哀れみが溶けていく、冬の中で。

 来年2024年9月18日に“SARD UNDERGROUND”がデビュー5周年を迎えます(アーティスト写真:坂本ひろ美(Key)、神野友亜(Vo)、杉岡泉美(Ba))。彼女たちは、令和の時代に“ZARD 永遠のスタンダード・ナンバー”を継なぐトリビュートバンド。2019年にZARDの数々の名曲が詰め込まれたトリビュートカバーアルバムでデビュー。そして現在に至るまで、数々のZARDのカバー曲と、坂井泉水の未公開詞によるオリジナル曲の他、ボーカル神野友亜によるオリジナル曲を発表し続けております。
 
 さて、今日のうたコラムではそんなアニバーサリーに向けて“SARD UNDERGROUND”の神野友亜による歌詞エッセイを1年を通じ、12ヶ月連続でお届け!今回は第4弾です。ZARD「あなたを感じていたい」が聴きたくなるこの季節、自身が発見した冬ならではの“愛おしさ”を綴っていただきました。



ZARD「あなたを感じていたい」が聴きたくなる季節ですね。
 
ZARD「あなたを感じていたい」 作詞:坂井泉水
 
 
陽の当たる道を散歩していた。
目に留まったカフェに入ってコーヒーをオーダーする。
 
いい香り。
 
コーヒーを手に外に出ると、
ほんの数分で空が暗くなっていた。
 
なんだか空に置き去りにされた気分。
ぼそっと呟きながらとぼとぼ歩く。
少し切なくなった心が目線を下げると
手の中であたたかく香るコーヒーが
妙に愛おしく感じた。
 
つい最近まで
人肌の恋しくなる秋風が吹いていたけど、
今は片手に収まる小さなコーヒーに
こんなにも心が満たされている。
 
“ああ 冬が来た”
 
空に置いて行かれている場合ではないので
心も衣替えをしよう。
 
心温まる瞬間を見つけるには最適な季節。
唯一、色を探さずともトキめきがある季節。
どんな瞬間も見逃せない。
 
哀れみが溶けていく、冬の中で。

<SARD UNDERGROUND・神野友亜>