憧れと自分

 2024年1月31日に“EASTOKLAB”が1stフルアルバム『泡のような光たち』をリリースしました。繊細で些細なこと、誰もが当たり前に通り過ぎてしまうこと、そんな儚い美しさを拾い上げて心を震わせ、喪失に手を振り前に進む。誰もが経験する日々の些細な一節。聴き終わったあとに、遠い昔の匂いを思い出すようなアルバムとなっております。
 
 さて、今日のうたではそんな“EASTOKLAB”の日置逸人によるエッセイを3ヶ月連続でお届け! 今回は第2弾。綴っていただいたのは、ご自身の作詞についてのお話です。着飾った自分で書こうとしていたあの頃。そして素のままの自分で書いた今作の歌詞…。ぜひ歌詞と併せて、エッセイをお楽しみください。



歌詞を書くときのこと、思えばあまり話したことがない。
 
この歌ネットで他のミュージシャンのコラムを読んで、色々な書き方があるんだなと、当たり前のことを思った。
 
僕は歌詞を書くっていう行為がそんなに好きじゃない。
 
昔はノートを広げて、あーでもないこーでもないと、頭を抱えて書いていた。
 
もっと集中して書けたらいいのかなと、図書館に行って書いていたこともあった。
 
普段は考えないことばかり考えて、頭の隅にもないような言葉を引っ張り出して、いい歌詞を書こうとしてたんだと思う。
 
そしたら、本当の自分とは全く違う着飾った自分がノートにびっちり埋まっていた。
 
だからそうやって書くのはもうやめた。
 
最近はスマホを片手にポテチとか食べたりして、頭は使わずに、足でリズムをとりながら、口で語感を確かめながら、頭に浮かんだ自然な言葉をつらつらと書いている。
 
もしくは4人でセッションして曲をつくるとき、メロディーに乗って何処からともなく浮かんだ言葉をそのまま歌詞にしたりもする。
 
そうやって生まれた言葉は、自分を示唆していたり、水面下で揺れる心の機微を捉えたりしていて、後から読み返したときにハッとすることが多い。
 
だから、歌詞は現在の鏡でもあり、過去の墓標でもあり、未来への予感でもある。
 
このアルバムの歌詞も全部そうやって書いた。本当に、細かく書き直しをしたりとか、推敲を重ねたりとかしていない。
 
自然に、駄目な自分もそのままで書いて、元気のある日も、ない日も、そのままで書いた。
 
未来への希望もあれば、過去への執着もあり、現状への絶望もあれば、何でもないような小さな幸せもあって、その日のその瞬間に思ったことがそのまま書いてある。
 
そう思うと日記に近いのかもしれなくて、そうやって書くのが一番自分に合っている。
 
とはいえ、物語のように時間軸を持って歌詞を書く人や、情景が頭に浮かぶような言葉を美しくメロディーに乗せられる人にも、すごく憧れている。
 
自分もそんな歌詞が書けたらと思うけれど、そうやって憧れて、なりきれなくて、それでもこうして音楽を続けている自分こそが自分らしさであり、自分の個性なのかなと思う。
 
だから、それを書く。
 
また次も、そうやって書くんだと思う。
 
<EASTOKLAB・日置逸人>


◆1stフルアルバム『泡のような光たち』
2024年1月31日発売
 
<収録曲>
1. Dawn for Lovers
2. Error
3. Lights Out
4. 栞
5. Faint Signal
6. Melt
7. See You
8. うつくしいひと
9. Echoes
10. Our Place