恋愛の抜け出せないループ。

 2023年1月18日に“クボタカイ”が新曲「夢で逢えたら」をデジタルリリース!生音ビートのループ感が印象的で、ヒップホップとポップが心地よくハイブリットされた楽曲。2022年に発売され、注目を集めた「ピアス」「ロマンスでした」に次ぐ、リアルな描写と切ない思いが交錯するクボタカイ真骨頂のラブソングとなっております。
 
 さて、今日のうたコラムではそんな“クボタカイ”による歌詞エッセイをお届け。新曲「夢で逢えたら」にまつわるお話です。抜け出せない恋愛のループを描いた切ない歌詞。フレーズをピックアップしながら、そこに込めた想いを綴っていただきました。歌詞と併せて、エッセイをお楽しみください。



終わったはずなのに終わりきれない。
もう一度始まりそうにもない。
そんなあやふやで不細工な恋愛を、
きっと多くの方が経験していると思います。
 
こんにちは。クボタカイです。
年齢は23歳でミュージシャンをしております。
僕が音楽を始めたのはフリースタイルのラップ、つまりHIPHOPから始まりました。
そこから楽曲を制作してきましたが、「ポップス」への憧れというか、畏敬というか、そういったものを抱き続けてきました。
 
2022年、僕の表現したいものをもっと鮮明にするべく、バンドスタイルでの制作&LIVEを始めました。
ただのバンドでもなく、ただのHIPHOPでもない。
HIPHOPの横揺れ感やループ感はそのままに、バンドのグルーヴ、ポップスのキャッチーさを織り交ぜる。
ここ数年はそういう一曲が出来ないか、ずっと挑戦してきました。
 
そしてやっと導き出せた一つの答え、
それが本曲「夢で逢えたら」です。
 
 
「またね」で閉じたstoryは 続編も無いままlonely night
夕べの憂鬱は350ml缶ビールで飲み込んだ
求めるほどに離れてった 戻れぬほどに恋していた
トドメは約束の指輪 今では押入れの中
 
あの「またね」からは一度も会ってない。
それを引きずり肥大する孤独感。
こちらから会おうともしない。
寂しさを理由にしてもう一度会えたとして、
もっと寂しくなるのを知っているから。
 
夢で逢えたらそれで良くて
目が覚めるくらいのキスをして
今度こそ最後の言葉は「またね」じゃなくて「さよなら」で終わらせて
あの夜には二度と戻らない
 
ならせめて、夢で逢えたら。
拗れすぎた現実を飛び出して、夢の中で都合良く過ごせたら。
本当はもう出来ないはずのキスでもう一度目覚めれたら、悔しいけど幸せだと思う。
そしてきちんと「さよなら」と言ってくれたら、ようやく私は私になれる気がする。
 
文字面で理解った時の流れ やたら優しくてsleeping pills
絵文字の変化も見逃しません 知らない誰かとsleeping...?
 
無関心に似た優しさや、小さな癖の変化。
勝手に物語を読み取って寂しさに拍車が掛かります。
 
全てのこと
捨てたんじゃない 失ったの
どこへでも行けるわ
 
「捨てる」と「失う」の違い。
きちんと失うことでしか得られない強さは確かにあって、
その強さをまた誰かへの優しさへ。
そうして大人になっていく気がします。
 
あの夜には二度と戻らない
またね
 
「またね」でこの歌は終わり、
そして冒頭の歌詞に戻る。
恋愛の抜け出せないループを、初めての形で表現してみました。
「さよなら」を求めながら「またね」と言っちゃうのも、人間臭くて愛らしいです。
 
色んな人の燻った恋愛に届くことを楽しみにしています。

<クボタカイ>



◆紹介曲「夢で逢えたら
作詞:クボタカイ
作曲:クボタカイ