人の気持ちが分かる自信が完全に底を尽きた日がいよいよ訪れた。

 2022年6月8日、兵庫県淡路島出身のシンガー・ソングライター・岡林健勝のソロプロジェクト“Ghost like girlfriend”がニューアルバム『ERAM』をリリースしました。今作には、先行配信曲「Flannel」のほか、2020年1月15日にデジタル・シングルとして配信された「光線」、同年10月14日に配信された「Birthday」、そのほか全11曲が収録。CDとしては、EP『2020の窓辺から』から約1年半ぶりの作品となります。
 
 さて、今日のうたコラムでは、そんな最新作を放った“Ghost like girlfriend”の岡林健勝による歌詞エッセイを3週連続でお届け!今回は第1弾です。今作『ERAM』の原動力になったものとは…。今、他者に対して心が閉じているあなた。いっそ一人で生きていけたらと思っているあなた。ぜひ、今作の歌詞と併せて、このエッセイを受け取ってください。



色んな人、色んな事情、色んな気持ちがある事をあまりに色んな場で知った。運命だと思った人にも色んな事情、色んな気持ちというのがあって、結局は自分の元を皆離れていく。
 
自分の理解がまだ及ばないだけ、世の中にはそういう事情、そういう気持ちがあるんだと言い聞かせて、遠くなってく背中をどうにか恨まないように気を付ける。
 
幾らそれが強い気持ちだったとしても、自分の中にないものだったら分かり合う事は難しいし話し合いも成立しない。
 
伝える側としても、受け取る側としても、それを痛感する機会が2019年から2020年までの2年にうんざりする程頻発していた。
 
そんな出来事へひとつひとつ出会す度に、誰かの気持ちが分かる人間になれるという自信がちょっとずつ擦り減っては二度と誰にも本音を明け渡さず、一人で生きていけたならという意地がどんどん解けなくなってく感覚が胸の奥で巻き起こって。
 
 
 
そのまま突入した2021年の春、ここから実際に4ヶ月間ほとんど誰にも会わず、どれだけ暗澹とした気持ちに襲われてても誰にも打ち明ける事なくただただ一人で曲を作って。
 
人の気持ちに触れる機会、人の存在そのものに触れる機会が自分の暮らしからちゃんと段々遠ざかっていって、そして人の気持ちが分かる自信が完全に底を尽きた日がいよいよ訪れた。
 
その瞬間に、あんなに解けなくなっていた意地が爆発したように解けて、それと引き換えるように無性に寂しくなってしまって。
 
今までにないほど誰かに会いたい、胸の奥にある気持ちを誰かと話したい気持ちでいっぱいになったのだ。
 
その時、ただ自分が思ってる事を伝えたい訳ではなくて、それを受けて、「自分もこういう事があって」と相手が話してくれるのをいつも待っているというか、むしろそこからが本題というか、端的に言えばコミュニケーションがしたくて曲を作っている事ひいては生きているという事に27歳にしてようやく気が付いたのだった。
 
 
 
それからは自分と誰かの間にありそうで尚且つすぐ伝わってくれそうな気持ち、情景からなるべく曲に起こしていった。
 
それもこれもコミュニケーションが生まれやすいようにする為だった。
 
そう願って書いた言葉なら、それに対して言われる言葉が「分かる」にしろ「分からない」にしろ、これまでとは違ってそれもちゃんとコミュニケーションとして成立してくれるような気がするというか。
 
 
 
28歳にして格好良いものを作りたい、とか自己ベストを更新したい、とかではなくあまりにそのままな「寂しい」という気持ちを原動力にアルバムを一枚作るとは思ってもみなかった。だけど今までで一番正直な気持ちのままに作った分、人懐っこさもあらゆる面で出ている作品になったと感じている。素直になるのも悪くないなと思った。
 
そしてこれを聴いて何を感じるのか、何を思い浮かべるのかというのも凄く気になる。それが聞きたくて作ったアルバムだから。良かったら聞かせて欲しい。セカンドフルアルバム「ERAM」リリースになりました、是非お聴きください。

<Ghost like girlfriend・岡林健勝>



◆2ndアルバム『ERAM』
2022年6月8日発売
UPCH-20621 ¥3,300(税込)
 
<収録曲>
1. ERAM
2. 光線
3. laundry
4. Rainof○○○
5. 面影
6. 音楽
7. Highway
8. Midnight crusing
9. Birthday
10. Flannel
11. マリアージュ