音楽を生業として生きて行きたい生き残りたいぶちかましたい大笑いしたい。今ほどそう強く感じている時はなかったかもしれません。
 
 
よくぞ今日まで よくぞ今日まで
わたしたち 生き抜いて来たよね
乾杯 ここにいるわたしたちに
乾杯 たたえあおう
 
 
これはわたしの曲「乾杯のうた」の一節です。わたしは来年55になります。そんなどえらい年齢になってもまだ全然、もがいて悩んでやっかんで羨んで凹んで倒れてもうあかんのかなあと泣いてまた思い直してピアノに向かって。そんなこんなを続けながら時々、本当に時々、「続けて来てよかった」と幸せで眠れない夜があります。そんな夜にこれからもまだ何度も出会いたいのです。だから来年も歩き続けよう。そして大好きな人たちとお互いを讃えあって乾杯したい。
 
そんなわけでー。
2020年1月よりこのページにて連載エッセイを続ける機会をくださいましたこと、この場をお借りして歌ネット様へ感謝申し上げます。そしてこのページを読んでくださった方、いつも楽しみにしてくださっていた方へ。これからもどうぞ信じる道を歩いていてください。お互いの道の途中で出会うことがあったらきっと讃えあって乾杯しましょう。その日が訪れることを楽しみにこの2年間のエッセイを終わらせていただくこととします。本当にありがとうございました。ではまたいつかどこかで。
 
川村結花より。



◆紹介曲「乾杯のうた
作詞:川村結花
作曲:川村結花


◆プロフィール

川村結花(シンガー・ソングライター)
大阪府生まれ。東京芸術大学作曲学科卒業。1995年、アルバム「ちょっと計算して泣いた」でシンガーソングライターとしてデビュー。同時に作詞家作曲家として楽曲提供を行い、主な提供楽曲は、夜空ノムコウ(作曲)をはじめ2019年現在までに100曲以上。2010年「あとひとつ」(作詞作曲共作)でレコード大賞作曲賞を受賞。2017年、アルバム「ハレルヤ」をリリース。ここ数年は、提供楽曲の作詞作曲も行いながら、ピアノ弾き語りのLiveをコンスタントに続けている。

オフィシャルサイト:https://www.kawamurayuka.com

◆歌詞エッセイバックナンバー
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