黄昏遊星群。

 2022年6月22日に“saji”が2nd Full Album『ユーリカ』をリリース!今作には、「星のオーケストラ」(TVアニメ『かげきしょうじょ!!』OPテーマ)や「ハヅキ」(TVアニメ『SHAMAN KING』第3弾EDテーマ)、「灯日」(TVアニメ『トモダチゲーム』EDテーマ)とアニメタイアップ曲を余すことなく収録。さらに、最新曲「クロスオーバー」(ABCテレビ他『部活ピーポー全力応援!ブカピ!』OPテーマ)ほか新録曲にも注目です。
 
 さて、今日のうたコラムでは、そんな最新作を放った“saji”のヨシダタクミによる歌詞エッセイを3週連続でお届け。今回が最終回。綴っていただいたのは、今作の収録曲「フォーマルハウト」に通ずるお話です。自身がアルバムのなかでもとくにお気に入りの1曲。夜空にぽつりと浮かぶ星を、遠くへ行ってしまった大切なひとを、思い浮かべながら、この歌詞とエッセイを受け取ってください。
 


北海道の実家の2Fのベランダには
随分と古い望遠鏡があった。
僕が物心ついた時には既に
歴史を感じる風体をしていらっしゃったので、
恐らく兄貴の物でもない。
 
田舎の空がとても澄んでいて綺麗だと云うことに
気が付いたのは、僕が都会にすっかり染まった大人になってからだった。 
虫のオーケストラと共に夜の帳が下りてゆく
星の絨毯は、子どもの頃は当たり前過ぎたのだろう。
得てして宝物というやつはそれが空っぽになって初めて宝物になるのだ。
 
大人になると苦手なものが克服できなくなる。
僕は高いところと、夜空に浮かぶ雲が苦手だ。
 
特に前者に関してはきっと一生治らない。
どの位のレベルかというと、
車道を跨ぐように敷かれた歩道橋の端を歩けない。
体育館のギャラリーの高さでもうギブアップ。
 
恐らく前世で誰かに突き落とされてそのまま剣山に貫かれたんだと思う。
それか小さな頃に階段から転げ落ちてドアの角に頭をぶつけたのが原因。
せめて先端恐怖症にならなかっただけ幸いか。
(知り合いのギタリストで、先端恐怖症の方がいて、
自分のギターの弦を交換するのも怖いらしい。やつらはびよんびよんするから。)
 
 
後者は理由は定かではないが、
夜空に浮かぶ雲を見ると心がざわめく。
もし、暗闇の中にぽつりと浮かぶあの雲の上に
ワープして取り残されたらどうしようと不安になるのだ。
この感覚に共感して頂ける方が居れば是非ご連絡ください。
 
ぽつりと浮かぶと云えば、秋の夜空にぽつりと
浮かぶ一等星をご存知だろうか。
今井美樹さんのPRIDEの歌詞の中にも出てくる
南の一つ星 とはこの一等星を指していて
みなみのうお座 フォーマルハウトという。
 
天に輝くアルタイルやベガほど煌めく訳ではないが
優しく光るその姿はとても美しい。
 
僕がやっているsajiというバンドは先日
ユーリカというフルアルバムをリリースさせて頂いた。
その収録曲の中でも特にお気に入りなのが
その名を冠する「フォーマルハウト」という曲。
 
この曲は、遠く彼方の星になってしまった君のもとへ
もう一度逢いにいくよというストーリーなのだが、
大切な君と僕とを繋ぐ星がフォーマルハウトである。
 
ちょうど今年の秋には僕らsajiの初となるツアーが敢行されるので、
秋の夜空に浮かぶ星々と共に
生のsajiの音に触れて頂けたら幸甚の至りで御座います。

<saji・ヨシダタクミ>



◆紹介曲「フォーマルハウト
作詞:ヨシダタクミ
作曲:ヨシダタクミ

◆2nd Full Album『ユーリカ』
2022年6月22日発売
初回限定盤 KICS-94065 ¥4,950(tax in)
通常盤 KICS-4066 ¥3,300(tax in)
 
<収録曲>
M1:スターフライヤー
M2:フォーマルハウト
M3:アスファルトと水風船
M4:星のオーケストラ
M5:Apricot
M6:ハヅキ
M7:クロスオーバー
M8:灯日
M9:After the Rain
M10:ゆりかご
M11:どうぶつのうた